「NEET株式会社」なるものがいろいろ話題となっているようなので、これについて少し。
1 法的な問題
これについては、『弁護士ドットコム』の「『ニート300人』が会社を設立へ 『全員が取締役』って法的に問題ないの?」が大変興味深い見解を公表しています。大雑把にまとめると以下の4点でしょうか。
① 法的には300人に取締役も可能
② しかし、現実問題として、これだけ多いと機動的な意思決定はできないのではないか。
③ 結果、形骸化する可能性はある。
④ ただ、プロモーションという観点からいうと、マスコミなどで取り上げられたこともあり、かなり有効だったのではないか。
2 実現可能性
これまで何度か書いている様に、私は基本的に理想論というものに対してあまり好意的ではありません(イケダハヤト氏と選挙と現実)。結果、政治家を判断するときも、その政策の実行可能性という視点が第一となってしまうような人間です(細野幹事長と民主党と理想論、田中眞紀子議員を例にした民主党の敗因)。
そういう人間がこの試みを見ると、現実問題としてはかなり難しいのではないかという、否定的な意見をどうしても述べたくなってしまいます。
現時点で何をするかも決まっていないわけで、だからこそ、問題が表面化しないという面があるかと思いますが、実際にどのような事業を行い、どのような手段で金儲けをするかが決まってくるといろいろ、自分の意向とは違うという方が出てくるのではないでしょうか。
最初からある特定のことをやろうとして集まった方々ならともかく、これまでの経験や能力も違う方々を、後からどれだけまとまれるかというと、かなり難しいのが本当のところかと思います。
3 賭博的心理
ただ、そうは言っても最初からできること(実現可能性が高いこと)だけを行っていても面白くないというのも本当のところです。
確か心理学の実験で、①必ず50円をあげる。②1/2の確率で100円か0円となるといった場合、どちらを選ぶかという質問をしたところ、②の方が多かったという実験があったような気がします(大分前に読んだ話で、本の題名すら覚えていない状態なので間違っていたらごめんなさい)。
これは、50円と100円だからこうなるという金額の大きさの問題があり、必ず50万か、1/2で100万か0円となると、50万を選ぶ人が多くなると思います。
それにこの質問の前提が、参加料がタダで、1回きりという話だからこうなる面も否定できず、参加料を払わなくてはらない、複数回ひけるかどうかによってもかなり行動パターンは変わってくるかと思います。
何が言いたいかというと、「遊び」の要素が強ければ強いほどこうしたギャンブル的要素を受け入れやすく(②を選択しやすく)、生活が懸かってしまえば(金額が大きくなれば)受け入れるのが難しい(①を選択しやすい)という話です。
4 最後に
だからこそ、政治のような自分たちの利害や生活に直結するものには、高い実現可能性を求めますが、極端な話「ダメ元」で行うようなものにまで確実性を求めるのは野暮というものかと思います。
「うまくいったらめっけもん」というのは確かにありますし、こうしたことがきっかけで社会との新たな接点を見つける人も出てくる可能性も否定できません。
そういう意味で、今回の事業を実現させるためには、いろいろクリアーしなくてはならないハードルが多く、大変だと思いますが、私は全否定するつもりはなく、「うまくいったら良いですね」といったスタンスです。
(※2013年9月12日の「政治学に関係するものらしきもの」より転載しました)