「残念ハーフ」は誰が生んだのか

みなさんは「ハーフ」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?

みなさんは「ハーフ」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?

バイリンガル、モデルのような容姿、海外在住経験ありーーこんなイメージが真っ先に浮かぶのかもしれません。それと同時に、日本語が苦手、空気が読めない、日本文化を知らないーーそんなネガティヴなイメージもあるかもしれません。

私は、日本とチェコのハーフです。そして、幼い頃から、これらの"ステレオタイプ"に悩まされてきました。

「えっ、ハーフなのに日本語しかできないの?」

幼少期、何度となくこの言葉に傷つけられてきました。生まれたのはチェコですが、住んでいたのは生後数ヶ月まで。幼稚園から小学校にかけての2年間はハンガリーでしたが、英語圏ではない国。それ以外の期間は、ずっと英語に触れることなく、日本の、大阪で育ってきたのです。

父の転勤で、ドイツで中学校生活を送ることが決まった時、日本語で学べる日本人学校ではなく、すべての授業が英語で行われるインターナショナルスクールに通うことを選んだのは、この「ハーフなのに日本語しかできないの?」というステレオタイプに苦しめられたくないという思いがあったからです。

毎晩、深夜3時まで英語の勉強に没頭したのも、すべてはこの偏見に打ち勝ちたいという思いがあったからです。

中学を卒業する頃、私は不自由なく英語が話せるようになっていました。これで、ようやくステレオタイプから来る偏見に苦しめられずに済むと思っていました。でも、現実は違いました。

「英語ペラペラで、ハーフってズルいよね」

私の血の滲むような努力は「ハーフだから」の一言で片付けられてしまうのだという現実を突きつけられ、言いようのない悔しさにまた傷つけられました。

こうしたステレオタイプに悩まされるハーフの友人は、私のまわりにも数多く存在します。例えば、カナダと日本人のハーフである友人は、黒髮で一重まぶた。周囲からも、「ハーフなのに日本人みたいだね」と、明らかに落胆の混じった言葉をかけられることがよくあるそうです。

また、スペインと日本人のハーフである友人は、大阪生まれ大阪育ち。高校に入るまで、一度も海外に出たことがありませんでした。

「え、おまえハーフなのに海外に行ったことがないの?」

周囲は軽い"いじり"のつもりだったのかもしれませんが、彼にとっては馬鹿にされたように感じることも多かったようです。

ハーフには、とかく「語学」と「容姿」が期待されます。語学は堪能だけど、容姿はイマイチだと「語学だけハーフ」、その逆だと「顔だけハーフ」、そしてどちらも持ち合わせていないハーフは「残念ハーフ」と呼ばれたりすると聞いたことがありますが、この話に悲しい思いを抱いているハーフは、きっと私だけではないことと思います。

たとえ冗談でも、「残念ハーフ」などと呼ばれて、いい気持ちがする人などいるはずがありません。もちろん、私自身もまっぴら御免です。だから、死に物狂いで語学を勉強してきました。だから、ティーンエイジャーの頃は必要以上に見た目を気にしてしまっていました。今から思えば、多くの人が抱く「ハーフ」のステレオタイプから外れることに、知らず知らずのうちに恐れを抱いていたのかもしれません。

「ハーフ」はカテゴリーの一つにすぎません。たまたま異なる人種や国籍を持つ両親のもとに生まれたという、たったそれだけの共通項があるだけです。すべてのハーフが語学が堪能なわけでも、すべてのハーフが美形なわけでも、すべてのハーフが海外経験が豊富なわけでもないのです。

現在、日本で生まれる約30人に1人は、外国にルーツを持っている子どもだと言われています。今後は、さらに増えていくことでしょう。

そんな彼らが、こうしたステレオタイプに悩まされることなく、「ハーフ」という枠に縛られずに自分らしく生きていける社会となるよう願ってやみません。

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