今日、8月19日は世界人道デーです。現在、紛争や自然災害、食糧不足などにより1億3,000万人もの人びとが、食糧や医療、仮設住居や安全な水といった命を繋いでいくための緊急援助を必要としています。中東やアフリカの紛争に加え、エルニーニョ現象や気候変動の影響等で、世界の人道危機は第二次世界大戦後最悪のレベルに達しているとも言われます。
人道支援を必要としている人々の数はこの10年間で約2倍に増え、またそうした支援に必要とされる金額は6倍にも膨れ上がっています。こうした人びとのニーズに応えるため、国連は今年、219億ドル(約2兆円)を要請していますが、その3分の1程度しか必要な資金が手当てされておらず、現場の人道支援活動にも支障が生じています。
特に6,530万人もの人びとが紛争や暴力により避難生活を余儀なくされていますが、そのうち4,080万人が、いわゆる国内避難民(Internally Displaced Persons : IDPs)です。メディアや政治の注目は中東などからヨーロッパを目指す難民・移民へと集まりがちですが、避難生活を余儀なくされた人々の大多数は、苛酷な状況にある自国を抜け出すことすらできない、あるいは国内に留まることを選ばざるを得ないというのが実態です。
そしてそんな国内避難民は、国境を超えて保護を求める難民同様、あるいはそれ以上の苦難を経験しています。街が包囲され砲弾が飛び交う中、空腹や病気・怪我に苦しむ子供たち。また、教育や仕事の機会を奪われた若者は、武装勢力に無理やり徴用されたり結婚を強要される恐れもあります。また難民・避難民となった女性や子供たちの5人に1人が性的暴力の被害にあっているとの報告まであります。
こうした中、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が #世界人道デー に向けたビデオメッセージを発表しました。今年の世界人道デーのテーマは「みんなでひとつのヒューマニティ(One Humanity)」。国連事務総長は、今日の世界人道デーを機に、国際社会であらためて人道支援のための責任を共有し、人道理念を最優先する行動を訴えています。
今年5月にはトルコのイスタンブールで史上初となる世界人道サミットも開かれ、国連事務総長は以下の5項目からなる新たなビジョンを提示しました。
①紛争を防ぐ、あるいは終わらせること。
②一般市民を保護するため、国際的なルールを守ること。
③人道課題を克服するために必要な「投資」を増やすこと。
④緊急援助だけでなく、人道ニーズそのものを解消することにも注力すること。
⑤難民、移民、国内避難民を含め「誰も置き去りにしない」こと。
国連事務総長が示したこうしたビジョンは「人道への課題 (Agenda for Humanity)」と呼ばれています。そして世界人道サミットでは、日本を含む各国リーダーから「人道への課題」に対する広範な支持が表明されました。世界の人道危機を克服していくため、今こそこうしたコミットメントを実行に移さなければなりません。
今日、ニューヨークの国連本部をはじめ世界中で「世界人道デー」を記念する様々なイベントが開催され、人道危機に苦しむ人々と連帯するメッセージが発信されます。日本では、国連人道問題調整事務所(OCHA)の駐日事務所が神戸にあることにちなみ、ポートタワー、モザイク大観覧車、明石海峡大橋といったランドマークが国連旗と同じブルーにライトアップされます。また、内戦に苦しむシリアやイラクの人びとに焦点をあてた公開イベントや写真展も神戸市内で開催されます(詳細はこちら)。
8月19日は世界人道デー。あなたも一年に一度、「人道」について考えてみませんか?
世界人道デーとは
2003年8月19日、イラクで人道支援等を担っていた国連事務所が攻撃され、当時の国連事務総長イラク特別代表セルジオ・ビエイラ・デメロ氏をはじめ22名のスタッフが亡くなり、100名以上が負傷するという事件が起こった。そして、この事件とその犠牲者のことを記憶に留めるため、それから5年後の2008年、8月19日を「世界人道デー」とすることが国連総会で定められた。
「世界人道デー」はまた、世界中で頻発する紛争や災害などにより避難や困難な生活を強いられている人々と、危険と隣り合わせになりながらも、少しでもこうした人々の手助けができればと願い行動する人道支援関係者の双方に思いを寄せる日でもある。
世界人道デーフェイスブックページ(日本語):https://www.facebook.com/WHDayJapan/
OCHA 神戸事務所ホームページ(日本語):http://www.unocha.org/japan/
世界人道デーホームページ(英語):https://worldhumanitarianday.org/
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