【イルカの魔法 - パプアニューギニア・ 古見きゅう 連載第6弾!】

「イルカの魔法」通常僕たちはスピードボートに乗りこみ、ダイビングポイントまで向かうことが多い。その時のダイビングディスティネーションにより、ボートでの移動時間はまちまちであるが、この移動時間をどうやって過ごすかでいつも悩んでしまう。

「イルカの魔法」

 通常僕たちはスピードボートに乗りこみ、ダイビングポイントまで向かうことが多い。その時のダイビングディスティネーションにより、ボートでの移動時間はまちまちであるが、この移動時間をどうやって過ごすかでいつも悩んでしまう。

 ものの数分でポイントに到着し、ドボンと海に飛び込むことができれば言うことはないが、30分を超える移動時間となるとさすがに時間を持て余す。船酔いの心配がある人には、ことさら長く感じられるのだろう。

 物思いに耽ってみたり、あたりの風景をぼんやり眺めたり、もしくは寝る。それはそれで余暇の少ない僕ら現代人にとっては、ゆっくりできる良き時間なのかもしれないが、船上での快適で楽しい過ごし方というのは、正解が無くなかなかに難しいものだ。

 そんな時間にも、誰もが興奮し歓声をあげる瞬間が稀に訪れる。たくさんの背ビレが水面を切るようにボートを包み込む。そうイルカがやってきた瞬間だ。イルカたちはその好奇心の強さからなのか、スピードボートと並走し海面を滑るように泳ぐ。僕たちを歓迎してくれているのか、からかいに来ているのかはイルカに訊いてみないとわからないが、彼らが現れると船上の人々は急に元気になる。写真を撮る人、ボートの縁をリズミカルにたたく人、黄色い声をあげる人。少し気怠かった船上雰囲気は一気に華やかになる。挙げ句の果てには船酔いで完全グロッキーだった人も、いつの間にかそこに混じり歓喜の声を挙げている。なんてすごい影響力だ。

 普段僕はイルカに対して特別な思い入れというものがあまり無いのだが、こんなにも人を元気にすることができるというのは、本当にすごいとしか言いようがない。少し嫉妬すらおぼえてしまうほどだ。いつかイルカたちにどうしたら人を元気にさせられるのか、そのへんのコツを教えてもらいたいと思う。彼らは人間にとって本当の魔法使いなのかもしれないですね。

◯ Text by 水中写真家 古見きゅう

東京都出身。本州最南端の町、和歌山県串本にて、ダイビングガイドとして活動したのち写真家として独立。 現在は東京を拠点に国内外の海を飛び回り、独特な視点から海の美しさやユニークな生き物などを切り撮り、 新聞、週刊誌、科学誌など様々な媒体で作品や連載記事などを発表している。著書に海の生き物たちのコミュニケーションをテーマとした写真集「WA!」(小学館)などがある。 2012年には自身初となる海外での個展も開催した。

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パプアニューギニアは、赤道のすぐ南に位置しており、日本から直行便で約6時間30分の距離にあります。世界で2番目に大きな島、ニューギニア島の東半分をはじめとする600の島々からなり、南太平洋最後の楽園と言われ、そこには美しい海と、山々の深い緑、長い歴史の中で受け継がれた伝統の文化が息づいています。自然と触れ合う旅、文化を探訪する旅など、パプアニューギニアでは、様々な旅の楽しみ方が皆様をお待ちしています。

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