ムコ多糖症2型 耀とママの日本の医療平和を願う日記
【わが家のこれまで】
耀は生まれた時から身体が硬く、母親の私は何かおかしいと思っていました。
しかし、
生まれた病院で看護師さんに聞いても、
かかりつけのお医者さんに相談しても、
定期健診で確認しても、
返ってくる答えは「正常の範囲」。
生後5カ月から預けた保育所の先生たちや親族から毎日のように報告される
身体の硬さやいつまでもお尻を突き出して歩く姿、
ゼーゼーする息遣いなどの「異常」。
「正常」と「異常」に挟まれて、
異常に気付いている母としてわが子のために何もしてあげられないただ苦しいだけの2年間を過ごしました。
耀が2歳の時に、保育所の先生たちの機転によってようやく診断に結びつきました。
わが家にとって耀が『ムコ多糖症2型ハンター症候群』と診断されたことは、
絶望ではなく、
わが子の命のために前に進んでいく、
そして、わが子のためだけではない命の闘いの始まりでした。
希少ゆえになかなか見つけていただけない難病ムコ多糖症を
新生児マススクリーニングに入れて頂きたい、
もう私のように苦しむママが居なくなってほしい。
先天性の疾患を抱えても、一生懸命生きています。
耀は毎週治療薬エラプレースによる酵素補充療法を受けて、高校2年生まで成長できています。
大学への進学を希望しています。
治療薬があるからと、一生 医療費の支払いを課さないで頂きたい、
だってムコ多糖症の患者はこのお薬があるから生きていられるのです。
違いを理解してみんなと一緒に大人になりたい、なってほしい
と願っています。
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わが家のこれまでのことは著書「命耀ける毎日」をお読みいただけると幸いです。
この他「日本の薬はどこかおかしい!」著者/福田衣里子・中井まり 聞き手/鳥越俊太郎と共にAmazonなどのネット販売から購入していただけますし、公立図書館などにも置いて頂いています。
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こんにちは。大阪の中井です。
最近この記事を見つけてくださり、リツイートやお気に入りにしてくださる方々がいらっしゃいます。先天性の難病の早期発見の大切さをご理解いただきありがとうございます。
再度掲載させていただきます。
診断がつかない間の母の苦しみ、多数決をすると圧倒的に負けてしまう希少難病を持って生まれた子どもが、治療薬があることでこうして成長できていること、早期発見の願いを知っていただきたいと思います。
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ムコネットTwinkle Days代表 中井まり
わが家の長男 耀は先天性代謝異常症ムコ多糖症Ⅱ型です。成長するにつれて進行する難病を抱えて生まれてきたにもかかわらず、診断されたのは2歳になってからでした。
耀は1998年10月6日、早産で逆子と言うこともあり帝王切開でしたが、それにも拘らず産声を上げ元気に生まれてくれました。しかし9か月に満たないため肺が未熟でしばらくNICU(新生児集中治療室)でお世話になり、母子同室の病院でしたが私はたくさんの管につながれた耀に会うためNICUに通う毎日でした。
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主治医のお計らいで、退院する前日に『耀とまる一日同室』と言う嬉しいプレゼントをいただき、他のお母さんたちと同じように新生児ベッドの耀を抱っこ出来ました。ところがこの時すぐに「体が硬い」ことに気が付き、お姉ちゃんの時とは全然違う硬さに違和感を覚え看護師さんに相談しますが
「そうかなぁ」
との返答。先天性代謝異常検査で再検査となるも担当の小児科医は
「問題なし。早産で生まれて保育器に入っていた子は引っかかりやすい」
とのことでした。
ようやく退院した耀はその日から、寝かせると30分ほどですぐに泣き出し、夜は夫婦交代であやして熟睡する日はありませんでした。これは後でわかったことですが気管が狭いために横になると息苦しくなり、その度に起きて泣いてくれていたのです。このまま泣かずに知らせてくれなかったらと思うと、ぞっとします。
〈診断までの苦しい不毛な時間〉
私は仕事をしていたので耀を生後5か月から保育所に預けたのですが、そこで指摘されたのは『体の硬さ』。ベテランの保育士さんと園内看護師さんが揃って心配してくださいました。ところが1か月、3か月、6か月定期健診の際にかかりつけ医やその他の医師に相談しても
「個人差の範囲、異常はない」
の診断。これは何度か繰り返され、保育士さんを始めおばあちゃんも心配して伝えてくれるのですが、かかりつけ医に相談しても答えは相変わらず異常なし。最後にはだれがそんなに言うのか?!と医師をはじめ夫までもが怒り出す始末。確かに異常があることに気付いている私は、間に挟まれどうしたら良いかと大変苦しみました。そのような中、耀はむしろ他の子どもたちより大きいくらいに成長してくれていましたが、鼠径ヘルニヤが見つかり1歳のお誕生日の翌日に手術。その時麻酔を担当された先生が術後すぐにわざわざ私のもとに来て言われたのは
「耀くんは気管が狭いですね、本当に狭いですね。気管挿管が大変でした」
これは今も市立病院のカルテに記録されています。
一歳になっても体は大きいのになかなか歩こうとせず、お腹は丸くお臍はいわゆるでべそ。ようやく歩くようになってもお尻を突出し膝を曲げる姿は独特なものでした。その頃になると寝息が大きく、途中で息が止まりまた呼吸を始めるを繰り返します。独特の歩き方やお昼寝の呼吸を保育士さんたちは毎日のように心配して報告してくださいました。その時の私は「医師に相談します」と答えるものの、もうどうしたら良いか考えるのも苦しい状態でした。活発に動くようになると今度はゼーゼーハーハーと音を立て息苦しくしているので、気管支拡張剤を飲み続け、中耳炎も繰り返していました。
〈ようやく診断へ〉
ある日保育士さんが、用事で来られた理学療法士さんに耀の体のことを相談してくださり、そこから市立病院へ、そして大学病院の小児科へ繋がり、2001年1月12日に耀はようやくムコ多糖症Ⅱ型ハンター症候群と診断されました。そこから耀が命に係わる大変な進行性の難病を抱えていることを知り、わが家は何とかしなければと動き始めることが出来たのです。
ここから骨髄バンクの活動やアメリカでの治験参加につながります。
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(耀3歳)
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現在ムコ多糖症はⅠ型、Ⅱ型、Ⅵ型の治療薬が日本でも承認されています。Ⅳ型は治験が行われており、(※2015年4月 日本でも承認されました)タイプに関係なく変形した骨や関節に対して効果が期待できる新薬の開発が日本で始まります。他にも治療法の研究が行われています。
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(耀 6歳)
新生児マス・スクリーニングで『ムコ多糖症』を見つけていただくことが出来たら、少なくとも『診断までの2年間は苦しいだけの不毛な時間』を経験する家族はいなくなります。子どもたちは早期治療が始められ、無駄な投薬をせずに済みます。耀の場合は治療エラプレースを6歳から投与していますが呼吸状況が著しく改善され、現在中学3年生に成長しています。受験生です。(無事志望校に合格し、現在高校2年生)
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(治療薬投与を受けながら勉強をしています)
ムコ多糖症の独特の症状である硬い体、鼠径ヘルニヤ、膨らんだお腹と臍ヘルニヤ、狭い気管、骨や関節の変形、繰り返す中耳炎などの症状が出ているにもかかわらず、希少難病ゆえになかなか診断に結びつきません。耀はたまたま保育士さんが積極的に動いてくださったお陰で2歳で診断されていますが、ほとんどの子どもたちは症状が著しく進行した5歳くらいからようやく見つかる状況です。
そして重症型の子どもに早期に造血幹細胞移植をすると中枢神経に効果が期待できるとの論文が発表されました。新生児マス・スクリーニングで診断されれば、ドナーを探す時間が出来ます。
私はムコ多糖症の子どもたちを支援するためムコネットTwinkle Daysを主宰しています。
ムコ多糖症や新生児マス・スクリーニングの研究者を応援し研究助成を続けています。感染症から子どもたちを守るために予防接種法改正の活動に賛同し、骨髄バンクの活動に参加しています。ムコ多糖症ママ会を開催し情報交換などを行い、ムコネットTwinkle Days魔法の絵本の取り組みを始めました。
新生児マス・スクリーニングにムコ多糖症を入れていただき、これから生まれてくる子どもたちが笑顔で大きくなれますように、お母さんやご家族が私たちの様な不毛で苦しい時間を過ごさずに済みますように、命耀ける毎日が過ごせますようにと心から願っています。
TwitterID:@Twinkle_nakai
日本マス・スクリーニング学会誌23巻:№3 75~76ページより転載
中井耀・まり
ムコネットTwinkle Days代表。
命耀ける毎日ブログの管理者。
認定精神対話士
大阪大学(特定)認定再生医療委員会 委員
長男の耀が2歳の時に命にかかわる進行性の小児難病『ムコ多糖症2型』と診断され、難病とは無縁の生活をしていた私たちが耀の病気を通して色々な方と出会い、今まででは考えられなかった経験をし、そして平和で安全で豊かなはずの日本が、実は生まれてくる子どもたちや病気と闘おうとしている人にとって、決してそうではなかったことを知りました。
(2015年12月6日ムコネットTwinkle Daysより転載)