旧民主党政権の最大の失敗は、「財源なんかいくらでもある」(16.8兆円ねん出)と言いながら、「高速道路の無料化」や「最低保障年金」「こども手当の創設」等の「耳障りの良い政策」を並べたて、結局、その財源のねん出どころか、「社会保障と税の一体改革」という美名の下に、選挙で訴えてもいない消費増税に突き進んだことです。
民進党は、この反省から始めないと、決して国民の信頼を取り戻すことはできないでしょう。その意味で、私なりの財源論を述べていきたいと思います。
まず、「公共事業費」の削減です。
もちろん、必要な公共事業、特に耐震化等の災害対策や維持・補修等を否定するものではありませんが、先に「今週の直言」で述べたように、例年5兆円規模だった年間予算が、安倍政権になって「国土強靭化」(10年で200兆円の公共事業投資計画)の名の下に、倍の年間10兆円規模となり、しかも、ここ数年、年間2~4兆円も使い残し、繰り越しをしている現状(参考1)があります。
まさに、アベノミクスの「第二の矢」(財政出動)が「あらぬ方向」に飛んでいる象徴例で、大震災等から公共事業費が増加するのはやむを得ないにしても、必要以上に「バラマキ」をした結果、「消化不良」を全国で来している証拠でしょう。これを必要額の範囲内に抑えれば、平気で年間2~3兆円の財源は出てきます。
次に、私が「ブタ積み」と称している、何百とある「基金」へのムダな税金の投入です。
安倍政権(正確にいえば麻生政権時から。この時は46基金に4兆円超の税金を投入し使い残しが2兆円)になって、累次の景気対策、補正予算の編成で、「見栄え」(補正予算の総額・規模)にこだわる政権側の意向に配慮した霞が関官僚は、しかしながら、もう知恵がないのものだから、とりあえず基金に「積んどく」手法でしか、その総額が積みあげることができなかった。また、基金への「出資金」であれば、発行しやすい「建設公債」(赤字国債ではなく!)の対象にできるという事情も背景にはあった。
その結果が、多年度間にわたる「基金事業」というもので、元々、実需のうすいものを役人がうまく必要性(名目は企業の海外展開支援、塩漬け技術の活用、省エネ促進、農業対策等)を糊塗して作った「机上の空論」予算だったものだから、毎年、使われなくて「不要」ということで国庫に税金が返納されてくるのです。この額が毎年数千億円規模。
平成27年の返納予定額は4452億円に上るのです。
また、この基金の運用を間違うと、その焦げ付きで結局、国民負担となりかねないし、民業圧迫や政府系金融機関の生き残り、役人の天下りや「ゾンビ企業」を生んだだけということにもなりかねないのです。
こうした不要な「基金」を精査してスクラップすれば「兆円単位」で税金を取り戻すことができるでしょう。
次週では、「特別会計の埋蔵金」(なつかしいですね!)を取り上げましょう。まずは「外国為替資金特別会計」です(続く)。
(参考1)公共事業の執行状況(財務省資料/単位:兆円)
平成23年度 24年度 25年度 26年度
予算現額 9.7 10.1 10.2 9.3
未消化額 3.7(38%) 4.4(44%) 2.2(23%) 2.0(21%)
(内訳)
繰越額 3.0 3.8 1.9 1.8
不用額 0.8 0.6 0.3 0.17
(参考2)基金対象の会計検査院検査(平成25年10月)
・補助金等で法人に設置された313基金対象
・新設基金161 5兆円投入(うち補正4.7兆円)
執行率50%未満が46基金。75%未満が67基金。57基金返納額4790億円
・既存基金(19年度以前設立)152
103基金 返納額5725億円 39基金 積増し4992億円
・都道府県の基金も2兆円未消化 国に返還(10年度末時点)
会計検査院が43都道府県(被災4県除く)の約2500基金について検査。基金が活用された割合を示す執行率は08年度に設立された基金で47.8%、09年度の基金で32.4%で、全体では約1兆4000億円しか使われていなかった。
(2016年5月12日「江田けんじオフィシャルブログ」より転載)