子育て支援センターでのママ友作り、得意ですか?
写真:『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』著者のイルセ・サン
間もなく1歳になる息子を子育てしながら在宅で北欧語の翻訳をしている私の、子育て支援センターでの体験を少し紹介させてほしい。
ある日、室内遊びのイベント時に、職員の方が参加者のママ達にこう呼びかけた。「お子さんを抱っこしたまま、10歩前に進んで、目の前にいる人と自己紹介し合ってください。その後、今朝のご飯は何だったか、話してみてください」
最初に当たったママと互いの出方を探り合う。私がなかなかしゃべり出さないもので業を煮やしたのか、相手が先に口を開いた。「うちの子は○○と言います。今7か月です」私もおずおずと話し出す。
「△△です。今月1歳になります」「わー、おめでとう!」と甲高い声が上がる。「どうもありがとうございます。お祝いしてもらえて嬉しいねぇ」と息子に話を振る私。精一杯の笑顔を作るけど、顔がひきつる。
相手のママが話を続けてくれる。「今朝○○が食べたのは・・・・・・・」私も「うちは、おかゆとバナナ、柔らかく煮たトマトとニンジンを食べました」と言う。
会話を続けなくちゃ。
でも何を話題にすればよいのやら。家庭のことに余り踏み込み過ぎてはいけないし、子どもの成長に拘わることだと、「うちの子はまだできていない。成長が遅いのかしら?」などと心配させてしまうかも。
お仕事をしているのか、休職中なのか聞くのも、相手の事情次第では、嫌な気持ちにさせてしまうかも。あれこれ考え過ぎて、言葉が出てこない。再び流れる沈黙。
表面的な会話が苦手
私は表面的な会話を続けるのがひどく苦手だ。興味があるふりをするけれど、すぐ上の空になってしまう。周りで楽しそうに盛り上がっているママを見ると、自己嫌悪に陥ってしまう。私は駄目なママなの? 息子も私みたいに、お友だち作りが苦手な子になっちゃうのかな?
「お友だちを作って帰って下さい」
その後、職員の人方らの、「ではまた10歩前に進んで、目の前にいる人と話して下さい」という呼びかけに従い、さらに3人のママと自己紹介し合った。
どっと疲れた私の耳に、職員からのこんな言葉が飛びこんできた。
「皆さん仲良くなれましたか? どうかお友だちを作って帰って下さいね」子育てが孤育てにならないよう、思いやりから出た言葉だ。
分かっているのに、私の胸はずしんと重くなる。
大人しいって悪いこと?
ママとして暮らす中で、私が苦しい思いをするのは、子育て支援センターだけではない。
上の娘の保育所や小学校の保護者会でも、元気なママ達が盛り上がっているのを見て、私も何か楽しい話をしなくちゃ、と焦ったっけ。
がやがやした音や周りの雰囲気に圧倒されて、頭がぼうっとする。
さらに振り返ると、子どもの時から、「大人しいね」とか「マイペースだね」と言われてきた。
子どもながらに、それらの言葉がネガティブな意味合いで使われていることに気が付いていた。
元気な子の方が、快活で明るくて楽しい、子どもらしいと評価され、尊重されていたように思える。ありのままの自分が認められないのは悲しい。自分に自信が持てない。
HSP(とても敏感な人)って知っていますか?
私がHSP(とても敏感な人)という言葉を知ったのは、息子を妊娠していた時。
『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の翻訳の仕事の話を出版社からいただいた時だった。
本を書いたのはデンマークの心理療法士のイルセ・サン。
私と同じような悩みを持つ人の中には、この特徴にぴったりと当てはまる人もいるかもしれない。下の自己診断テストをやってみてほしい。
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HSP(とても敏感な人)チェックリスト
あなたはどれぐらい感受性が強いでしょう?あなたには5つの選択肢があります。数字を1つ入れましょう、それぞれの質問の後に、数字を1つ入れましょう。
0 点:当てはまらない
1 点:ほとんど当てはまらない
2 点:少し当てはまる
3 点:ほぼ当てはまる
4 点:完全に当てはまる
(グループ A)
1 美しい音楽を聴くと、興奮する
2 どんな失敗が起こりうるか予測して対応策を考えることに、多くの労力を費やしている
3 新たな可能性や選択肢に気付くのが得意
4 すぐにインスピレーションを得て、よいアイデアをたくさん思いつく
5 この世には私たちが耳で聞き、目で見るよりもたくさんのものがあると知っている
6 痛みを感じやすい
7 ほかの人にとっては大したことのないことにさえ、打ちのめされてしまうことある
8 毎日、1人でいる時間が必要だ
9 1人になって休憩する時間がないまま、他人とずっと2、3時間以上も一緒にいなくてはならないと、疲れ果ててしまうことがよくある
10 緊迫した空気が流れていると、身を隠したくなる
11 たとえ自分に向けられていなくても、誰かの怒りを感じるとストレスになる
12 ほかの人の痛みが、自分の神経の奥深くに入り込んでくる
13 不快な驚きや過ちを避けるために、色々と手を尽くす
14 創造力がある
15 時々、芸術作品を観ていて、喜びで胸がいっぱいになることがある
16 自分の印象では一度に受けることのできる印象の範囲が、ほかの大半の人に比べて狭い。一度に複数のことをしているときには、他の人と比べて、わずかな刺激でも反応しやすくなってしまうのだと思う。たとえば、ネットで情報を検索しているときに、同時に会話に参加するのはストレスになる
17 遊園地・ショッピングセンター・スポーツイベントといった非常に刺激の多いところに行くのが好きじゃない
18 テレビなどで暴力シーンを観ると、その後何日間も影響されてしまう
19 ほかの人よりも、考えることに時間を使う
20 動物や植物の状態を感知するのが得意
21 美しい自然を見ると、心のなかが歓喜の声でいっぱいになる
22 他者にアンテナを張り、その人がどんな気持ちでいるか感じるのが上手い
23 私はすぐに罪悪感を抱きやすい
24 仕事中に誰かに監督されていると、ストレスを感じる
25 真実が何かを見抜くことができ、ほかの人の欺瞞にもすぐ気付く
26 すぐにびっくりしてしまう
27 強いつながりを持ち、深く交流できる
28 ほかの人たちが不快に思わないような音も、ひどくイラ立たしく思えることがある
29 勘がよい
30 1人の時間を楽しめる
31 流れに任せて即座に行動することはめったになく、たいていの場合、よく考える
32 大きな音・強烈なにおい・鋭い光をひどく不快に思うことがある
33 ほかの人たちよりも、穏やかに落ち着いたところで休む必要がある
34 お腹が空いたり、寒いと感じたりしたとき、そのことがなかなか頭から離れない
35 涙もろい
(グループB)
36 事前準備なしに、新しい体験に飛び込むのが好きだ
37 相手の裏をかいて、自分のやりたいようにできると、
誇らしい気分になる
38 社交の場で疲れることはない。雰囲気がよければ、席を外して1人になって休憩をとらずに、朝から晩まで楽しめる
39 サバイバルなキャンプが好き
40 プレッシャーを感じながら働くのが好き
41 うまくいっていない人は、その人自身に責任がある場合が多いと思う
42 自分のまわりで何が起きていようと影響されることなく、エネルギッシュでいられる
43 パーティーでは、いつも自分は最後の方に帰る
44 心配しすぎることはめったになく、いつも冷静に対処できる
45 週末は、友人たちとコテージなどで過ごすのが好きで、途中、輪から抜けて1人になる時間は特に必要ない
46 友人や知り合いが突然やって来る、サプライズ訪問が大好きだ
47 あまり寝なくても大丈夫だ
48 花火や爆竹が好きだ
(計算方法)
グループAの合計点数-グループBの合計点数=あなたのHSP度
(診断)
値が60 以上なら、HSPである可能性があります。
この値はマイナス52 〜プラス140 の間の数字になるはずです。数字が大きければ大きいほど、敏感ということです。
(注)
テストは常に完全ではないと思っておいて下さい。テストがその人の性質をすべて十分に表すわけではありません。包括しきれていない面がたくさんあるはずです。
またテストを受けた日の気分によって結果は変わってきます。このテストにより、あなたの敏感さについてヒントを得ても、それ以上には受け止めないでください。
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あなたのHSP度はいくつだったろう?
血液型など、人を分類して括ることをバカバカしいと思ってきた私も、このHSPという概念に触れるうちに、なぜか心が軽くなった。
他者となかなか繋がれず、落ち込む時も、『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』を読むと、イルセさんに「大丈夫」、「あなたは独りぼっちじゃないのよ」と優しく抱き締められているような温かな気持ちになるし、このままの自分でいいんだ、もう自分のことを責めなくていいんだ、と気持ちを立て直せるから不思議だ。
HSP(とても敏感な人)への注目が高まる
最近、HSPについて知った人による体験談を描いた漫画がTwitterに投稿され、話題になった。
このツイートは、NHKのニュースサイト、NHK NEWS WEBのNews UPのコーナーでも取りあげられた。
また誠文堂新光社のよみもの.comで長沼 睦雄医師による、新連載『子どもの敏感さに困ったら』がスタートした。書籍『子どもの敏感さに困ったら読む本: 児童精神科医が教えるHSCとの関わり方 』は6月15日に発売される。
HSPはアメリカのエレイン・アーロンが1996年に提唱
HSP(とても敏感な人)という概念を元々提唱したのは、アメリカの精神分析医で学者のエレイン・アーロン。
1996年のことだった。HSPは病気ではなく性質だ。
エレインはそれまで内向的、心配性、恥ずかしがり屋、などといった言葉で片付けられてきた感受性の強い人の中に、HSP(とても敏感な人)という特性を見出した。
上のチェック・リストはエレイン・アーロンのチェック・リストを、イルセ・サンが改良し、さらにオリジナルの項目を加えたものだ。
次回、デンマークのイルセ・サンさんが『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』でHSPについてどのように書いているか、詳しく紹介していきたい。
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参考:イルセさんによる講演動画
(字幕日本語版)
敏感すぎる人(Highly Sensitive Person、HSP)
――心理療法士
イルセ・サンの
講演より
HSP(敏感すぎる人)がしばしば恥ずかしく思うのは、例えばマイペースなところ。何か質問された時、 素早く答えられないところです。
HSPは他の誰も傷つけないという確信が持てるまで、物事を繰り返し慎重に考えます。
HSPの中には、戸惑わずに素早く答えることができないがために、不正直だと思われるのを恐れる人もいます。
HSPには他の人の出す音に苛立ってしまうことを恥ずかしく思う人もいます。
HSPはまた他の人達が不快に思わないような音にネガティブな反応を示してしまうのを、
よくないことだとしばしば思います。
HSPは他の人達のように、一度にたくさんのことをこなせません。
HSPは他の人からこんな風に聞かれるかもしれません。
私は一日、仕事をした後、子どもを迎えに行き、買い物を済ませ、イベントに参加し、
さらに夜の会議にまで出たのよ。あなたは今日、何してたの?
そんな風に言われたら、2時間も窓の外をぼうっと眺めていたとか、昼寝をしていたとは
答えにくいでしょう。
HSPには、いつでも人を家に招き入れられないことを恥じる人もいます。
HSPはよくゲストより先に疲れてしまいます。
デンマークの文化では、相手が「そろそろおいとまします」と言うまで、コーヒーとケーキを出し続けるのが礼儀とされています。
長々居座られ、延々と話し続けられて、疲弊してしまったり、過度に刺激を受けてしまったりしそうになる時は、そうなる前に、断ることが大事です。
でもどう言えばいいのか考えあぐねたり、断る勇気を振り絞ったりするのには、エネルギーが必要です。
そこでキャパシティー・オーバーになってしまうと、行き詰まり、その状況から抜け出せなくなってしまいます 。
なかなか帰ってもらえないのが嫌だから、人を招くこと自体、やめてしまったというHSPの人の話を聞いたことがあります。
また食事の支度をしなくちゃいけないから帰る、と相手が言い出すのを期待して、夕食前の時間 をねらって誘う人もいるようです。
自分の思いに忠実に、ありのままを告げる術を見つけるまでには、あれこれ試行錯誤が必要です。
私はいつも誰かを家に招く時、いつ来て、いつ帰るのかを、あらかじめ約束するようにしています。相手は私の気持ちを理解してくれています。
永遠にその状況が続くわけではなく、終わりが訪れると分かっていることで、今に意識を向け、集中できます。
HSPが羞恥心を感じることは他にもあります。せっかく訪ねてきてくれた相手に対し、
どこか遠くに行ってほしい、と思ってしまうことです。
世間話はHSPが苦手なものの典型です。
ところがHSPは聞き上手なので、時にその意に反して、世間話を延々と聞かされる羽目になることもあります。
問題は、HSPが礼儀正しくいたいと願ってしまうことです。
HSPは笑みを浮かべ話をしている人に注意を向け、時に身を乗り出してまでちゃんと話を聞いているのを示そうとします。本当はくたびれて、もう聞きたくないのに。
私はHSPの人に、疲れているなら勇気を出して、椅子の背に少しもたれかかり、疲れていると態度で示してもいいんですよ、とアドバイスしています。
でないと相手に理解不能な信号を送り続けることになってしまいます。退屈しているのに、興味があるような態度をとってしまっているのですから。
お昼休み、食堂でおしゃべりする時に、気まずい思いをする人もいます。ひどく表面的な話に耳を傾けるだけでなく、会話に加わらなくてはならないと考え、無理をしてしまうのです。
以上がHSPが羞恥心を感じる状況の例です。
例え他の人達と違っていようとも、HSPには、自分らしくいる術があります。
多くのHSPが、自分自身を理解することで、人生が格段に豊かになったという経験をしています。
HSPは様々な問題にぶつかるばかりでなく、制約はありつつも深い人間関係を築き、豊かな人生を送るとても大きな喜びと才能に恵まれた人達なのです。
ハフポスト日本版は、自立した個人の生きかたを特集する企画『#だからひとりが好き』を始めました。
学校や職場などでみんなと一緒でなければいけないという同調圧力に悩んだり、過度にみんなとつながろうとして疲弊したり...。繋がることが奨励され、ひとりで過ごす人は「ぼっち」「非リア」などという言葉とともに、否定的なイメージで語られる風潮もあります。
企画ではみんなと過ごすことと同様に、ひとりで過ごす大切さ(と楽しさ)を伝えていきます。
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