・米国のホスピタリスト
病院の機能分化や超高齢化社会の到来に伴い、「病院総合医」の必要性が叫ばれています。米国にはホスピタリストと言われる病院総合医にあたる医師がおり、病院において重要な役割を果たしています。アメリカで8年にわたってホスピタリストとして活躍された新潟大学の石山貴章先生はメディカルノートのインタビューで次のように述べています。
"病院に入院することとなった患者さんをみるのは、病院に常駐する総合診療医、「ホスピタリスト」です。ホスピタリストは、プライマリ・ケア医同様、特定の診療科に属することなく、あらゆる疾患を総合的にみるジェネラリストです。"
・日本の病院総合医
米国のホスピタリストを日本式の病院総合医として育成するためにさまざまな医療機関や日本病院会が病院総合医育成のためのプログラムを示しつつあります。専門医制度における位置付けなどまだまだ解決していかなくてはならないことはありますが確実に一歩ずつ前進しています。
しかし、病院総合医の選択を検討する若手医師にとっては今後の明確なキャリアパスが描きづらいという課題がありました。先述した石山先生をはじめ先駆者達がその道を切り開きつつありますが、現行の医学部における学生教育でもいわゆる専門診療科の方がどのように若手医師がキャリアを積んでいくかを意識しやすいことは間違いありません。
・病院総合医のキャリアパス
そのような中で、地域医療機能推進機構(JCHO)がこれから病院総合医を目指す医師に向けて「病院幹部候補」というユニークなキャリアパスを打ち出しています。プログラムにはリーダーシップ、保健医療、マネジメント、医療倫理などが含まれており、臨床能力だけでなく様々なスキルを醸成し、厚生労働省への出向や留学なども経験できる特徴的なプログラムになっています。(地域医療機能推進機構理事長:尾身茂先生のインタビュー https://medicalnote.jp/contents/180306-003-HU )
日本病院会も総合医について評価項目にも(1)インテグレーションスキル(2)コンサルテーションスキル(3)コーディネーションスキル(4)ファシリテーションスキル(5)マネジメントスキルが記載されています。
(日本病院会:病院総合医育成プログラム基準 https://www.hospital.or.jp/sogoi/pdf/sg_20171002_01.pdf )
病院総合医の育成は病院をマネジメント・経営していく人材の育成にもつながっていくのではないでしょうか。
【執筆/インタビュー】
井上祥(メディカルノート共同創業者・取締役/医師・医学博士)
2009年横浜市立大学医学部卒。横浜労災病院初期研修を経て2011年より横浜市立大学大学院医学教育学・消化器内科学、2015年3月に医学博士。一般生活者の医療リテラシー向上と「医師と患者をつなぐ」を理念に株式会社メディカルノートを創業。Medical Noteは2018年7月時点で月間1000万人を超えるユーザー、47000のFacebookフォロワーを持つ日本有数のオンライン医療情報プラットフォームに成長し、Yahoo!と業務提携。2008年北京頭脳オリンピック"WMSG"チェス日本代表。日本医療機能評価機構EBM普及推進事業運営委員。NPO法人医療の質に関する研究会理事。東京都医学総合研究所客員研究員。横浜市立大学医学部非常勤講師。