海底堆積物中のメタンの嫌気的酸化は、全球規模のメタンサイクルで最も重要であり、これはメタンを酸化するアーキアと硫酸還元細菌からなるコンソーシアによって行われる協働過程である。このような栄養共生関係の生化学的基盤は十分に解明されていない。こうした過程には、協働している微生物間での拡散による代謝産物の交換が不可欠だとされてきたが、今回2つの研究グループがこの考え方に疑問を投げ掛けている。
V Orphanたちは、太平洋岸北西部のハイドレートリッジ・ノースにある活動中のメタン湧出点から採取した堆積物から得られた微生物コンソーシア中での生合成活性を単一細胞レベルで調べた。細胞活性は栄養共生の相手との間の距離とは無関係であることが明らかになり、これは中間代謝産物の短距離拡散が関わるモデルとは相いれない。そして、アーキアと細菌の間では直接的な電子伝達が起こっていて、これはアーキアのANME-2が産生する大型のマルチヘムシトクロムによって仲介されており、これがこうした相互作用の中心的な機構であることが明らかになった。
一方G Wegenerたちは、カリフォルニア湾のガイマス海盆で採取された熱水噴出孔堆積物由来の微生物試料中で起こっている種間の電子交換は、コンソーシアのパートナーの間をつなぐ「ナノワイヤー」を介した電子の直接伝達を通じて行われている可能性が最も高いことを明らかにした。彼らは電子伝達が線毛様の構造と外膜のマルチヘムシトクロムを介して行われていると考えている。
Nature526, 7574
2015年10月22日
原著論文:
doi:10.1038/nature15512
doi:10.1038/nature15733
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