第三者の関わる生殖補助医療とセクシュアル・マイノリティ(2)公開セミナーの意義

代理出産についてのイベントをすることは、地下にもぐって、なにかいけないことのように行われるよりは、批判もたくさん受ける中でも、公開されてよかった...

第一回からだいぶ時間が空いてしまったことをお許し願いたい。

引き続き、2016年1月19日に都内で行われた、「ゲイのための代理出産と卵子提供セミナー 〜子どものいる家族をつくろう〜」をきっかけとして考察したことについて、少しずつ書いていこうと思う。

当日は、アメリカの代理出産エージェントに日本の依頼者をつなぐ会社J-baby、カルフォルニアの法律事務所、代理母エージェンシー、生殖補助医療を行うクリニックの人々がカルフォルニアにおける代理出産について解説した。

和やかな雰囲気の中で、フリードリンクが振舞われ、実際に生殖補助技術を使って子どもを持ちたいと思っている人たちにとっては、比較的足を運びやすい場となっていたのではないかと思われる。

私自身、すくなくとも、こうしたイベントが地下にもぐって、なにかいけないことのように行われるよりは、公開されて良かったと思う。

公開されれば、問題点が明らかになりやすくなり、代理出産という行為に関わる人々の権利が守りやすくなる。

日本では1948年の慶応大学での試み以降、ヘテロ・セクシュアルの夫婦が精子提供で子どもを持つAIDが行われているし、長野の諏訪マタニティ・クリニックでは代理出産が行われていた(現在は新規受付を停止)。アメリカなど海外へ渡航して第三者に依頼し、生殖補助技術を使って子どもを持つ人たちも、実数はわからないがすでに存在している。

つまり、セクシュアル・マイノリティが利用するか否かを問わず、第三者(精子提供者、卵子提供者、代理母など)の身体を利用して子どもを持つ技術は存在し、行使されている。その技術が使用される過程で、すでに様々な問題が明らかになり、第三者や産まれた子どもの人権侵害も生じている。

技術の利用を肯定するか否かを問わず、既に産まれた子どもたちや卵子提供者、精子提供者、代理母の人権は守られなければならないし、そのためには公開の議論が必要なのだ。

この点では、批判もたくさん受ける中で、イベントを公開した主催者の決断は勇気のある、良識的なものだと言えるだろう。

セクシュアル・マイノリティが子どもを持つことには様々な差別、偏見、障壁があることは事実である。里親や養子縁組の「未婚者」へのハードルの高さも、私自身結婚しないパートナーシップ関係を結んでいる人間として、よく知っている。

その差別と、しかし、第三者の身体を利用する生殖技術の使用過程で起きる別の人々(主に第三者、と子ども)への差別、人権の侵害は分けて考えなければならない。

そのような視点で見たとき、セミナーで語られていたことにはいくつかの問題点があったと思う。(続く)

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