先日、各種ニュースメディアにて8月24日発表の内閣府の「NPO法人に関する世論調査」についての報道がありました。
僕も普段からNPO法人に関わることが多いので、データを見ながら少し解説をさせていただきます。
【市民の自主的な取り組みへの意識】
社会のニーズや課題に対して,市民自らが自主的に集まって取り組むことは大切だと思うか聞いたところ,「そう思う」とする者の割合が91.6%(「そう思う」55.9%+「どちらかといえばそう思う」35.7%):NPO法人に関する世論調査
社会的課題に対して市民による自主的な取り組みを9割が「大切」と思っている。東日本大震災以降、この手の数字は8、9割はいきますよね。これは素晴らしいことだと思います。
【NPO法人の周知度】
NPO法人について知っているか聞いたところ,「知っている」とする者の割合が89.0%(「よく知っている(意味もわかる)」19.7%+「言葉だけは知っている」69.3%):NPO法人に関する世論調査
そして、その市民活動の担い手、もしくは社会課題解決のプロフェッショナルとして存在するNPOを多くの人は知っていると。
この2つの数字だけ見れば、そしたら市民自ら活動することが大切と思う92%の多くの人は「NPOの活動に賛同し参画するぜっ!」ってなると思うのが妥当。しかしです。
【活動参加意向】
NPO法人が行う活動に参加したいと思うか聞いたところ,「思う」と答えた者の割合が17.5%,「思わない」と答えた者の割合が71.6%となっている。:NPO法人に関する世論調査
「市民活動は大切だし、やったほうがいいと思うし、NPOの意義なんかも少なからずわかっている......。でも、自分はやりたくないです」って。あなたの"大切な想い"はそんなものなのか?結局他人任せなのか?と思ってしまいます。理由を確認してみると、
【活動に参加したいと思わない理由】
活動参加意向について,「思わない」と答えた者(1,278人)に,なぜNPO法人の活動に参加したいと思わないか聞いたところ,「参加する時間がないから」を挙げた者の割合が43.6%と最も高く,以下,「参加する機会がないから」(29.9%),「関心がないから」(24.1%)などの順となっている。なお,「その他」と答えた者の割合が10.1%となっている。(複数回答,上位3項目):NPO法人に関する世論調査
自分は忙しいし、きっかけもないし、時々関心がないから...といった反応でしょうか。確かに現代人は忙しい。デジタル・デバイスに囲まれて、情報が溢れる世界にいて、可処分時間が限りなく少なくなっているからしょうがいないのかもしれません。
■ジブンごとと社会課題
では、自分が将来、到底解決できない社会全体の課題がジブンごとになったとき、それでも、「忙しい」を理由にできるのでしょうか。
例えば、今日帰宅時に交通事故を起こし、障害を背負ってしまったとしましょう。障害を持つと日常生活の中で、なぜ社会はこれほど不便なのだろう、と感じることが多々出てくる。
そんな時に、障害をもった人でも暮らしやすい社会を実現するために動いているNPOに、もっとがんばって何とかしてよ! と言いたくなると思う。僕だったら絶対そう思う。
ジブンごととなって、初めて社会の矛盾や整備の悪さなどに気付くのだが、障害を背負うまで忙しいからといって、NPOを応援することはほぼなかった。そんな人ばかりの世の中なので、「障害をもった人でも暮らしやすい社会を実現」がなかなか進まなくても文句は言えないと思うんですよ。
上記の障害を背負う話はあくまでも例ですが、結局、社会貢献って誰のためにするかといったら、将来の自分が困らないためにするんですよ。ぜひそういった考え方もある、というのは読者のあなたには理解をしていただきたいです。
■日本人の社会意識
今回の調査は、全般的に「社会貢献には賛成。でも、自分は社会貢献活動はしません」的なものになりました。これは、今回だけのデータなのか。それとも、以前からこの傾向があったのか。過去の調査、別の視点から見たデータを見てみましょう。
2012年度にNRIが実施した生活者1万人アンケートでも、「価格が高くても、被災地に寄付されるような商品を購入したいか」という問いに対して、「そう思う」と回答する割合は14%、「どちらかといえばそう思う」と回答する割合は55%となっている。エシカル消費に対する意識は性・年代によって大きな差はなく、すべての性・年代で、「価格が高くても、被災地に寄付されるような商品を購入したい」と回答する割合が6割を超えている。(「なぜ、日本人はモノを買わないのか?」、野村総合研究所、2013)
「マーケター必見! 全世代で69%いる"社会貢献消費"を願う人々とは」
エシカル消費(社会貢献消費)の話ですが、これらの消費活動の意識レベルは相当上がっているようです。
東日本大震災から2年が経過したが、日本人の被災地を支援したい気持ちにどのような変化があるのだろうか。被災地(岩手、宮城、福島)以外に住む15~69歳の男女に聞いたところ、震災直後に被災した人や地域を支援したい気持ち(強く+やや)を持っていた人は83.6%に対し、現在も持っている人(強く+やや)は76.6%。「強く持っている」人の割合は下がっているが、支援したい意志は大きく低下していない。(東日本大震災後の助けあい実態調査2013)
「東日本大震災から2年で変わった、社会貢献と消費意識調査5選」
先の調査にもある通り、国民の意識レベルはかなり高いまま維持、もしくは向上しているようですね。
東日本大震災前と比べて,社会における結びつきが大切だと思うようになったか聞いたところ,「前よりも大切だと思うようになった」と答えた者の割合が77.5%,「特に変わらない」と答えた者の割合が21.3%,「前よりも大切だとは思わなくなった」と答えた者の割合が0.6%となっている。
日頃,社会の一員として,何か社会のために役立ちたいと思っているか,それとも,あまりそのようなことは考えていないか聞いたところ,「思っている」と答えた者の割合が66.7%,「あまり考えていない」と答えた者の割合が30.9%となっている。(社会意識に関する世論調査|内閣府2013)
「東日本大震災から2年で変わった、社会貢献と消費意識調査5選」
このあたりも高い位置での一定層の意識が社会貢献的であることがうかがえます。
つまり僕が何を言いたいかというと、社会貢献意識は東日本大震災以降、多くの人が持っている、ということです。これは、今回の内閣府の「NPO法人に関する世論調査」だけじゃないってことです。
もちろん、これは企業活動にも影響していて、コーズ・マーケティングと呼ばれる寄付付き商品の販売やCSR(企業の社会的責任)理念の普及などが挙げられます。
社会貢献絡みのマーケティングについてもっと知りたい人は、 コーズマーケティングの限界を超えられるか? ボルヴィック「1L for 10L」をご参照下さい。
「社会貢献意識は東日本大震災以降多くの人が持っている」ということは今回の調査で改めてわかりました。このデータを見て、あなたは明日からどんな行動を取りますか?
(この記事は8月26日のYahoo!ニュース個人 「安藤光展の『CSRの向こう側』」より転載しました)