森友学園の疑惑をめぐる伝えるニュースが、連日伝えられています。私たちは、そのひとつひとつに驚き、あきれながらも、「これからどうなるのか」に注目しています。一連の出来事は、多面的・重層的に広がりテンポの早い「日がわり劇場」のようです。そして、ここに登場してくる人物の行動と発言は、「隠れていた物語」の一端をさらけ出しています。いったい、この物語の全体像はどこにあるのでしょうか。ツイートを紹介します。
「驚き、あきれる」と書きましたが、私は「怖さ」を感じます。ハンマーをふりかざしてもビクともしないはずの「固い岩盤」の役所である国有財産を管理している財務省が、森友学園の「開校予定」を思いやり、「公正公平」とは真逆の利益誘導に与して、地中ゴミ撤去を理由に「つかみ金」で8億円もの大幅減額の叩き売りに転じたのはなぜだったのでしょうか。
誰もが指摘するように、近畿財務局や財務省理財局が、現場や独自の判断で原則をねじ曲げ、森友学園の準備する小学校に協力する理由はありません。先に「怖さ」と書きました。それは、水面下のネットワークが機能して不条理がまかり通り、平然の財務官僚を追随させる「力」をこの事件から読み取るからです。
学校法人に大阪の国有地売却 価格非公表、近隣の1割か:朝日新聞デジタル 2017年2月9日
近畿財務局が学校法人に払い下げた大阪府豊中市内の国有地をめぐり、財務局が売却額などを非公表にしていることが分かった。朝日新聞が調査したところ、売却額は同じ規模の近隣国有地の10分の1だった。国有地の売却は透明性の観点から「原則公表」とされており、地元市議は8日、非公表とした財務局の決定の取り消しを求めて大阪地裁に提訴した。
この記事から、森友学園の疑惑は拡大の一途をたどります。 森友学園が大阪府豊中市の国有地を取得したにもかかわらず、その価格を例外的に「非開示」としてきた近畿財務局。疑問を持った豊中市議会議員が公開を求めて訴訟を起こしたことが始まりでした。
この提訴と報道がなければ、2カ月後の4月、森友学園の小学校は開校した可能性がきわめて高かったと思います。 一連の経過に疑問を持ち、真相究明を訴えるのは当然のことですが、野党ばかりでなく与党からも声があがっています。
自民・船田氏「特別な力学働いたと...」 森友問題に言及:朝日新聞デジタル 2017年3月10日
船田氏は、栃木県内で幼稚園や高校などを運営する学校法人「作新学院」(栃木県)の学院長。6日付のブログで、大学設置認可や国有地売却をめぐる自身の苦労話を紹介したうえで、「特別の力学が働いたと思わざるを得ない」と指摘。森友学園の幼稚園の教育内容を「極めて異常」と批判していた。
船田氏は取材に対し、国有地売却について「事がうまく進みすぎているなという印象が極めて強い」と語り、「本当に安倍晋三首相側、役所側に不正がないとすれば、積極的に自ら情報公開すべきだ」として、政府側に説明を求めた。
3月10日。これまで、4月の小学校開校に向けて準備を進めてきた森友学園籠池泰典理事長は、大阪府に対して「認可申請を取り下げ」、時期は明らかでないものの「理事長を退任する」と発表したことを受けて、自民党の二階俊博幹事長は、「お騒がせしたのだから、早くこの問題が収まることを期待する」(3月10日)と述べて、この事態の収束と幕引きをにおわせています。
「隠されていた」というよりも、誰からも「問われなかった」と表現した方が正確かもしれません。森友学園の小学校は、次々と障壁を突破していき、「特別の力学」(船田元衆議院議員)で飛翔できる浮力を得て、猛スピードで「独自の教育理念」を具現化していこうとしていたのです。森友学園には、強すぎる追い風が吹いていたのです。
その本体がどこにあるのか、まだ正確な構図はわかっていません。けれども、森友学園が「しつけ」を重視し、「戦前の教育」を彷彿とさせるような学校像を描いていたことと、 政府がこの国会で成立をめざす「家庭教育支援法案」を重ねて考えてみたいと思います。
「家庭教育」を支援することには、誰も異議を唱えないようにも思いますが、法案の内容を読み込んでいくと、にわかに理解され共有されるとも思えない「国家観」や「家庭像」が姿を現します。素案の段階では、「子に国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにする」という基本理念が書き込まれていました。「個人の尊厳」を重視する戦後教育を、「国家の臣民」として訓育してきた戦前の教育に引き戻す意図は削除されたとはいえ、法案の成り立ちと関係しています。
家庭教育支援、地域住民に協力要請 自民の法案明らかに:朝日新聞デジタル2017年2月14日
自民党が今国会で提出をめざす「家庭教育支援法案」の全容が明らかになった。国が家庭教育支援の基本方針を定め、地域住民に国や自治体の施策への協力を求めることなどが柱だ。一方、素案段階で「基本理念」にあった「子に国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにする」の文言を削除。与党内からも、「公」が家庭に介入しかねないことへの懸念があり、考慮したとみられる。
法案は、同一世帯の構成人数が減り、家族が共に過ごす時間が短くなるなどの環境変化で、家庭教育支援が「緊要な課題」だと指摘。基本理念で、家庭教育を「父母その他の保護者の第一義的責任」と位置づけた。「子に生活のために必要な習慣を身に付けさせる」ことや、支援が「子育てに伴う喜びが実感されるように配慮して行われなければならない」ことなどを盛り込んでいる。
家庭教育支援法案の背後に見えるのは、 「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は互いに助け合わなければならない」(自民党・憲法草案24条)に見られる伝統的家族観の色濃い反映です。「家族の助け合い」までも憲法に書き込むのであれば、「夫婦間の愛情」「親子間・兄弟姉妹間の愛情」「祖父・祖母及び年長者への敬愛」「友達間の友情」等も、法律や条例に書き込むべしということになります。こうした議論にふれるたび、私は10数年前での国会でのやりとりを思い出します。
子育て困る親は無視!?安倍政権「家庭教育支援法」の仰天中身( 『女性自身』2017年1月10日)
なぜ今、家庭教育なのか。話は10年前までさかのぼる。
「'06年、第一次安倍政権のとき、『愛国心の導入』を目標の1つにして、教育基本法を改正し、『家庭教育』の項目を新設しました。そこで、『保護者が子の教育に第一義的責任を有する』と明記しました。『家庭のあるべき姿』を規範として定めようとする、安倍晋三首相の一貫した考えが根底にあるのです」(谷口真由美さん)
親による子育てが大事だと強調し始めたのが「親学」だ。安倍政権は'07年の教育再生会議で、親になろうとする人が、育児について親学を学び、自治体に親学を学ぶ機会を提供することを提案した。ところが、当時、首相補佐官だった山谷えり子元拉致問題担当相が中心になってまとめた「親学マニュアル」がやり玉に挙ったのだ。
そこには、「脳科学では5歳くらいまでに幼児期の原型ができあがる。9歳から14歳ぐらいに人間としての基礎ができる」などと極論を展開したうえで、「赤ちゃんの瞳をのぞきながら子守歌を歌い、できるだけ母乳で育てる」「授乳中はテレビをつけない」「早寝早起き朝ごはん」「親子で感動する機会を大切にしよう。テレビではなく演劇など生身の芸術を鑑賞しよう」などと、家庭生活の"あるべき姿"が具体的に記述されていたからだ。
このトンデモ提言は、世間から猛反発を食らっただけでなく、内閣からも「人を見下したような訓示」だと厳しい批判が出て、「親学」の2文字は消えた。しかし、それでもめげない自民党は、野党だった'12年春、超党派の議員で「親学推進議員連盟」を発足させ、安倍首相が会長(当時)に就任。家庭教育支援のための法律の制定に再び舵を切った。
第一次安倍内閣の「教育再生会議」から出てきた「親学提言」をめぐって、教育基本法をめぐる議論の中で問題にしてきました。具体的な内容は、
10年前に書き記したブログを読み返してみて、現在を予見するような記述を改めて発見することになりました。
憲法を変えて、「国家が国民を管理・監督し、指導するのが当たり前」という戦前型価値観を「美徳」としている復古派がわいわいと騒いでいる安倍内閣は、「家庭教育基本法」「親学推奨義務化法」などを平気で起案する神経の持ち主が多い。「論じるに値しない」からこそ、ていねいに議論していく必要がある。(2007年5月3日)
「論じるに値しない」どころか、半分は現実に近づいていることに畏れを感じます。森友学園をめぐる報道を通じて、運営する幼稚園児たちが教育勅語を暗唱し、軍歌を合唱して、安倍首相を讃えて、中国や韓国に対する敵愾心を述べる映像が明らかになりました。 その結果、「森本学園の教育が素晴らしい」と感じた方はけっして多くないと思いますが、少なからぬ政治家が高い評価を与え、共感し、または賛美していたことを忘れてはなりません。
森友学園が準備していた私立学校の「独自の教育」は、入学を希望しないという選択が可能ですが、地域の公立学校は選ぶことができません。「公教育の森本学園化」の影響は絶大です。10年前に「まさか」と想像したことが現実になりつつある今、これからの教育を徹底的に論じていきたいと思います。
本コラムで連続して取り上げてきた「新共謀罪」の閣議決定がいよいよ近づいています。
そこで、緊急に3月26日午後6時から「共謀罪とは何か」と題した緊急トークライブを行います。かつて2005年から2006年にかけて共謀罪をめぐる論戦を野党として担った平岡秀夫元法務大臣と私が徹底的に語ります。事前予約制ですので、詳細と申込みは⇒http://www.kokuchpro.com/event/hosaka20170326/