日頃の仕事にでてくる数字は「○○円、対前年○%増加」くらいしか見なくなって久しいが、世の中には、例えば長さは「メートル」とか重さは「キログラム」、時間は秒、分など、いろいろな単位に囲まれている。というわけで、単位のいわれなどを調べてみる。
「1メートル」とはどれほどの長さか。特に無理やり覚えさせられたわけでなくても、日常の経験からほぼわかるだろう(日本においては?)。しかし別にメートルでなくても、例えば「尺」で話が通じる仕事や環境もあるに違いない。すると知らず知らずのうちにそういう直感が身についてくるだろう(*1)。
また「風速15メートル」といえば、どんな風かほぼ見当がつく。しかし「風速50マイル」と言われたらどうか。アメリカではそんなふうに言うらしい。すぐにはぴんとこないが、メートルに直すと風速22メートル、となり、ここでやっと相当強い風だという気がする。もし長年アメリカに住んでいれば、マイルという長さや速さに対する感覚も働くのだろう。
長さ(m)、面積(㎡)、体積(㎥)、速さ(m/s)など、日頃誰でも使う基本的な単位については、小学校の算数で習うものなのだが、中学校以降、算数が数学と名を変えて以降は、実はあまり出てこない。
数学というのはどうやら使う単位にすら関わらない最も基本的な?分野、らしい(*2)。その代わりに、物理・化学の話が進むにつれ、力や電気などに関わるものも含め、さまざまな単位が現われる。
さて一番わかりやすいと思われる【長さ】に関してみてみよう。長さは、すでに出てきたように、メートルとかヤードとか尺とかいう単位があるが、ただ単に「並べて比べる」だけで済むのなら、見てわかるから、単位を使う場面すらない。
次に、離れて動かせないものでも、ひとつの「ものさし」があれば、それが何個分かをもって長さを比較できる。そうやってひとつの基準ができて、どんどん精密になってきたのが単位というものだろう。
さて、そうすると1メートルとはそもそも何の長さなのだろうか?尺とかヤードとかは?それは誰が決めているのか。法律上はどうなっているのか。
【時間】についてはどうか。時間は長さと違って見えないし、横に並べられない(?)ので、少し難しい話になりそうだ。とはいえ何らかの繰り返す動きをもとにしたということらしい。
太陽や月など天体の動き、季節の変化、潮の満ち引きといった自然現象。あるいは振り子、砂時計のように人工的に一定の時間周期を作ることもできる。あるいは人間の脈拍などもあるのだが、何を基準にするか。
【速さ】というのは、長さと時間がわかれば事足りる・・・のだろうか。確かに「秒速○メートル」というように時間と長さの組み合わせだし、記号でもm/sなどという組み合わせだから、ほかには何も言うことはない?
それにしてもたとえ実際の数値がわからなくても、短距離走では並んで走れば速さそのものは比べられるし、列車が走っているのを見て早いとか遅いとか言える。長さや時間を介さない、なんとなく独自の感覚のようでもある。
といったところで、いよいよこれらの単位がどう決まっているか、変遷も含めて紹介しよう。
・・・と思ったら、残りスペースが中途半端に少なくなってきた。そこで正確な話は次回以降に持ち越すことにして、こんな単位がある、ということだけ先に示しておこう。
○基本単位
【長さ】 メートル (m)
【質量】 キログラム (㎏)
【時間】 秒 (s)
【電流】 アンペア (A)
【温度】 ケルビン (K)
【光度】 カンデラ (cd)
【物質量】モル (mol)
○組立単位(基本単位を用いて表される単位)
全部挙げるわけにはいかないが、比較的よく聞く?ものを列挙すると
【速さ】メートル毎秒(m/s)
【面積】平方メートル(㎡)
【密度】キログラム毎立方メートル(㎏/㎥) など
特に名称をもつ組立単位。名称は、その研究分野の代表的な科学者の名前がつくことが多い。
【力】 ニュートン(N 1N=1㎏・m/s)
【エネルギー】 ジュール (J 1J=1㎏・m/s )
【圧力】 パスカル (Pa 1Pa=1㎏/(m・s) )
【電圧】 ボルト (V 1V=1㎏・m/(s・A) ) など
次回、長さ、時間などの基本単位の一部について、その簡単な変遷と最新の決まり方について。
(*1) ちなみに筆者は「残りは?120ヤード?」という会話のでてくるスポーツをよくやるので、それで考えるようになる。1ヤード=0.914mだからヤードとメートルを間違えるととんでもないことになる・・・といいたいが、筆者の腕前では実際には影響ない。そこは気分の問題。
(*2) 数学辞典(岩波書店)でも、「単位系」としてちょっとだけ載っている程度
関連レポート
(2018年5月9日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
保険研究部 主任研究員