「連合 LGBTに関する職場の意識調査」報告
今年8月、連合は「LGBTに関する職場の意識調査」(インターネット調査)の結果を公表した。回答したのは、全国の20歳〜59歳の働く男女1000人。自身がLGBT(性的少数者)の当事者であるとの回答は8%を占めた。職場で、LGBTの人たちはどう受け止められているのか。「職場」に焦点を当てた初の調査で、働く人たちの意識、差別やハラスメントへの対応、働きやすい職場づくりにおける課題が浮かび上がった。
LGBTとSOGI
LGBTとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシャル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障がい者を含む、心と身体の性別が一致しない人)の頭文字をとった言葉で、性的マイノリティの総称としても使われている。なお、本調査では他者に対して恋愛感情も性的感情も向かない人等、他の性的マイノリティも含む呼称としている。
国連など国際機関では、「性的指向(Sexual Orientation)」「性自認(Gender Identity)」の頭文字を取った「SOGI(Sexual Orientation, Gender Identity)」という言葉が使われている。LGBTの人たちを特別視するのではなく、個人のあらゆる性的指向や性自認を尊重するという考え方で、カナダやオーストラリア、EU諸国ではすでに、SOGIに基づく差別禁止法や暴力に対抗する法律が制定されている。
認知度とイメージ
data.1 「LGBT」という言葉を知っていたか?
「LGBT」という言葉を「知っていた」との回答は47.1%。世代別では20代が54.8%と最も高く、年齢が上がるにつれ低下。一方、役職別では、管理職の認知度が56.1%と高いことが注目される。
data.2 「LGBT」に対するイメージは?(複数回答)
「他の人と変わらない存在」が47.1%とトップだが、「差別や偏見を受け、大変な境遇にある人々」という受け止めも41.8%と高い。特定の分野で活躍する「特別な存在」という回答や、「嫌悪の対象」とする回答など、自分たちと違う存在であると捉える傾向も一定の割合で見られた。
data.3 職場の仲間がLGBTだった場合、どう感じる?
職場の上司・同僚・部下がレズビアンやゲイ、バイセクシャルの場合、「嫌でない」との回答は65.0%、トランスジェンダーの場合は73.7%で、働く仲間としての抵抗感のない人が多数となった。ただ、男女で差も見られ、男性は比較的抵抗感が強い場合も多い。一方、身近にLGBTの人がいるという人は、いずれに対しても8割以上が「嫌でない」と回答。「身近にいる」かどうかが大きく影響していることがうかがえる。
職場におけるハラスメントと差別的取り扱い
data.4 職場におけるハラスメント(嫌がらせ・いじめ)を経験・見聞きしたことは?
data.5 職場における差別的取り扱い(処遇・労働条件に関わる不利益取り扱い)を経験・見聞きしたことは?
LGBTの当事者および身近にいる人で、「ハラスメントを受けた・見聞きした」のは57.4%、「差別を受けた・見聞きした」は36.3%にのぼる。身近にいない人との差は大きく、差別やハラスメントに気付いていない人も少なくないことがうかがえる。
data.6 ハラスメントの原因は?(複数回答)
ハラスメントの原因の上位は「差別や偏見」「性別規範意識」。管理職では、「啓発不足」との回答が際立って高いことが注目される。
data.7 ハラスメントの防止・禁止
data.8 差別の防止・禁止
「差別を禁止すべき」との回答は8割以上、ハラスメントは5割以上と多数派だが、「必要はない」との回答も1割程度あり、特に男性で高くなっている。
職場で取り組むべき課題
data.9 職場で必要な「LGBT」に関する施策は?(複数回答)
上位は、「ハラスメント防止対策」33.6%、「差別禁止の方針を明らかにする」28.3%、「『トランスジェンダー』に対する配慮」26.2%。相談窓口や職場の支援体制を求める回答もこれに続いた。また「差別禁止のための法的整備をすべき」との回答は44.5%。これらは、まさに労働組合が取り組むべき課題だと言えそうだ。
連合 LGBTに関する職場の意識調査
※調査結果全文は連合HPへ
※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2016年10月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。