毎年4月2日は、国連が定めた「世界自閉症啓発デー」です。
そして、その日から1週間の4月2日から4月8日は、自閉症を含む発達障害の啓発週間なんですよ。
自閉症の人は、
- 社会的なコミュニケーションの質的な違い(視線が合わないなど)
- 状況に適した関係を築くのが難しい(ごっこ遊びが苦手・他者への関心が薄いなど)
- 限定された興味の範囲(こだわりや一つの物事に没頭する過集中など)
- 同常的・反復行動(エコラリアやぐるぐる回り続けたりすること、同じ道順に固守したりすることなど)
- 感覚刺激に対する反応の特異性(感覚に過敏に反応したり、また鈍麻だったり)
これらの症状・困難によって日常生活(学校生活や就労等)を特別な支援なしにおくるのが難しい障害を持つ人たちなんですよ。しつけなど後天的な要因ではなく、生まれる前からの脳機能の発達の違いが原因で起こります。
そして自閉症の人によって特性や困難が千差万別にあらわれるので、自閉症をよく知らない人から理解を得るのが難しく、適切な支援を受けられない事もまた自閉症の人の生きにくさにつながっているのが現状です。
そういう「自閉症の人達の生きにくさに少しでも気づいて頂ければ」ということで始まった取り組みが、毎年4月2日の世界自閉症啓発デーに世界中を青い光で包むことで自閉症啓発を促す「ライト・イット・アップ・ブルー」というイベントなんです。
この運動は2010年にアメリカの自閉症支援機関Autism Speaksが始め、世界147ヵ国以上に広がりました。そして日本では、2011年にNPO法人あっとオーティズムさんが兵庫県で始めたのを皮切りに年を追うごとに全国に広まっています。
今年も全国各地でランドマークを青い光で包むライトアップイベントや自閉症啓発ウォークなどが開催されます。詳細はこちらをご覧ください→LIUB2016世界自閉症啓発デーライトアップポイント一覧(LIUB Japan提供)
このイベントには、自閉症の人やその家族も沢山参加しています。でも自閉症の人の中には、人混みが苦手で疲れたり落ちつきがなくなったりする人も多いんですよね。上でご紹介した感覚の過敏・鈍麻によるものです。今日は自閉症啓発にちなんで、自閉症の人の特異な感覚について簡単に説明したいと思います。
●自閉症の人の特異な感覚
自閉症の人の多くは、他の人とは感じ方が違う特異な感覚を持っていて、それが日常の生活に支障をきたすことは珍しくないんですよ。他の人以上にその感覚を感じすぎたり(過敏)、他の人が感じる感覚を同じように得られなかったり(鈍感)するわけです。
感覚には、いわゆる五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の他に、筋肉や関節からの体の位置の感覚を感じる固有受容覚や、重力やバランスを感じる前庭感覚などがあります。これらの感覚が、自閉症の人が過剰に反応したり、反応を示さなかったりする代表的な感覚です。
例えば聴覚が過敏だと、私たちがなんとも感じない音までもキャッチしてしまいます。人混みのざわざわした音もすべて聞こえてしまうので、耳が痛くなったり、他の人以上にぐったり疲れやすくなったりします。運動会のピストルや打ち上げ花火の音などは特に苦手な人が多く、イベント自体に参加できなかったり、イヤーマフやノイズキャンセリングヘッドフォンを常時身に着けている必要がある人もいます。中には、耳を両手で塞ぎその場から逃げ出そうとする人もいます。
触覚が過敏な人は、洋服の素材によっては着れないものもあります。私達がチクチク感じる程度の感覚が耐えられない痛みに感じたりするからです。今回のイベントなどでみんなとお揃いの服を着ていない人がいたらその為かもしれません。また、雨や風を「痛い」と感じる人もいますし、人混みも苦手です。他の人の体が触れるリスクが高まりますからね。なので、ウォークイベントに少し離れて参加していたりするかもしれませんし、列に順番に並ぶのが難しい人もいます。抱きしめられるのが苦手な赤ちゃんがいたり、手を繋げない人もいます。
固有感覚が鈍麻な人は、自分の体がどこからどこまでなのかうまく理解できない人が多いんです。なので、他の人や物にぶつかることが多かったり、何かを踏んでも気づけない事も多いのでトラブルに発展する事も多いんですよね。極端に不器用だったり、姿勢よく座ったり立ち続けているのが難しいのもこの為です。
味覚が敏感だったり、口の中の感覚が敏感だったりすると、偏食になります。これは好き嫌いといったレベルではなく、味や食感を他の人と同じように感じられない事による偏食なので無理強いは禁物なんですよね。偏食がある人は、イベントなどで提供される食べ物を他の人と同じように食べるのが難しいケースが多く、自分が食べられる物を持参する事が多いんですよ。給食も食べられない人が多いです。
視覚が過敏な人も自閉症の人には多いんですよね。周りの人がなんとも思わない光を極端にまぶしがったりします。世界自閉症啓発デーのライトアップイベントがブルーなのは、青い色は視覚が過敏な自閉症の人が心を落ち着けて眺められる色でもある為なんですよね。
ライト・イットアップ・ブルーイベントにちなんでいくつか例を挙げてみましたが、これらは自閉症の人の感覚の問題のほんの一例にしかすぎないんですよ。
わがままな行動と勘違いされることも多いんですが、自閉症の人には自分でコントロールしきれない困難なんですよね。
自閉症の人たちの不可解な行動が、感覚の感じ方の違いで起きている場合もある事を世界自閉症啓発デーをきっかけに知ってくださる方が増えてくれたら嬉しいです。
4月2日、今年は土曜日ですね。
ライト・イット・アップ・ブルーの各種イベントに参加する方はもちろんですが、たまたまブルーに灯されたランドマークを目にされた方が、ほんの少しでも自閉症の人の内側で起きている事を理解し、この日以外の日々の中でも自閉症の人への歩み寄りのきっかけになればなと願っています。