あなたの周りにもいる? 父親の育児参加に馴染めない「昭和のオトコ」

昭和なオンナは、小さな期待を持っています。

あなたの夫は、イクメンですか?

夕飯を作ってくれたり、洗い物は僕の担当だよ、と笑顔で引き受けてくれたり。休日には子どもとお出かけしてくれて「ママ、たまには休んで」なんて言ってくれる夫......

残念ながらそんな夫、我が家には存在しません。

今回は、そんな我が家の事情をお話すると共に、今もなお現存する「昭和オトコ」の胸の内を解説し、私たちにできることを考えてみます。

昭和オトコ、家では「おーい」と叫ぶだけ

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夫は昭和30年代後半生まれです。専業主婦で、気難しい姑に仕え、モーレツ社員(なんて言葉、若い方々はご存知ないでしょうが)である義父の世話すべてを行っていた義母に育てられたオトコです。

靴下ひとつですら「おい」と顎をしゃくって義母に持ってこさせた義父と、黙ってお世話に明け暮れていた義母を「当然のこと」として育った人です。

当時と比べライフスタイルが大きく変わった現代において、その価値観を抱いている夫をもつことがいかに大変か、想像できますでしょうか。

我が家では年の差の兄弟を育てています。長男が産まれたのは15年以上前、「イクメン」なんていう言葉もなく、共働きがちらほら増えてきたかなぁという頃でした。

少なくとも、抱っこひもで赤ちゃんを前抱きして、ニコニコ笑いながら歩いているパパは非常に珍しかったのです。

抱っこひもは「(ほぼ)ママ専用」だったんです。たったの(?)15年前はそんな状況だったのですよ!

時を経て、次男が生まれた頃。夫はもちろん、家では両手で大切に子どもを抱きはしました。しかし外出となれば、

「ほい」

と赤ん坊を私に手渡します。父親である自分が、外出先で抱っこヒモなんぞ使って赤ちゃんを連れて歩くなど、彼の頭の中にまるきりインプットされておりません。

その後も、

泣けば「おい」

寝ていて起きれば「おい」

オムツがくさくなると「おーーーい、おーーーい」

と叫びます。「おーい」の一言で全部すむと思っているのが昭和のオトコなのです。ええ、あなたには信じられないかもしれませんが。

あなたの周りにもいる? 昭和オトコの胸の内

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「うちの夫は違う、よかったわ」と思った方もいるかもしれません。

しかし、ここが重要なんですが、あなたの周辺にもこうした昭和のオトコはまだまだ生息しているかもしれないのです。どこにですか? 職場にです!

先進的なIT企業にお勤めかもしれません。あるいは、「子育てママに優しい」職場にお勤めかもしれません。

が、しかし、企業そのものはイクメンを推進していても、そこで働く個人の感覚は違う、ということも多いのです。

ガラス張りのタワービルにオフィスを構えて、リモートワークをうたうような企業であっても、案外と50代、60代の上司は「昭和オトコ」がいるかもしれません。

しかも多いのが、物わかりのいいフリをしつつ、内心納得いっていない「隠れ昭和オトコ」です。

この手の上司は、職場の立場上「女性も男性も育休とるべき」と話し、若い男性社員の育休取得に理解を示し「うむうむ」と頷くでしょう。

30代前半の女性がため息まじりにこんな話をしてくれました。

子どもがインフルエンザにかかった時、夫と交替で有給を使い休むつもりでいました。でも夫が会社で上司に伝えたら、ええ!?と驚かれたらしいんです

有給ですから、取ることに対して文句は言われない。でも上司は1日ならともかく・・・と言葉を濁しつつ困ったねぇと言い、周囲の同僚も奥さんが休めないの?と聞いてきて、返答に窮したらしいんです。

『頼むから、職場に居づらい雰囲気にさせないでくれよ、何とか1日は休みをとるから後の4日はお前が休んでくれ』

と夫に言われた時、情けなく思いました。私だって4日も休みくれとそう易々と言い出せるわけがないのに!でも子どもが病気なら、奥さんの方が休み取れるはずだろう、子どものためにもその方がいいだろうと言われたらしい

なんだその昭和な感覚!と思ったけど、これって現実であり、目の前にある問題だからどうしようもない・・・。

昭和オトコは理解しているようで、共働きの現実をわかってはいません。子育ては母親の役目と漠然と思っています。

自分が育ってきた環境がそうだったから「男も家事・育児をするのが普通」「子育ては夫婦で協力し合う」なんていう事にさえも、どうしても馴染めないのです。

昭和な世代、思い返してみれば転勤は当たり前で専業主婦が多かった。

50代、60代にとっては「仕事と育児の両立」なんて側で見聞きしたことさえなかったのですから、そのマインドがコテコテに固まっているのもある意味、致し方ないのかもしれません。

しかも、その部署、職場全体が「子どもがインフルだからって3日も休み取るのか!?」と首をかしげる。風土ですね、企業風土もまだまだ「昭和」のままなのです。

「妻だって職場を5日も休めない」という当たり前のことが、わからない、わかってもらえない、理解しようと考えてさえくれない。

彼女の体験談は珍しい話ではありません。昭和オトコの昭和企業、今なお存在しています。

イクメンが当たり前の世界になるには

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もちろん、頭の柔らかい昭和のオトコもいます。イクボスという言葉だって出てきていますし、LAXICにだって、育休取得した男性の体験談が載っていますね。しかしまだまだ数は少ないのが現実ではないでしょうか。

私たちが「イクメン」なんて言葉をわざわざ使わなくても、夫婦が家事分担、ふたりで育児をするのが当たり前という時代は、まだ先になるのかもしれません。

例えば、「え、子どもがインフルで君が3日も休むわけ?」と思わず口にした60代上司、娘が結婚し共働きで生活する様を見ているうちに「・・・こんなに女性の負担は大きいのか」と初めて実感するかもしれません。

コテコテに固まっていたマインドも、実の娘の奮闘ぶりを助けて初めて「周囲の協力がなく、ひとり女性が育児と仕事を担う大変さ」=ワンオペ育児という言葉の片鱗だけでも理解するようになるかもしれません。

そして、今、私たちが育てている子どもたちが、ほんの少しでも家事を手伝い、子どもの世話をするパパを見ながら「お父さんも家の事をするもんだ」とすり込まれて、それが当たり前と無意識に思えるようになって、初めて本格的なイクメンが誕生するのでしょう。

LAXIC

とはいえ、悲観することはありません。時代は確実に変化しています。そもそも女性に選挙権さえなかった時代から、ウーマンリブを経て、今、イクメンという言葉が闊歩している。

ちゃんと、時代は「オトコもオンナも働く時代」に向かって進んではいるのです。

革新的な女性やリーダーたちが、一歩前を行く改革をしようと闘っています。会社で時に反感を買いながらも、次に働くお母さんたちの為に道を切り開いていく女性、あなたの周りにもいませんか?

女性の権利や働く環境、保活問題、社会と会社の両方に戦いを挑む先輩方に大きな感謝を日々感じることでしょう。

では、私たちには何ができるのでしょう?

「私には世界を変える力なんてない、すごいなぁ」と思いつつ、子どもを送迎し、仕事をして、ご飯を作り、様々なことに忙殺される日々。

ワンオペ育児に苦しみながら、夫に大変さを訴え、家事分担を願い出ても、果たしてどこまで理解してくれているのやら。

それでも夫がいくつかの家事を担当してくれるようになる。それが第一歩です。

そうやって、一家庭の小さな暮らしの中でも、たぶん、それほど意識せずに小さな「改革」をやっているのが世の働くお母さんたちではないのでしょうか。

そして私たちの小さな努力を見て育つ子ども達の未来に、大きな夢を持ちたいですね。

次の世代はイクメンなんて言葉を過去の産物にして「家事も育児もふたりでやるもの」、勤める企業も「男女どちらも子育てに参加するもの」、それがきっと当たり前になっている。

昭和なオンナは、小さな期待を持っています。

【ライター 大橋 礼】

年の差15歳兄弟の母。DTP会社勤務後、フリーで恋愛・料理・育児コンテンツを執筆中。今や社会人長男のママ仲間とは「姑と呼ばれる日」に戦々恐々しつつ、次男の小学校では若いママ友とPTAも参戦中。飲めば壮快・読めばご機嫌! 本とお酒があればよし。

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