「プーチンはスターリンではない」キッシンジャーは語る

91歳のキッシンジャー元国務長官は、西側諸国とロシアの対立に関して「わたしは現在の状況にとても心を痛めている。それはウクライナに平和をもたらすことも、国際秩序に安定をもたらすこともない」と述べた。
Moscow, RUSSIAN FEDERATION: Russian President Vladimir Putin (L) shakes hands with former US secretary of State Henry Kissinger (R) during the meeting of Russian-US public working group 'Russia-US : look into the future' in Novo-Ogaryovo residence outside Moscow 13 July 2007. Vladimir Putin said Russian-US relations should be oriented towards the interests of the two countries' people and should not be dependent on current political trends in each country. AFP PHOTO/ POOL/ SERGEI CHIRIKOV (Photo credit should read SERGEI CHIRIKOV/AFP/Getty Images)
Moscow, RUSSIAN FEDERATION: Russian President Vladimir Putin (L) shakes hands with former US secretary of State Henry Kissinger (R) during the meeting of Russian-US public working group 'Russia-US : look into the future' in Novo-Ogaryovo residence outside Moscow 13 July 2007. Vladimir Putin said Russian-US relations should be oriented towards the interests of the two countries' people and should not be dependent on current political trends in each country. AFP PHOTO/ POOL/ SERGEI CHIRIKOV (Photo credit should read SERGEI CHIRIKOV/AFP/Getty Images)
SERGEI CHIRIKOV via Getty Images

「西側諸国とロシアの間で現在高まっている対立は、冷戦時の対立とは違う」

ヘンリー・キッシンジャー氏はニューヨークで行われた外交問題評議会主催の「ベルリンの壁」崩壊25周年を記念するシンポジウムでそう語った。

いまだ外交政策分野で強い影響力を残す91歳のキッシンジャー元国務長官は、西側諸国とロシアの対立に関して「わたしは現在の状況にとても心を痛めている。それはウクライナに平和をもたらすことも、国際秩序に安定をもたらすこともない」と述べた。

スターリンとプーチンの間に何か共通するものがあるかと問われ、キッシンジャー氏は「ないと思う。プーチンはロシア政府のシステムが、西側諸国の政府のシステムと本質的に通じるものがあると考えているはずだ。彼は西側諸国から不当に扱われていると感じている。ピョートル大帝なら理解するような方法で西側諸国に対応している。乱暴なやり方かもしれない。しかし(冷戦時と)同じような事態に直面するとは思わない」と答えた。

リチャード・ニクソン大統領の国家安全保障問題担当顧問でもあったキッシンジャー氏は、西側諸国にもウクライナ紛争の責任の一端があるとして非難している。

「今回生じた状況は、それ以前から問題になっていたことだ。わたしは、西側諸国が起ころうとしていることの意味合いを十分に理解せず、ロシアとの間に抱える"ロシアと西側諸国との長期的関係"という本質的な問題について対話する機会があったかもしれないのに、その好機を生かせなかった」

それでも、と彼は続け、国際社会は「ある国が別の国の一部を単純に切り取ってもよい、という主張を受け入れることはできない。単純にある領土を併合するのは、私たちが考えている通り、国際法に反している」と述べた。

ロシアは2014年の初頭に、クリミア半島をウクライナから分離独立させるよう画策した。西側諸国は、ロシアがウクライナ政府と対立する分離独立派の親ロシア派グループを支援し継続的に東ウクライナ地方を不安定にさせている、と非難している。

ウクライナの分離独立派の主導で東部のドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国で選挙が行われ、結果は親ロシア派指導者たち曰く「圧倒的な」勝利となった。アメリカのオバマ政権はこの選挙を、正当性を欠いているとして非難し、すでに不安定になっている停戦合意をさらに脅かすものだと述べた。

一方、ロシアは選挙結果を祝い、結果は「ウクライナ南東部の人々の意思」の表明だとしている。

制裁措置への疑念

キッシンジャーは、ウクライナ危機がきっかけとなったロシアへの制裁措置と、イランに対する制裁措置とを区別している。厳しさを増しているイランに対する制裁はそれなりに成果を上げていると彼は言う。というのも、アメリカがこの制裁措置を行うため国際社会全体を結束させることに成功しており、制裁は核産業全体をターゲットにしているためだ。一方で、プーチンに関わるロシア人への制裁は話が違うという。

「このやり方に私は非常に不安を感じる。国際関係にとって悪いシステムだ。それぞれの国が、別の国の個人を罰するようになれば、いったいどんな国際秩序のシステムが出来上がるのだろうか。わたしなら、(ロシアとウクライナに対する)不快感をもっと別の方法で最大限に表明する」

この記事はにハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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