「僕はこの業界でずっと働いているけれど、君は比較的新しい方だよね、メーガン。だけどこの業界の有名人と知り合いらしいね」年に2回開かれる、職場のカクテルパーティーで男性の同僚が話しかけてきた。
「それがすごい疑問なんだよね。それにマンハッタンの家賃どうやって払っているの?ひょっとしてさ、コールガールとかしてる?正直に言うと、他の人もそう思ってるみたいだよ」
あまりの言葉に私は思わず言葉を失った。しかし気を取り直して「まさか。そんな馬鹿げたこと言うなんて、からかってるんだよね?」と返した。
「エヴァン(同じ会社で働く共通の友達)が、君とは付き合いにくいと思っているらしいけれど、理由はそれ。コールガールじゃないかと思っているからだよ」
感じられる感情は怒りしかなかった。 社交的で明るい女性にとって、これは珍しいことではない。(自分に敬意を持ってくれていると思っていた人が、本当は私が男性と寝て成功を手にいれたと考えていると知って愕然とすることもある)。
でも、怒りを爆発させておかしな人と思われるのも嫌だし、相手に発言が正しいと思わせるのも嫌だから冷静さを保った。
それに、こんなひどいことを言われたにも関わらず、言われた瞬間は混乱して恥ずかしいという感情が押し寄せてきて、うまく怒れなかった。「同じ業界で働く人たちが、私がチャンスを手に入れるために、権力者と寝ていると考えているんだ......」と想像すると気持ちが混乱する。
恥ずかしさに打ちのめされて体を震わせながら、私はその同僚に、自分はコールガールではないと伝えた。機械的な声で、「私は自分の知性と高潔さを誇りに思っている」と言った。
その後、私はこの話を何人かにして意見を聞いた。彼らはものすごく怒って、嫌悪感をあらわにしながら、同僚の考え(そして伝え方)はとても不適切だと言った(ただその中のひとりは、「私が採用されたのはCEOと寝たからだ」という噂を過去に聞いたことがあると教えてくれた)。
彼らと話した後、これまで抑えてきた怒りがふつふつとこみ上げてくるのを感じた。女性に対する、このめちゃくちゃ馬鹿げた偏見について、声をあげなければいけないと思った。私たちの社会にはまだ、女性を圧迫するような偏見が潜んでいる。そしてその存在は、ほとんど知られていない。
どんな偏見かって?それは「女性が男性に好意的に接する時、相手を誘っている」という考えだ。
こんな出来事があった。ある男性の精神科医から、私と彼の共通の患者だった男性が「私に好意を抱き、"報われない恋"が原因で自殺しようとしたのは、私の責任だ」と言われたのだ。
それから5年たった今でも、その医者が言った言葉を思い出すとつらい気持ちになる。「こうなるんじゃないかなと、思っていたよ。君に会った時から。こうなるんじゃないかと思っていたんだ」と、彼は冷ややかな笑みを浮かべながら言った。
私はこのことについて、男性のセラピストに相談した。彼の意見はこうだった。「君は付き合っている人がいないから、無意識のうちに男性を誘っているんじゃないか」。
私は悟った。結局、自由にシングルを楽しむ幸せな人生を送るなんてできっこないのだ。この出来事の後、私は仕事に行く時はマスカラをやめた。
これ以外でも、思い返してみれば色々な出来事を経験してきた。
私が学生ヘルスセンターで一番人気のあるセラピストだとわかったとき、医者たちはにやにや笑いながら、患者たちは私をデートに誘いたかったんだろうと言った。
何の仕事しているかを尋ねられて答えると、「あなたは、商売をしている人に人気があるんじゃないですか」と言われたこともあった(私の患者のほとんどは、異性愛の看護学校女子生徒だ)。
昔付き合っていたボーイフレンドに、他の男性に慣れ慣れしくし過ぎ、と言われた。男友達がいたことや、彼のルームメートに色々質問したりデートについて尋ねたりしたのが気に食わなかったみたいだ。
性暴力を受けそうになったこともある。一度は家まで送ると言われて、車で送ってもらった時。もう一度はデートの後にもう一杯飲もうと誘われ、飲んだ時。私はこの間違いを二度と繰り返さなかった。こういう誘いを受け入れるということは、セックスに同意したと受け取られると学んだから(襟までボタンをかけたシャツを着ていない限り!)。
社交的で優しくしてくれる女性は誘っているんだという考え方は、レイプやスラットシェイミング(服装や性行動を自由楽しむ女性を批判する性差別)の中に、根付いている。そして女性に「親切は場所と相手をわきまえてしなければいけない」というプレッシャーを与える。
私はもともと、フレンドリーな人間だ。
道ですれ違った知らない人に微笑んで、相手がちょっとした他人とのつながりを感じてくれたら嬉しい。
人と話をする時は、相手の目を見て会話したい。
冗談をいったり、自分をネタにして笑い話をするのが好きだ。それは、私の周りにいる人にリラックスして欲しいから。
人に色々な質問をするのが好きだ。それは、私は相手に興味を持っているから。そして相手の話にきちんと耳を傾ける。相手の話にとても興味があるから。
私はこれまで、人を理解することに人生を捧げてきた。人をサポートし、つながりを築く仕事をしてきた。それが誰かの抱える苦しみを、少しでも和らげる役に立ちたいと願っているからだ。
私はあなたに興味を持っている。
でもそれは、あなたとセックスしたいという意味ではない。
この考えが、もっと受け入れられる社会になりますように。
ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。
ハフポストでは、「女性のカラダについてもっとオープンに話せる社会になって欲しい」という思いから、『Ladies Be Open』を立ち上げました。
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