10月は、眼鏡の展示会シーズンでした。東京では10月半ばに東京ビックサイトで行なわれた第26回国際メガネ展「iOFT」を筆頭に各所で展示会が開催され、毎年恒例の「日本メガネベストドレッサー賞」の表彰式も行なわれました。その模様をニュースで目にした方も多いのではないでしょうか。
9月末には、パリにて世界最大級の眼鏡展示会「Silmo(シルモ)」が開催されていたのですが、その期間中に嬉しいニュースが舞い込んできました。
Silmoでは、その年に発表されるフレームや機器において、デザインの創造性や技術革新などで優れたものに授与される「シルモドール」というアワードがあるのですが、そのサングラス部門にて日本のブランドがグランプリを受賞したのです。1994年にスタートしたこのアワードは、"眼鏡のアカデミー賞"とも例えられるほど業界ではとても注目度の高いもので、国を問わず眼鏡デザイナーなら誰もが1度は憧れ、目標とする賞と言っても過言ではないでしょう。無名の新人が受賞により一夜にして世界のバイヤーから注目を集める、ということも少なくありません。
今回受賞したブランドとは、福井県福井市に位置する青山眼鏡のオリジナルブランド、「FACTORY900」。自社工場が誇る独自の油圧プレス製法により生み出される、立体的なフォルムが特徴的なブランドです。受賞したサングラスは、ラウンド型のフロントの上下をまるで折り紙のようにカクっと前面に折りこんだユニークなフォルムが印象的。そのシンプルでいて独創的な形状は、同社の高度な技術でこそ可能となるものです。私は、このフレームが技術部門ではなく、デザイン部門にてグランプリを受賞したことに、とても意味があると思っています。
日本のブランドが誇るクオリティの高さや、仕上げの美しさは今や世界に知られるところです。しかし、ともすると「Made in Japan」という品質面ばかりが前面に押し出されてしまいがちです。海外のバイヤーと話をしていても、やはり日本ブランドに期待するのはそうした部分であり、デザイン面やブランドの世界観を伝えるという点では少々遅れをとっているのでは、という意見も聞かれました。そうしたなか、今回はデザインが評価されての受賞です。しかも現在のトレンドに迎合することなく、独自のデザインで勝負し、それが評価されたのはとても価値のあることであり、日本の眼鏡業界全体にとっても喜ばしい出来事であることに違いないでしょう。
ちなみに、今年はこのシルモドールに例外的に審査員特別賞が設けられ、増永眼鏡のフレームが受賞をしました。こちらは、昔ながらの眼鏡のスタイルを、京都の竹と18金、βチタン素材を使って表現したフレームです。増永眼鏡といえば、以前もご紹介したように福井眼鏡産業の祖。老舗の活躍も、嬉しいところです。
近年、これらをはじめ世界で勝負している日本の眼鏡ブランドが増え始めています。今年の展示会でも皆それぞれ手ごたえを感じていた模様です。近い将来、日本ブランドに影響を受けたという海外デザイナーが現れるかも? なんてことも思わず期待せずにはいられません。
世界でも評価の高い品質やデザイン。ときにはそんな基準で、眼鏡を選んでみてもいいかもしれませんね。