「EBOLA HERE!(エボラ出血熱、ここに)」--大衆紙「ニューヨーク・ポスト」(24日付)はエボラ熱ニューヨーク上陸をわずか2単語で伝えた。「来るものが来た」というニューヨーカーの心情を端的にとらえていた。さらに掲載された写真はニューヨーカーの恐怖心を余すところなく伝えている。
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写真は2人の警察官がマスクをし、感染した患者の自宅周辺に規制線を張る姿だ。アメリカでは、医療や工事関係者など特殊な環境に置かれている人々以外、マスクを着用しない。マスク姿は極めて異様であり、予期せぬ事態が起きていることを示す。ニューヨークに来たばかりのころ、私はその文化を知らず、風邪予防のためマスクをしてマンハッタンを歩いた。周囲から奇異な目にさらされた。人々は私を避けて、道には大きな空間ができたことを今でも鮮明に覚えている。そのマスクを警察官が着用している。ニューヨークの現状がここにある。
23日、ニューヨーク市で初めてエボラ出血熱に陽性反応の患者が確認された。テレビ各局は、感染した医師が入院するマンハッタンのベルビュー病院での会見をノーカットで生中継した。会見にはクオモ・ニューヨーク州知事とデブラシオ・ニューヨーク市長が医師とともに出席し、市民に説明をした。感染した医師が救急車で運ばれる様子や東日本大震災後を思い起こさせる作業員が防護服を除染する姿など生々しい映像が流れた。市長は、「エボラ出血熱は、一般市民に極めて感染しにくい。同じ地下鉄の車両に乗ったり、近所に住んでいても危険にさらされることはない」と強調するものの顔は、終始真っ赤だった。
翌24日夜、ニューヨーク、ニュージャージーの両州は、西アフリカでエボラ出血熱の患者と接触した人物の強制的な隔離に踏み切った。この動きに国立アレルギー感染症研究所やNGO「国境なき医師団」が「人権を踏みにじる」と批判し、全米で「感染防止か、人権重視か」で大きな議論が巻き起こっている。この制度の元で西アフリカでエボラ患者の手当てにあたった女性看護師が隔離された。この女性は症状はなく、「隔離によって肉体的、精神的苦痛を味わった」としてニュージャージー州知事を相手取り法的手段に出る構えを見せている。
26日夜、5才の男児がエボラ出血熱の疑いがあるとしてニューヨーク市の病院に入院した。見えない恐怖がニューヨークを襲っている。日本でも40代の男性がエボラ出血熱の感染が疑われたが、検査結果は、陰性。ウイルスは検出されなかったものの、今後、根絶には国際的な連携が不可欠だ。ニューヨークからエボラ出血熱をめぐる人々の動きを伝えたい。
アメリカ東部時間:24日午後 NYベルビュー病院前で撮影 前田真里
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