10月6日のこのブログで、「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない」の書籍化について書いてから、一カ月が過ぎた。
ブログで興味ある出版社はいませんかと呼びかけたら、連絡をくれたのは今年設立したてほやほやの三輪舎の中岡祐介だった。これが最初に出す本になるという。彼に任せていいのだろうかと思いつつ、そう決めてしまった。そんな無謀な試みに、いや無謀だからこそだろうけど、意外にたくさんの方に応援の声をいただいた。
さて、その本に載せる前提で、みなさんの赤ちゃんの写真を募集している。「赤ちゃんにやさしい国へ」のFacebookページに送ってもらえばいいのだけど、その際に「赤ちゃんにやさしい国ってどんな国?」というメッセージも添えてもらうことにしたら、たくさんの方々から写真とメッセージが届いた。ひとつひとつ読んでいくと、グッと来たり、新たな発見をもらったりで大変ありがたかった。ぼくのまだまだ知らない悩みや思い、そして困難な現実や現場を教えてもらった。そして何より、みなさんが赤ちゃんを愛する思い、だからこそ持つ世の中への温かな眼差しにもふれることができた。
ここで、そのうちのいくつかを、紹介してみようと思う。
私にとって赤ちゃんにやさしい国は「みんなが笑顔で声をかけてくれる国」です。
現在9ヶ月の赤ちゃんを育児休暇をとって育てています。
知らないおじさん、おばさん、子供やお姉さんお兄さんと電車やバスで隣になった時に笑顔で話しかけたりしてくれたりすると赤ちゃんも私もその周りの人もみんな笑顔になって幸せだなぁと思えるからです。
赤ちゃんにやさしい国、みんなで育ててる、友達や親、近所の人たちに育ててもらってると、実感し感謝できる国、と思います。
3人の子供達は、親だけでなく、保育園や友達、近所の人達に育ててもらってると感謝でいっぱいです。3歳の息子ですら、私の知らない同じマンションの友人のおばさんがいる。3人産んだけれど、また産みたい、と思える。そんな環境が、やさしい国と思います。
「みんな」というのは、大事なキーワードだ。一連の取材の中でも、発見するのは「みんなが声をかけあい、みんなで育てる育児環境」の大切さだった。シンプルで何てことないけど、いまの社会が失ってしまったのがこの「子どもたちはみんなで育てる」風土だと思う。
私にとって赤ちゃんにやさしい国とは、赤ちゃんに限らず他人にやさしい国です。
赤ちゃんにやさしい大人であるためには、赤ちゃんに限らず大人にも子供にも老人にもやさしく接することができなければダメだと思います。他人にやさしくなれるはずなのに、ならない。ならなくても生きていける。
でも生きていけなくなるよ、そのうち。
「みんなで育てる」の考え方の延長線上には、赤ちゃんだけでなくみんなに対してやさしくなれる、分かち合える社会、という見方がある。こういうメッセージを読んでいると、温かな気持ちになるなあ。
ある意味、極め付けがこれ。自分だって赤ちゃんだったこと、親にも、周りのみんなにも助けられて成長してきたことを忘れないこと。
赤ちゃんにやさしい国は、大人にゆとりがある国。
大人にゆとりがないと、失敗が許されない不寛容な空気ができる。子供はいっぱい失敗するのが当たり前。子供の失敗を気持ちよく笑える心のゆとりがほしい。
写真は2014年の朝霧JAMに、8ヶ月の娘を連れていった時のもの。過去に音楽フェスに子供を連れて行くのは虐待だという記事があったけど、会場ではお客もスタッフもとてもよくしてくれ、皆で娘の失敗をあたたかく笑い、時に爆笑し、困った出来事も優しく手伝ってくれた。フェスという限られた場所ではなく、普段の暮らしがこんな感じなら、子供を育てるのはどんなに楽しいだろう、と思った。
このような具体的なエピソードを語ってくれる方もいた。フェスに赤ちゃんを連れて行くって、いいなあ。こういう、これまで赤ちゃんを連れて行かなかったようなところへも連れて行くのはいいと思う。もちろん、わきまえねばならないこともあるだろうけど。
赤ちゃんにやさしい国について、私が思うことは
母親、父親赤ちゃんに触れあう全ての人たちのストレスが無くなることだと思います。
難しい事ですし、ストレスを無くすなんて不可能かもしれませんが、、
結局、子供といてイライラしているときと言うのは、実際は子供に対してイライラしているのではなく、自分や周りにイライラしている事が多い気がします。
頭では、赤ちゃんに怒っても仕方ないと解っています。でも、怒らなきゃいけない状況が多すぎます。
例えば先日飛行機に乗りましたが、やはり10ヶ月の次女は泣いてしまい、席も立てず困りました。
次第にイライラしてきましたが、それは周りに気を使う余りイライラしてしまったのです。
もし、自分しか乗っていなかったら、きっと30分席を立てず泣きわめいていてもイライラしなかったと思います。
家族で台湾に行ったのですが、台湾の人たちは、若い男性でも赤ちゃんが泣くとあやそうとしてくれました。
日本では、若い独身男性は、赤ちゃんに興味無い人が多い気がします。
私もそうでしたが、女の人でも、身近に子供がいない人は、どう接していいのか分からないのです。
核家族で、小さい子や赤ちゃんを抱っこする事なんて、私も自分の子供が生まれて初めてしました。
このメッセージにはいろんなことが凝縮されている。ストレス。赤ちゃんを連れて外に出た時、泣き出したらどうしよう、迷惑になったらどうしよう、とビクビクせざるをえない。ごめんなさい、すみません、と言いつづけないとダメな親だと冷たくされる。ぼくが最初のブログで言いたかったのもこの点だ。赤ちゃんを育てるのに周りに謝りつづけなくてはならない環境で、赤ちゃんが増えるだろうか?この論点は、少子化の問題を象徴していると思う。
この話になると、「だが母親の態度がなってないんだよ!」と言いだす人がいる。母親がごめんなさいごめんなさいと言いつづけないと納得しないのだろう。それがつまり、子どもを育てることの価値を貶めてしまっているのだ。そんな国はどうやら他にはないらしい。
赤ちゃんにやさしい国はどんな国か?究極の答えは、次のメッセージだった。
いやホント、こんなこと議論してる国は、ヘンだよね。
さて、書籍化に向けての赤ちゃんの写真とメッセージの募集は、まだまだ続けています。書籍に載せるのがひとつの目的ですが、間に合わなくてもWEBなどで紹介していくのでぜひお送りください。
以下のサイトでこれまでの写真とメッセージをまとめてご覧になれます。
※「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない」を、無謀にも書籍にします。2014年12月発売予定。
興味がある方は、こちらの↓Facebookページをのぞいてみてください。
コピーライター/メディアコンサルタント
境 治
sakaiosamu62@gmail.com