1月25日午後7時、ギリシャで総選挙の投票が締め切られ、初回の出口調査の結果がベルリン、ブリュッセル、マドリード、ロンドン、フランクフルト、そしてニューヨークで発表される。世界各国の政治経済の政策決定者たちと、政策決定を補佐する人々は、自分のコンピューター画面を凝視し、その数字を読み取って解釈する準備ができていることだろう。
今回のギリシャ総選挙は間違いなく世界的に重大な出来事だ。この選挙の重要性はギリシャの国境を越える。なぜ重要なのか。今回の選挙が、5月のイギリス総選挙から11月のスペイン総選挙まで、欧州で行われる一連の重要な選挙のひとつだからだ。
ギリシャは、ユーロ圏内で一番最初に経済危機を経験した国である。また、その危機を是正するためにEUの基本方策である緊縮財政策を受けた最初の国でもあった。つまり、ギリシャは、今回の選挙を通してこの緊縮財政策がもたらした結果を明らかにする最初の国となる。今回の選挙の結果次第では、国連加盟国内で長期的なデフレが発生し、景気後退が長引く恐れがある。今回の選挙を俯瞰すると、ひとつの疑問が生まれる。緊縮財政に対するギリシャの反応とその回答は、選挙に関係なく、欧州危機が新しい段階に進むのか? それとも、解決に向けて動き出すのだろうか?
この疑問に答える前に、ギリシャの総選挙自体を理解する必要がある。キーポイントをいくつか紹介しよう。
1 総選挙の勝利
ギリシャの選挙制度、第一党となった政党は、たとえ1票差の勝利であっても、議会の300議席のうち50議席が与えられる。従って、たとえ勝利政党が票の過半数を集めていなくても、議会はその政党なしに政権を発足させることはできない。2014年12月の世論調査では、野党の急進左翼進歩連合がリードしていた。
2 急進左翼進歩連合の得票率
ギリシャ共産党が統一左翼の連立から離脱した直後、1991年に誕生した急進左翼進歩連合(Syriza)は、欧州左翼党の理想と基準から生まれ、これまでに2度の大変革を経験してきた。最初の大変革は2004年。より急進的な政策を採用し、他の小さな左翼政党と、グローバル化に反対するすべての組織を組み込んだ。より重大な変革は、2011年に起こった。この年、怒りに満ちたギリシャ国民が緊縮政策に反対してギリシャの広場を占拠していた。そして、Syrizaが彼等の代弁者となった。こうして、2009年にはギリシャ国会の議席の3-5%を占めていたに過ぎない政党が、2012年には27%を超えるほどまで台頭し、今回の総選挙では30%を超えるとみられる。だが、この政党の強みとは何だろうか? 新議会の絶対多数を獲得できる35%を上回ることができるだろうか?
3 二大政党の連立
20世紀初頭以降、ギリシャは強力な二大政党制の国であった。過去40年間にわたって、保守の新民主主義(ND)とリベラルの全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が台頭してきた。PASOKが崩壊し、NDが衰退したことで、選挙が繰り返されることになった。今、この二つの第一党、NDとPASOKが何とか65%超を集めることができれば、新しい二大政党制が構築されることになる。Syrizaは、現在の野党の立場から、長く政権を維持できる新しい政治勢力となるだろう。
4 有権者の参加
2004年には750万人のギリシャ国民が投票したが、2012年6月の投票者は600万人に落ち込んだ。世論調査によると、有権者2人のうち1人はどの政党も支持していない。今回は何人が投票するだろうか? 投票率は、選挙結果だけでなく、新しい政党の相関関係が長い時間をかけて持続できるかどうかも左右する。
5 中道に近い中小政党の抵抗
保守のPASOKと左翼のSyrizaの中間的なイデオロギーの小政党(中道左派政党、全ギリシャ社会主義運動、ゲオルギオス・パパンドレウ元首相の新政党)が分極化して新しい議会に議員を送り込めば、第一党が過半数を得る可能性はゼロになる。そうでない場合、第一党が連合政権のパートナーを選べるようになる。
6 極右ネオナチの勢力
極右政党「黄金の夜明け」も、緊縮財政下のギリシャで勝ち組となった。かつては得票率もわずかだったが(2009年には0.29%)、その後、2014年の欧州選挙では突如9.4%も獲得した。今回の選挙は、失業率が30%を超え景気が停滞するアテネとピレウス周辺の有権者たちがどれだけ不満の意志を表明するかの試金石となる。結果次第では、民主主義への脅威となりかねない。
7 民主主義に基づいた大統領の選出
新政権の発足に先立ち、新議会はまず大統領を選出しなければならない。これは、前の議会が失敗したことだ。今回の総選挙で連立政権が作られて過半数を獲得すれば、第一党がどこになっても、新政権は過去5年間の政権よりも強固な体制で発進できるだろう。さもなければ...。
最初の疑問に戻ろう。今回の総選挙はユーロ危機を復活させ、ギリシャがEUから離脱することになるのか? あるいは、EU全体が崩壊に向かうのか? 今回の総選挙は、より小規模な緊縮財政とより大きな成長を伴う、広範な軌道修正へ向かうきっかけとなるのか?
欧州側の分析は、以下の結論に至る。欧州はゆっくりと、しかし必ず政治経済が上向き、成熟する方向へ行くだろう。欧州中央銀行のマリオ・ドラギ総裁が、この第一段階で主導的な役割を担っている。従って、新しいギリシャの政権が、要求と交渉を時代の変化に合わせていく必要な能力と知恵を持っていれば、政治的に成功する可能性がある。適応する能力をもともと持っていなければ、危機一髪の事態となる。
この記事はハフポストギリシャ版に掲載されたものの英訳を翻訳しました。