海外にいる人とSNSで情報をやりとりしたり、海外の動画を楽しんだり、今やインターネットは国境を越えてつながっているのが当たり前だ。では、それらの情報を、どのように通信しているのか想像できるだろうか?
その正体は、海の底に横たわる「光海底ケーブル」。たとえば、日本とアメリカ間であれば約9,000kmの距離を1本のケーブルでつないでいるのだ。
このシステムを手がけるのは、NECの光海底ケーブル事業。世界にいくつかある光海底ケーブルを手がける企業のうち、NECはシェアのトップ3に入っている。
光海底ケーブルは意外と細かった
海外とのあらゆる通信で扱われる膨大なデータは、たった1本の光海底ケーブルを行き来している。行き交うデータ量が大きいから、ドラム缶くらいの太さかと思いきや、人間の親指くらい細いというのだから驚きである。
光海底ケーブルの一部(実物)。深いところの海底ケーブル(左)は直径わずか17ミリ
浅いところの光海底ケーブルには、光ファイバを保護する鉄線が巻かれているため、より太く頑丈にできている。深いところの方が水圧が高いから太く作られていると思われがちだが、そうではない。深海は、サンゴ礁や海洋生物が少なく、漁などに起因する障害が少ないため、細い光海底ケーブルを採用しているのだとか。
南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オーストラリアなど、南極大陸をのぞく、すべての大陸と日本はこの光海底ケーブルでつながっている。日本で海外のWebサイト、たとえばハフィントンポストUS版を見ることができるのも、この光海底ケーブルのおかげなのだ。
衛星通信にとってかわる、光ファイバの海底ケーブル
大リーグの試合など、海外とのテレビ中継の場合はどうだろう? 以前は、衛星通信が主流だったテレビ中継も、光ファイバが使われるようになってからは、そのほとんど(99%)が光海底ケーブルに変わってきたのだという。
光ファイバの海底ケーブルによる通信は、衛星中継よりも遅延が少ない点が最大のメリット。36,000km上空の静止衛星と、地球の地表(海底)を這う光海底ケーブル、それぞれの距離を比べると光海底ケーブルの方が遥かに短い距離でつながっているため、高速通信が実現できるというわけだ。
光海底ケーブルを敷設する作業は、まるで巨大なクレーンゲーム
光海底ケーブルを這わせる海は、深いところでは水深8,000mにも及ぶ。一体どのようにして、深い海の底に長いケーブルを敷設しているのだろう?
海底にも高い山(海山)や深い谷(海溝)、柔らかい泥のような海底面もあればゴツゴツした硬い海底面も存在する。サンゴ礁や沈没船などを避けて、なるべく平らな海底面を通るように、事前の海洋調査を綿密に行っている。
事前の海洋調査により決められたルートに沿って、光海底ケーブルを積んだ船が移動しながら敷設していく。光海底ケーブルは、船から斜めに投入していくため、ケーブルが海底に着地する距離は水深の約2~3倍、つまり水深8,000mの場合、実際には船の後方、だいたい16~24kmの着地ポイントを狙わなければならない。それも、海上の風や潮の流れを計算しつつである。まるで大きなクレーンゲームをしているかのよう。
光海底ケーブルの敷設が完了するまでにかかる時間は、日本とアメリカをつなぐ場合、2カ月以上にもおよぶ。作業者はその間、24時間体制でずっと船の上で作業しているというのだから恐れ入る。
私たちがいつも利用しているインターネットの国際通信。それを可能にするのは大陸間をつなぐ1本の光海底ケーブルだった。それは、高い技術力と“神業”のような熟練の技によって支えられているのだ。
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