フランスに住んでから、日本のことがますます好きになりました。
どこにいても、共に人間なのだと笑って許しあえたらどんなに素敵か。
こんな時代に生まれた私たち。もっと優しさをそばに。
そんなメッセージを作品に込めるのは、仏・ボルドーに拠点を置く気鋭の書道家Maaya Wakasugiだ。2017年にNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の題字を手がけ一躍ブレイクしたアーティストだが、実は国内外のファンは多い。日本でブレイクする以前からニューヨーク近代美術館MoMAでのパフォーマンスなど、書を「アート」として捉え、表現する手法は海外で高く評価されてきた。日本でもいわゆる著名人がMaaya Wakasugiの作品はもちろん、人柄に惚れ込み、作品を手に取ってきた。
かくいう筆者もその一人。彼の2015年MoCA東京で開催された個展LA Costlineで出会った「飛〜旅を続けましょう〜(Le saut〜Continuons le voyage〜」という文字に一目ぼれしただけではなく、「1977年生まれは今年飛ぶのよ」という彼の言葉に背中を押され、次のキャリアを選んだ。今も朝目覚めると「飛」の文字を目にするたびに「進むんだ」と勇気づけられている。
そんなMaaya Wakasugiが2年ぶりに日本で個展を開催する。個展のタイトルは、「和顔愛語(わげんあいご) Sourire avec amour」。聞きなれない言葉について本人に聞いてみると、禅語なのだと教えてくれた。
「『大無量寿経』に出てくる言葉なんですが、和やかな笑顔と思いやりのある話し方で人に接すること。ちなみにこの言葉には「先意承問(せんいじょうもん)」という続きがあるんですが、相手の気持ちを先に察して、その望みを受け取り、自分が満たしてあげるということ。」
「『和顔愛語 先意承問』とすると、笑顔と相手を思いやる言葉で人に接し、相手の想いを察し、相手に何が出ているのか、自分に何ができるか、常に自分自身に問いかける姿勢のこと。生きていて辛いこともあるけれど、そんな時こそ相手を思いやり許しあう姿勢を持つこと。そんな思いがこの4文字に込められているんです。」
和顔愛語に込めたMaaya Wakasugiの想いは、「笑って許しあうこと」だ。
「私自身はゲイですが、それを理由に辛い経験もありました。でもだからこそ、『笑って許しあう』という言葉にこだわりたい。相手の気持ちを想い、寄り添い生きていけたら。フランスという日本よりも多様性のある社会に暮らす中で、例えば友人の彼女に言われた、『Maayaはゲイの出会いに拘ってゲイバーに行きたいと言うけれど、街にはゲイが当たり前に存在しているんだから、わざわざゲイバーに行かなくてもいいんじゃないの?』という言葉で、あらゆる違いを受け入れるフランス社会の良さに気付かされました。」
「言葉も通じない、友人もいない、ボルドーに住み、ひとつひとつ人と出会う中で、人と社会のやさしさと、相手の気持ちに寄り添う大切さに気付かされました。そして同時に『和顔愛語』という言葉を生み出した日本社会のやさしさも。日本を離れたからこそ感じ、表現できた、作品が展示されるので、ぜひ遊びに来てください」
maaya Wakasugi個展「和顔愛語 〜Sourire avec amour〜」
DATE:12月1日(土)・2日(日)11:00〜19:00
PLACE:3E STUDIO 南青山[東京都港区南青山3-14-15 川俣ビル2F]
協賛:LVMHウォッチ・ジュエリージャパン(株)ゼニス
協力:浜松市 / GENXY / 3E STUDIO 南青山 / (株)サンコート山口文林堂 / 筆匠 平安堂 / ながしま笑会 (敬称略・順不同)
Maaya Wakasugi略歴
書道アーティスト (La Maison des Artistes登録会員)
1977年 岡山県生まれ
EU芸術協会国際芸術優秀作家の赤塚暁月、日展会員の田中節山に師事。
6歳より書道を始め、17歳で個展開催。
書の名門・大東文化大学を卒業。 "古代文字" をモチーフとした独自の作品スタイルを確立。書をアートとしてとらえ、これまでルーヴル美術館公認の関連ロゴマークの制作や、ニューヨーク近代美術館MoMAでパフォーマンスをするなど、様々な場所で表現を展開してきた。
2016年1月、世界経済フォーラム(通称ダボス会議)Japan Nightにて同フォーラム創設者兼会長のクラウス・シュワブ氏と書き初め。2017年にはNHK大河ドラマ「おんな城主・直虎」の題字を揮毫。フランスの国鉄SNCFのプロモーションビデオにも抜擢される。京都国立博物館で開催された国際人権NGO HUMAN RIGHTS WATCHのCouncil Summit 2017 Kyotoにてパフォーマンス。モロッコの美術基金MAC A Foundationのアーティストレジデンスにて現代書道のシンポジウムに参加。また国際会議UHCフォーラム2030フォーラムで揮毫した作品はジュネーブのWHOに寄贈された。
2018年8月、フランス アンデルノス市の文化複合施設 Maison Louis Davidで夏の招待作家として選ばれ、初めて公共の施設での展覧会を成功させる。
現在、フランス・ボルドーを拠点としてグローバルに活動している。