女子大生が提案するインセンティブとペナルティー!
日本の大学で授業を担当してから早くも10年が過ぎた。最初に担当していた科目の授業名は「少子高齢化時代の社会保障」で、主に日本の少子高齢化の現象と社会保障制度を教える授業であった。
当時は日本に来てから4年しか経っておらず、何より日本語に対する不安が大きかった。「授業中、日本語を間違えたらどうしよう」、「私の日本語が聞き取れなかったらどうしよう」、「学生から難しいことを聞かれたらどうしよう」等心配で、授業前日には壁を相手に何度も授業を繰り返す練習を行ったことが未だに記憶に新しい。
今、そのときを振り返ってみると、懐かしさよりも恥ずかしさがこみ上げる。何よりも、下手な日本語を我慢して聞いてくれた、当時の学生の皆に心から感謝を申し上げたい。
教育歴10年目になった今は授業の不安感からはある程度解放されたものの、最近になってもう一つ解決したい悩みができた。それは「どうすれば学生のやる気を出させ、楽しい授業ができるのか」である。授業のスタイルは先生ごとに異なるので、どれがいいとは一概に言えないが、私は学生参加型の授業を選好する。ときには乱数を発生させたり、くじを引いて学生からの意見を聞くこともある。しかし、学生のやる気を出させるのはなかなか難しいのが現実である。
そこで、ちょうど学生にインセンティブを説明する機会があったので、学生に直接「どのようなインセンティブを提供すれば皆さんがより積極的に授業に楽しく参加できると思いますか」と聞いてみた。
経済学におけるインセンティブとは「人にある行動をとらせたり、それをやめさせたりするためのいわば「道具(アメとムチ)」のようなもの」として定義される。学生からも経済学の定義通りにインセンティブやペナルティーの両方の意見が出た。ちなみに学生のほとんどは、今まで経済学と関連した講義を受講した経験があまりない女子大生である。まず、彼女たちが提案してくれたインセンティブは次の通りである。
•手を上げて発言したらお菓子がもらえる。
•前から5列目まで座ればボーナスポイントがもらえる。
•テストを簡単にする。
•単位が簡単に取得できるようにする。
•授業に積極的に参加した人のテストは簡単にする。
•毎回授業の内容を要約して提出させる。
•出席中心で評価する。
•予想問題を提供し、予想問題から試験問題を出題する。
•クラスの人数を少なくする。
•DVD等の映像を見る。
•試験よりも授業態度を重視する。
•グループで発表するようにする。
•毎回小テストを実施する。
•教室を一階にする。
•4回の発言でA+がもらえる。
•授業中に10分休憩時間を入れる。
•授業を面白くする。
•本を読ませ、ディスカッションさせる。
•皆が積極的に授業に参加したら、テストの問題を一つ教える。
•教室を円型にし、討論しやすくする。
•ポイントがたまったら景品と交換する。
•授業時間を2時限や3時限にする。
次はペナルティーである。
•授業に欠席したら減点する。
•授業に遅刻したら100円の罰金を支払う。
•私語1回に500円の罰金を支払う。
•発表しなかった人は減点する。
•理由なく3回欠席したら、テストが受けられない。
以上の結果から見ると女子大生の多くはペナルティーよりはインセンティブを選好していることが分かる(これは女子大生に限られた現象ではないと思うが...)。また、お菓子をほしがる女子大生らしさも感じられる。
上記に挙げられたすべての項目を授業に反映することは現実的に不可能であるが、いくつかの項目(特にインセンティブ)については積極的に検討してみたい。また、上記の内容が「どうすれば学生のやる気を出させ、少しでも楽しい授業ができるのか」に悩まれている先生方に少しでも参考になることを望むところである。
株式会社ニッセイ基礎研究所
生活研究部 研究員
(2014年5月14日「研究員の眼」より転載)