2016年の夏から外国につながる中高生とアマチュアカメラマン達と一緒に、「PICTURE THIS:横浜インターナショナルユースフォトプロジェクト」なるものをやっている。
帰国して3年経ったが、未だ日本社会で戸惑いながらの生活が続いている順応性に欠ける花子にとって、日本人でも外国人でも、何らかの形で外国につながる人たちと過ごすのが、心休まる時である。
そんな花子が、2年程講師として関わっている写真クラブのおじさんおばさん達と、外国につながる中高生がコラボしたら、それだけで面白いプロジェクトになるではないかと、このプロジェクトの企画をしながら思っていたのが昨年の2月ごろ。まさか、横浜の港の見える観光地で、大きな写真展ができるとは夢にも思っていなかった。
その写真展は、この土曜日の1月14日から22日まで「象の鼻テラス」で開催となる。https://www.zounohana.com/schedule/detail.php?article_id=648
そもそも、このプロジェクトは数年前に川崎で起こった中学1年生殺害事件という痛ましい事件がきっかけだ。加害者も被害者も外国につながる中高生だったと聞いている。彼らは日本で生まれ育ち、自身は日本人と思っていても社会からは日本人として受け入れてもらえない悔しさを感じてきたのではないだろうか。ハーフやダブルやいろんな言われ方を周りからされることで、彼ら自身が自分のアイデンティティーを見出すことが難しくなってはいなかっただろうか。2つの文化的バックグラウンドを持つ我が子の姿を通しても、時々そんなことを感じる時がある。
そんな宙ぶらりんで多感なティーン達が素でいられる場所は、残念ながらこの日本社会にはあまりない。それをいうなら、外国につながってもつながらなくても、様々な境遇で居場所のない中高生は多いのだが、まずは私がいる場所で私の周りにいる人たちと一緒にできることはないかと思ったのがこのプロジェクトの始まりだ。
参加者募集は、外国人中学生の学習支援の教室や、多文化共生の活動をしている市民団体、様々なインターナショナルスクールに声がけをし、私たち家族の周りにいる外国につながる人たちの協力も得つつ、時には道を歩いている外国人家族に近づいて直接チラシを渡すという怪しい行動もしながら、ティーン達が集まってくれた。
外国につながるといっても様々である。日本で生まれ育った外国籍の子もいれば、国際結婚家庭で育った子や、幼い時に移民してきた子、最近移住して日本語を勉強中の子、親の駐在のため期間限定で日本にいる子、そして海外生活の長い帰国子女。
それぞれの立場は違っても、集まったティーン達に共通するのは、写真に対する好奇心だ。そのパスポートを持って月2回のペースで行われたワークショップにやって来た。
日本語と中国語と英語が飛び交うワークショップでは、1つだけルールを決めた。
他人をリスペクトすること。
それは、カメラを向けられた人が「撮るな」と言ったらすぐにカメラのむきをかえることであり、どんな作品に対しても、意見を言うのはよいが、貶したり制作者を中傷するようなことは言わないことだ。
このプロジェクトでは、何が正しくて何が間違いかという評価はしないが、他人のNOという権利と自由に表現する権利を尊重しないのは間違っていることを若いうちに知って欲しいと思っていた。表現の自由には、責任がついてくることも。
でも、私が心配する必要もなく、参加したティーン達はこのルールをちゃんと守ってくれた。
ボランティアの大人達にも守ってもらうルールをしいた。子ども達の信頼を裏切らないこと。写真の選択は子ども自身にさせること。自分の意見を言いたくてもグッとこらえ、その代わり、どうしてその写真が好きなのか、彼らの視点や表現について語り合うこと。
結果として、31枚の作品が生まれた。展示会場の幅10メートルもある壁を埋めるため、ボランティアの写真も一人一点ずつ追加して合計40点を展示するが、一番大切なのは、ファイナルプロダクトではなく、そこまでのプロセスだ。
「写真なんてただ撮ればいいんでしょ」と思っていた子ども達も、写真は思いを写し、自分の存在を表し、他人とコミュニケーションをとるための道具になることを知り始める。そうなると、最初は半信半疑だったティーン達は、独自の創造性とパーソナリティーをフル活用し、それを写真で見せてくれるから面白い。何よりも、最初は自信なさげに暗い表情だった子も、自己表現して受け止められることで、明るい表情へと変わっていった。
自由に表現できる環境があり、それを受け止めるてくれる人は誰にでも必要だ。面と向き合ってくれる人、内なる声に耳を傾けてくれる人。そんな人が、いじめを含む犯罪加害者を生み出さないために、この社会にもっと必要だ。
プロジェクトに参加したインターナショナルティーン達を通して、私もいろんなことを学ばせてもらった。これをバネに第2回目のプロジェクトの準備も進めたいと思っている。
最後に、初めての企画にも関わらず、プロジェクトの必要性を理解し支援してくれた、多くの機関や個人のみなさんに感謝します。