■で、寄付ってどうなってるの?
平日の24日・25日は年末の諸業務で残業確定という方も多いと思いますが、皆様メリークリスマス。
というわけで、12月後半はクリスマスシーズンということもあり、日本でもなぜかチャリティー・シーズンと化していると思われる昨今です。せっかくクリスマスのなので、日本の寄付動向について一度振り返ってみましょう。
先々週発売の拙著『この数字で世界経済のことが10倍わかる--経済のモノサシと社会のモノサシ』でも書きましたが、今や日本の寄付市場は1兆数千億円市場となっており、かなり大きな市場規模なっております。
ちなみに、1兆円前後の市場規模でいえば、「靴・履物(1.3兆円)」、「郵便物(1.3兆円)」、「インポートブランド(1兆円)」というものがあります。どのマーケットも誰でも知っているようなメジャーなものです。
市場規模的には大きいのですが、World Giving Index(※1)によれば、世界153カ国で寄付やボランティアしたことのある人の割合で日本は105位となっているそうな。ちなみに、トップ3は、アメリカ・アイルランド・オーストラリアの順だそうです。
厳密にいうと色々あるのですが、ざっくり言ってしまえば、日本では靴を見た事がない人はいないのに、寄付をした事がない人はたくさんいますねってことでしょうか。同じくらいのマーケットなのにそれくらい感覚差があるというのも不思議な感がしますね。
パラドックスのようでありますが、先日書いた人気記事「富裕層が寄付をしない理由"1位"が意外な理由とは」も面白いデータをまとめたので参考までにどうぞ。
■海外の寄付動向
ちなみに、世界最大の寄付市場はアメリカで約30兆円と言われています。
一方で例えばカナダは全員が確定申告をしなくてはなりませんので税額がどういう風に決められていくのか実に良く分かるのです。そして、私の場合は意図的に税務ソフトを使わず、手で計算しておりますので例えばこの寄付でいくら税金が減ったか、というのが手に取るように分かるのです。私が寄付をするようになったモチベーションの一つはそこにあるといっても過言ではありません。
日本ではしないよりしたほうがよいとされる寄付ですが、例えば、引用本文中にあるとおり、アメリカでの戦略的な巨額寄付(億単位)はよくある話だそうです。この"戦略的"というのが大きなポイントになるかとは思います。消費税増税には断固反対の人も、自分が支払っている他の税金はよくわかっていない人多いですよね。仕組みが海外と違うのでしょうがない部分もあるのですが。
2012年の米国における寄付総額は3,162億ドルで、前年の3,055億ドルから3.5%の微増(インフレ調整後1.5%増)となりました。米国で寄付が最大になったのは2007年の3,445億ドルですが、これと比較すると8%の減少となります。仮に現在のペースで寄付が増えた場合、2007年の水準に戻るには、最低でもあと6年はかかると推定されています。
平均すれば横ばいということなのでしょうかね。寄付大国アメリカでも色々と経済事情が絡んできてるみたいですね。今後の市場拡大というのは、ほとんどなさそうです。
法人寄付は前年の162億ドルから12.2%の増加となる182億ドルへと拡大。全体の約6%を占めています。この要因は、16.6%の税引前利益の増加と4%のGDP増加によるものと分析されています。米国においては、法人は近年、物品寄付を増加させていますが、約半分を金銭以外の寄付が占めており、そのうちの70%が薬剤となっています。
最近の寄付はモノというパターンも増えているのですね。日本の企業でもCSRとして、自社サービスを無償でNPOに提供する所もチラホラありますよね。イメージとしては近いのかもしれません。
ウェブサービスやソフトウェアの提供(サイボウズ、マイクロソフトなど)はお金もかからないし、よいNPO支援の形だと思います。CSRのオリジナリティにもつながりますよね。
節税対策で寄付しようが、下心のある寄付だろうが、悪い事をしているわけではないので、どんどんやっちゃえばいいのになと思います。しかしながら、寄付で"明らかな見返り"を求めると、いわゆる賄賂になってしまうので、そこには注意が必要でしょうがね。
■寄付のマイナス面とは
製薬企業が昨年度に医療機関に提供した奨学寄付金は計340億円に上ることが読売新聞社の集計でわかった。このうち、大口の寄付金は、高血圧や糖尿病など、売り上げが大きく、ライバル社の多い生活習慣病分野に集中していた。
日本製薬医学会の今村恭子理事長は「奨学寄付金の目的は学術・研究の振興だが、現実には、患者が多く、薬が多く使われる分野に偏り、営業の側面が感じられる。新薬開発が望まれる難病や基礎研究の分野にもっと支援があってもよいのではないか」と指摘する。
それでいて、日本では、上記のような企業寄付の話もありました。巨額の企業寄付は営業色が強いじゃない?という指摘なのです。企業の場合ですとどうしても利害関係を考慮した「超戦略的寄付」になりすぎると。賄賂にさえならなければ、まずは良いと思ってしまうのは業界に詳しくないからでしょうか?
辞職を表明した東京都の猪瀬直樹知事の発案で、沖縄・尖閣諸島購入のために都が募った寄付金が、使い道の決まらないまま後任に引き継がれる。その額十四億八百万円。都の担当者は「寄付した人の志を考えると、早く国に託したい」と話すが、日中関係に水を差す恐れもあり、判断は難しい。三代にわたる「負の遺産」になりかねない。
上記の寄付事例も記憶に新しい所ですが、今後どうなるのか...。適切な使い道を期待しています。
■戦略的な寄付アプローチ
先週、「フェイスブック、手軽に募金できる「今すぐ寄付」を開始」という話題もありました。世界のプラットフォーマーも寄付の仕組み作りに動いています。私としては、早く日本語ローカライズして欲しいのですが、すぐには色々なしがらみがあるので難しいかもしれません。
NPO育て上げネット・工藤さんの記事「創業6年、累計8,000万円を寄付する古本屋さん」でもありますが、日本でもビジネスと寄付をうまくつなげて、社会的なインパクトを強めようという企業も出てきています。
ちょっと気になるのは、NPOの現場の話を聞くと、ウェブから寄付へのコンバージョンは相当ハードルが高いと聞きます。これは、テクノロジーや仕組みが貢献する要素も多く、このあたりの課題を解決してくれる社会企業が出てきて欲しいです。
ウェブでの寄付でいえば、クラウドファンディングによる寄付集め(詳細は「クラウドファンディングは女性的か男性的か?」をどうぞ)も、年々注目度があがっており、2014年の寄付市場も注目していきたいと思います。
(「1 チャリティーシーズンに考える、2014年の寄付市場の行方」より修正・加筆し転載)