ヒトのタンパク質には、無秩序な領域が広く存在している。こうした無秩序な領域の中には、タンパク質同士が相互作用する際の界面として機能するものもある。今回Z Woodたちは、ある酵素の表面に付着している本来的に無秩序な尾部が、この酵素が取り得る多数のコンホメーション状態を、アロステリック阻害因子に高い親和性を持つ状態へと移行させることを明らかにしている。この作用は、完全にエントロピー的な力の働きによるもので、尾部の長さの関数として表され、化学組成によるものではない。このような「エントロピー的調整器」にはアミノ酸配列や構造上の制約がないため、タンパク質のエネルギー状態を微調整するための容易に実現できる適応と考えられ、真核生物のゲノム中に本来的な無秩序性が広く見られる理由はこれで説明できるかもしれない。
Nature563, 7732
原著論文:
doi: 10.1038/s41586-018-0699-5
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