独特な進化を遂げた都市「東京」の源流がここにある! 水路で読み解く<日本橋>

近年注目が集まっているイースト東京、その入場口に位置している日本橋。実は江戸の頃から文化・人・流通の「出入り口」でした。

■江戸は「水の都」

近年注目が集まっているイースト東京、その入場口に位置している日本橋。実は江戸の頃から文化・人・流通の「出入り口」でした。

1590年に徳川家康が江戸に入り、首都作りを開始します。その頃の江戸は葦が生い茂る潮の浜で、街づくりをするには狭すぎました。家康はまず日比谷周辺を埋め立て、土地を拡張していきます。いわゆる天下普請です。

当初は戦国の名残りがある軍事都市の趣でしたが、明暦の大火以降、防災都市・住むための街へと転換していきます。そのために重要視されたのが物流経路を確保することでした。家康は各地から掘削のプロを呼び寄せ、物流をスムーズにするための水路を作りました。有名なところでは神田川や日本橋川、亀島川や楓川があります。

この水路は日本橋を中心に網の目のように多方面へ広がっていき、やがて「掘割(ほりわり)」と呼ばれるようになり江戸八百八町の物流・商業の要となっていきます。町人の町・日本橋の誕生です。江戸は水路を中心とした水の都だったのです。維新後の明治_~昭和初期には、水辺からの景観の美しさや利便性を意識した建物がたくさん立ち並びます。(今年の向源でもこの水路を楽しむイベントがありますね!)

これらの掘割は、関東大震災・戦争・東京オリンピックを経てほとんどが埋め立てられてしまいました。しかし、現在の中央区を走る主要道路の多くは、江戸当時の掘割に沿って作られています。つまり、江戸の昔から今に至るまで、物流経路は変わっていないのです。

みなさんがお買い物や通勤で日本橋にいらっしゃった際、歩いている道をちょっと見回してみてください。江戸や明治の橋の親柱が残っていたり、掘割の痕跡がはっきり分かる場所も多々見つかったりすると思います。「掘留」「船」という漢字が付く旧地名もありますので、その筋の好事家の方なら大変に楽しめるのではないでしょうか。

■人は「奥」になにかを求める

さて、日本橋は江戸の玄関口であり、一大商業都市の要であり、金融街でもありました。それに対し、独特の文化の街を形成したのが浅草です。

日本橋から船で水路に入り、日本橋川から隅田川に出て浅草へ。今戸あたりの高級料亭の舟寄せに直接着けて、赤い提灯を持った芸者衆に導かれて夜の宴へ...というのが、当時の粋な遊び方でした。さらに奥の吉原へ、という殿方ももちろんいたでしょう。

宴では単に飲んで遊ぶではなく、今でいうギャラリーのようなアートを愛でたりする場であり、企画展やお稽古発表会などを楽しむ場でありました。この文化の多様性が、江戸文化の重層的な面白さを作り上げ、次々と新しいものを生み出していくのです。

メトロポリス日本橋から入ってサブカル・民俗学的な文化が待つ「奥」の方へ。この位置関係が、他の国にはあまり見られない日本の面白さです。フランスのパリもイギリスのロンドンも、川を中心とした水の都市です。商業街と文化街はやはり別の地域になりますが、特に「奥に行く」という立地ではありません。ほぼ隣接しています。

入り口から奥へ向かう。行けば行くほど面白いものが待っているのではないか。奥になにかを求める、深いところになにかあるんじゃないかと期待する。これは今でも日本人の特徴的な楽しみ方かもしれません。

奥に向かうため、どこかへ行くためのスタート地点。それが「日本橋」だったのです。

■自分の入り口を探そう

日本橋は、今年もGWに開催される寺社フェス「向源」のメイン会場の一つです。向源には、「源へ向かう」、なにかの奥を探る、自分の奥を探るというテーマがあります。家康が江戸を現在の形に整えてから今日に至るまで約400年。日本橋は災害や戦争で何度も街が壊滅してきましたが、その都度、復興を遂げてきました。そして現在も再開発真っ只中にあります。

特定の景観条例などがあるわけではありませんが、企業と町内会、区が自発的に協力し、話し合いながら「町人の町・日本橋らしさ」を意識した、過去と未来が交差する街づくりを目指しています。

歌川広重や三浦按針、吉田松陰、渋沢栄一、竹久夢二に永井荷風と、様々な人物がこの街を闊歩し、働き、遊びました。日本橋は時代とともに変化しながら生き続け、今も、そこに集う様々な人とともに呼吸しています。

江戸から現在まで、常になにかの「出入り口」であり続けた日本橋。ここから、奥へ奥へ。なにか面白いものを探して。今年の向源は、日本橋が出入り口です。

ぜひみなさんも日本橋からご入場いただいて、「向源」経由でお好きな場所へ向かって、ワクワクするニッポンを見つけに来てください。お待ちしております!

(中央区観光特派員・七瀬みなみ)

【向源からのお知らせ】

■おすすめは向源ならではの声明公演、トークショー

寺社フェス「向源」の体験講座のチケットを発売しています。あわせて各体験講座の紹介ページも公開中です。

とくにスタッフおすすめは、毎年大人気の声明公演。今年はピーター・バラカン氏や聖歌隊とのコラボ企画など向源ならではのプログラムとなっております。

また「仏教×神道×修験道トークショー」「いろんな宗派で般若心経トークショー 〜仏教井戸端トークin向源〜」など向源が得意とする宗教宗派を超えたクロスオーバー企画もぜひチェックしてみてください!

体験講座やトークショー、イベントは「お寺の体験」「神社の体験」「伝統の体験」「聴く体験」「その他の体験」「English Course」の6つのカテゴリーに分かれています。お好みのカテゴリーでお探しいただけます。

【向源ホームページ体験講座一覧】

会場は芝大門 浄土宗大本山増上寺、神田神社(神田明神)、日本橋があり、日本橋エリアは福徳神社(芽吹神社)、日本橋 YUITO、日本橋 三井ホール、三越 日本橋本店、COREDO室町、その他、と街の各所で開催します。

体験講座は無料のものと有料のチケット制のものがあり、有料体験講座のチケットは各体験講座ページよりお申し込みいただけます。

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