「誰でも一緒に平等に就活」は正しいのか?

大々的にセミナーが行われ、学生たちがみんなで一緒に同じように行動する。これは新卒一括採用の日本の就職だからでしょうが、どうしても違和感を感じます。
TOKYO, JAPAN - MARCH 08: (EDITORIAL USE ONLY) College students listen to a company information session at the Mynavi Shushoku MEGA EXPO at the Tokyo Big Sight on March 8, 2015 in Tokyo, Japan. 70,000 job-seeking students are expected to attend the two-day career fair with 1229 companies participating. Under new rules starting this academic year, companies are allowed to conduct recruiting activities from March 1 onward, rather than December so that third-year university students can concentrate on their studies. (Photo by Chris McGrath/Getty Images)
TOKYO, JAPAN - MARCH 08: (EDITORIAL USE ONLY) College students listen to a company information session at the Mynavi Shushoku MEGA EXPO at the Tokyo Big Sight on March 8, 2015 in Tokyo, Japan. 70,000 job-seeking students are expected to attend the two-day career fair with 1229 companies participating. Under new rules starting this academic year, companies are allowed to conduct recruiting activities from March 1 onward, rather than December so that third-year university students can concentrate on their studies. (Photo by Chris McGrath/Getty Images)
Chris McGrath via Getty Images

今年から時期が後ろ倒しになりましたが、就活の時期になりました。

毎年のことですが、大々的にセミナーが行われ、学生たちがみんなで一緒に同じように行動する。

これは新卒一括採用の日本の就職だからでしょうが、どうしても違和感を感じます。

採用は企業にとっては必要とする人材を取ることなのに、学生のスキルに相当に差があって、誰でも同じように扱うのは実に不思議です。

私の研究室のように、日頃から企業と連携し、共同研究や学会で企業が学生の力を知っている場合にも、「まずエントリーシート書いてください」ですからね。

卒業生は海外の企業に就職する場合もあるのですが、企業が学生の力を知っている場合にはプロとして扱ってくれます。

レジュメを送って、すぐに面接です。

博士の学生などが日本企業を就活する場合には、プロの技術者として世界のトップレベルと認められるような学生でも、まるで「おままごと」のような日本企業の就活をさせられて気の毒。

こんなことはバカバカしくなって、私の研究室で博士学生が海外企業ばかりに就職するようになるのは、当たり前です。

企業からしても、即戦力になるような人材に無駄なコストを払って採用するわけで、こういう不思議な慣行は何とかならないでしょうかね。

就活だけでなく、入社後の対応も随分違います。

私が就職した時を思い出しても、博士の方が学部卒、修士卒に混ざって同じ研修を受けていました。

修士卒の私でもバカバカしく感じる研修に、博士の方がうんざりしながら受けていたのは本当に気の毒でした。

修士卒の学生の場合は、学生時代に採択された国際会議の発表が就職後の5、6月にずれ込むことが毎年のようにあります。

国際会議は論文投稿から発表まで半年程度はかかりますから。

世界のトップレベルの技術者に混じって発表する貴重な機会ですので、研究室としては、できれば卒業生に発表させてあげたい。

旅費・学会参加費は研究室が負担するから有給休暇を使って発表させてあげて下さいと企業にお願いすると、配属先の事業部・研究所は大概は「ぜひ」と背中を押してくれます。

こういった国際会議で発表できるようになるには、企業でも何年もかかるわけです。

研修よりもよほど貴重な経験になることを、現場の上司はわかっているのです。

しかし、こういうお願いはまず人事部には通じません。

導入研修を何と心得てるのか!、と怒られるのです。

でも、本人を見て下さい。

既にエンジニアとしてかなりのレベルに達していて、社会常識も含めて研究室で鍛えています。

人物を見た上で、もしそれでも研修が必要ならやらせれば良いですが、世界のトップレベルの国際会議で英語で発表をさせた方が、より高いレベルに鍛えることになり、御社にとっても得ではないですか?

・・・と言っても、まず無理ですね。

一方、海外の企業はどうか。

卒業生が就職してから一週間も経たないのに、私が参加した国際会議に聴講しに来ているのを見て、驚いたことがあります。

発表するわけではなく、ただ単に他の人の発表を聞いて情報収集するように、会社から命じられているのです。

さすがの私も驚いたのは、入ったばかりでまだ何も仕事をしていないのですよ。

しかしこういった海外企業からすると、プロとして自信を持って採用したからこそ、学会に行かせて情報収集させるのが企業にとっても得、という合理的な判断なのでしょう。

日本の就活は新卒一括採用だから就職率が高いというメリットが学生にもあるのかもしれません。

また企業からすると、一括で大量に採用するのだから、イチイチ個別に対応していられない、という事情があるのかもしれません。

しかし、大企業でもリストラ、事業売却が当たり前になりましたから、終身雇用も崩れています。

優秀な学生ほど終身雇用を信用しなくなり、「自分を鍛えてくれるチャンスの多い企業」を目指すようになっている。

このように「誰でも同じように扱う就活」を実施している企業は、飛び切り優秀な人材は採用しにくくなっているのではないでしょうか。

だって、平等にやっているようで、人物を見ていないのですから。

今のような採用を続けることは、学生だけでなく、決して企業にとっても良いことではないと思うのですがね。

(2015年3月8日「竹内研究室の日記」より転載)

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