リクルートグループで、IT&マーケティングに特化し、事業横断でサービス開発に取り組む株式会社リクルートテクノロジーズ(以下、RTC)。「Technologies for Pleasure」を新ミッションに掲げ、5つのバリュー(行動指針)を設定しました。そのひとつ「まずはやってみよう」について、代表取締役社長の北村吉弘が自身の経験を交えお伝えします。
「まずはやってみよう」
ーー 遊びゴコロは創造の源。結果より何を学んだか?の経験学習で成長しよう ーー
世の中はかつてないスピードで変化を続けています。どんなに緻密な計画を立てても、その通りにいくことなど、まずありません。特に、これまで挑戦したことがないテーマや、新しいステージに向かうシーンであればなおさら。
「結果はどうあれまずはやってみる」
そうした状況のなかでも新しい価値を作り出し、ビジネスを前に進めていくには、この発想を持てるかどうかが鍵になると私は思います。そして、せっかくやるのであれば、ワクワクできるやり方でトライする。どうせ大変なんだから、楽しんでやった方がいい。
一つひとつの開発を品質高くやり切るというRTCが持つ強みに加え、より多くの喜びを生み出すサービスづくりの原動力にしたいと、2017年11月新しくバリュー(行動指針)に追加しました。
2017年現在のリクルートライフスタイル(以下、RLS)の前身となる組織に在籍していた時代に触れながら、このテーマについてお話ししたいと思います。
当時のRLSは「Hot Pepper」「Hot Pepper Beauty」「じゃらん」などのサービスを展開するなかで、新サービスを2010年7月にリリース。美容領域の事業責任者を担っていた私は、10月からその室長を兼務することになりました。
新サービスは、当時日本で勢いを伸ばしていたフラッシュマーケティング(共同購入型クーポンサイト)に、リクルートが参入したもの。競合各社がひしめくなか、私たちは既存サービスで幅広いクライアントと接点があることを強みに、後進ながらもシェア拡大を目指し、事業を軌道に乗せようとしていました。
しかしこのとき、私には、リクルートの正攻法が通用しないのではないかという予感がありました。
まず、ビジネスモデルが大きく違う。既存のサービスは、広告掲載によって企業・店舗と消費者をマッチングするものですが、今回は商品を集めて売るというモデル。そして、デイリーサイクルで商品が動き、キャッシュイン・キャッシュアウトのスパンも短い。これまでのセオリーがまったく通用しないビジネス環境でした。
その予感はすぐに的中します。ある商品が爆発的に売れた直後、サービスのトップ画面がその商品だけで埋め尽くされる事態に。成功事例を横展開しようと、特定のヒット商品だけを大量に集めてきたのです。
ですが、これではこのサービスをご利用いただくユーザーの方々の「嬉しい」には当然のことながらつながりません。予感は壁となって私の前に立ちはだかりました。
フンボルトペンギンになろう
自分たちが持つケイパビリティでは勝てないことを痛感した私は、同時に、経営側からいつ黒字化できるのかを問われはじめてもいました。しかし、何が正しいのか確信を持てる案はない。そこで、半年間の猶予をもらい、事業戦略をイチから練り直すことに。そして、メンバーの前でこう言ったのです。
「私たちはお店であって広告屋ではない。生き残るには、自分たちの新しいスタンダードが必要で、そのために思いつくことがあれば、どんなに小さなことでもトライしてほしい。とにかくやってみよう。朝令暮改どころか"朝礼朝改"だと思ってついてきてほしい」
さらにもうひとつ付け加えたことがあります。
「どうせやるなら面白くやろう!自分がほしい、買いたいと思える商品を提供して、次のリクルートのモチーフになろう」
当時、とある水族館からフンボルトペンギンが逃げ出し、1か月後に非常にたくましい姿で見つかったというニュースがあったんです。その話にかけて、「みんなでフンボルトペンギンになろう」とメッセージしました。
その後すぐ、あるチームでは、商品カテゴリと価格帯のマトリックスにはめて商品バリエーションを増やすというトライアルをはじめました。「条件にハマって、かつ自分がほしい商品を掲載しよう」と、マトリックスを埋めることに注力したのです。
すると、そのチームだけ売上が顕著に増加しはじめたのです。またあるチームは、商談後、シリアルに組まれていた審査、制作といった後続プロセスを一部パラレルに組み替えようと提案。結果、掲載までのリードタイムを半減することに成功しました。
さまざまなニーズに合致した商品を集め、効率的に掲載・販売するサイクルを確立したことで、製造・提供する側の企業にとっても、購入する個人にとっても満足度が大幅に向上。競合サイトと比較すると商品数こそ半分になりましたが、販売額はダブルスコアで上回り、その年のうちに黒字化することができたのです。
2017年現在、このサービスは時代の変化や事業全体の戦略方針によって一定の役割を終え、他サービスと統合しています。しかし、立ち上げ当初のこの経験は、リクルートグループだけでなく、私自身や一緒に戦った仲間にとって大きな資産になりました。
どうしたらもっといい場づくりができるかを全員が考え、一人ひとりがちょっとした工夫をやり続けた。失敗も見当違いも糧にして、上手くいったらそれを共有して大きくする。この結果、関係したすべてのメンバーの戦闘能力が格段にアップし、当時の仲間たちは今、リクルート内外のさまざまなフィールドで活躍しているのです。
"習慣から抜け出すという習慣"をつくろう
クリエイティビティの源泉は、習慣化されたものからいかに抜け出すかにあります。
もちろん、あらゆる側面において過去の経験は重要な資産です。けれど、何か新しいことをはじめよう、現状をもっといいものに変えていこうという場面においては、間違ってもいいからちょっとやってみることに踏み込むのが効いてくるのです。
"習慣から抜け出すという習慣"をつくってみましょう。たとえば、通勤経路や手段を変えてみる。一本違う道を歩いてみるだけでも、無意識的に歩くという習慣から解放され、行き交う人波の違いに気づくでしょう。
それが私の仕事にどう活かされるかといえば、直接的な影響はほぼありません。でも、当たり前を少しずらすことで、気づきや学びが豊かになります。未知の領域やこれまでにない予兆に直面した際に、「今までとは違う」と気づく力を与えてくれます。
ルーティンとしてこなすワークは習慣化されたものかもしれないけれど、ルーティンだけがあなたの仕事ではないはずです。
むしろ私たちRTCは、世の中の当たり前ではやらないようなことにも挑戦してみる集団でありたい。何が正しいのか考え抜くことも大切だけれど、答えが見えないならスモールスタートでまずはじめてみて、そのプロセスや結果から学ぶ方が、圧倒的に学習効果は高く、得られるものは大きいはずです。
どうせなら楽しく、自分の好奇心や貢献心に従ってやろう
新しいことに挑戦するときは、反対意見も出るでしょうし、いろんな逆風も吹いてきます。ですが、たとえまわりに反対されたとしても、自分の好奇心や貢献したいという気持ちからくる勘に従った方が仕事は断然面白い。
「よし、やってみよう」と行動するときは、面白くやることを取り組みのコアに置いてみてください。自分がつくっていて面白くないシステムやプロダクトは、きっと社会からの賛同も得られません。チームで協働する輪を広げるには、ゲーム感覚で目標を追いかけていくような楽しさがガソリンになることもあります。
仕事に必要な「やりきる力」って、後からついてくるものであって、やってみないことにはやりきる意義も分からないですよね。だからこそ、やってみることに貪欲であるために、好奇心や楽しさ、つまり遊びゴコロに素直であってほしいんです。
組織のやり方やルールがいつも正しいとは限りません。その仕事に真摯に向き合っているあなたが、「本当はこっちの方が正しい」と思っていることって、きっと正しいんです。
その正しさを証明するためにも、小さな一歩でいいから、まわりに反対されたっていいから、臆せずにまずはやってみましょう。未来のあなた、そして組織にとって必ずプラスになるはずですから。
※本記事は、「PR Table」より転載・改編したものです。