地域経営的観点からのコミュニティ型賃貸住宅の可能性
最近、賃貸住宅の災害対策について、特に共助の関係構築に注目して、調査研究を行ってきた中で、入居者同士あるいは入居者と地域住民との交流の機会を設けているコミュニティ型賃貸住宅の事例にいくつか触れる機会を得た。
これらは子育て支援、高齢者支援といったコンセプトを持つ賃貸住宅で、必ずしも災害対策を目的にした取り組みではないが、交流が共助の関係を育み、それが防災にも必ず生きてくるだろうと期待が持てるものであった。さらに、これらの賃貸住宅が、子育て支援、高齢者支援といった社会の要請に応えるだけでなく、少子高齢化時代の地域の重要課題に応えているという新しい発見にも出会うことができた。
例えば、2012年に、東京都武蔵野市に建設された子育て支援をコンセプトにした民間賃貸住宅は、現在減少しつつある社宅や官舎が従来担ってきた若いファミリー世帯を地域に呼び込む機能を、それらに代わって担い、地域の担い手の確保・育成という課題に応えようとしている。入居者同士積極的にコミュニケーションしながら、お互いに子育てを楽しもうとする世帯が入居しており、そうした住民は、いずれ地域住民とも交流を図り、地域の担い手となっていくという期待を抱かせるのである。
同じく2012年に東京都北区に建設された、サービス付き高齢者向け住宅と子育て支援型住宅を併設した民間賃貸住宅は、少子高齢化が非常に進行していた地域に、子どもの増加をもたらしたばかりでなく、入居者と地域住民の交流を深めることで、地域のお祭りに入居者が参加するなど、地域の活力維持に貢献している。こうした地域との関係は、将来入居者が入れ替わったとしても引き継がれていくはずである。
これらの事例は、いずれも少子化や高齢化といった社会的な課題に住まいの面から向き合い、人々のコミュニケーションや交流を基盤に、その課題を解決していこうとしている。そして、その取組が、地域の担い手になりうる住民を得ることにつながっている。
筆者は、ここに地域経営という面からの賃貸住宅の大きな可能性を感じる。
コミュニティ型賃貸住宅を導入することで、将来的に地域の担い手を地域に呼び込むことが可能となる。地域との関係を深めた賃貸住宅入居者は、地域に愛着を得て、持ち家も地域内で得ようとするだろう。
その循環を築くことが持続可能な地域を築くために極めて重要なテーマと言えるのである。
株式会社ニッセイ基礎研究所
社会研究部 研究員
(2014年4月22日「研究員の眼」より転載)