先日、窪田良氏(アキュセラ社CEO・JIGHアドバイザー)と話をした。
彼は、アメリカ西海岸シアトルで創薬ベンチャーを立ち上げ奮闘する孤高の日本人医師であり起業家だ。
世界で推定1億2000万人が罹患している目の疾患のための薬を世界中に届けようとしている。
日々イノベーションの最前線で切った張ったの日々を送る窪田氏の言葉はとても示唆に富んでいた。
彼には「世界から失明を撲滅する」という大きなミッションがある。それゆえ、ともかく、多くの人がアクセスしやすい、飲み薬にこだわった。
「世界を変える、とまず信じることが重要なのだ」
だからこそ、それに賛同してついてきてくれる素晴らしい仲間ができた。不可能そうに見えることを言っているけど、そこまで言うなら手伝ってみるか、と思った人たちが集まった。
次に、良く言われることだが、イノベーションには多様性が最も大切だということだ。
国籍や専門性の多様性がある環境の中で1つのミッションに向かうからこそ、壁にぶち当たってもいろんな解決策が出てきて、その中でベストな解決策、つまり、イノベーションが生まれる。
窪田氏が採用の時に重要に思っている2点が素晴らしい。
採用のときに2人で迷ったら、今いる人とは異なるバックグラウンドを持っている人を優先して選ぶという。
そして、出身大学や過去の研究成果ではなく、過去からどれだけ改善しているのか、前に進んでいるのかをリアルタイムで定量的に評価する。
さらに、失敗を許容すること。パフォーマンスの評価と失敗の検証は表裏一体だ。成功した人が一番上で、次に良い失敗をした人。その次に悪い失敗、なにもしていない人は一番下だ。リスクをとらずに過ごしたら、それが最も低い評価になる、という評価。
最後に、彼と私が大いに同意した点を話そう。日本の医療のポテンシャルに関して、だ。
医療ほど人の知恵をもとに高付加価値のものを創造できる分野はないであろうし、日本に向いている。日本がグローバルヘルスの分野でもっと世界に貢献することは可能なはずだ。
日本政府は、医学研究の司令塔を作り(いわゆる日本版NIH)、既存の医学研究費をプールし、基礎研究での成果をより実用化できるように国家戦略的に医学研究を推進していく予定だ。日本発の創薬やイノベーションは、日本の医学の競争力を強化するためには欠かせない。
しかし、既存のシステムのままで、日本の医学研究の環境は大きく変わるのだろうか? 我々医療関係者の一層の前向きな努力が求められている。