変容する若年無業者の呼称。前田敦子さん主演、映画『サポステ』イベントにて

サポステの対象者を表す若者の呼称が複数あることに気が付きました。

昨日、40歳未満の、自立の実現に向けたような課題を抱える無業者を対象に、就職による自立の実現を目的として厚生労働省が設置する「地域若者サポートステーション」のPR映画『サポステ』のプレスセミナーに参加してきました。

出演者に前田敦子さん、井之脇海さんをキャスティングした『サポステ』は、公開前からにわかに噂となり、その関連グッズ(配布資料など)を求めてサポステに電話なども入りました。広く社会にサポステの存在を知っていただくことを目的にしていることから、認知度の向上とともに、サポステを利用してみたい若者に情報が届くことを願います。

映画製作とはこれまでなかったPRの取り組みとして興味深いと思っており、そもそもなぜ前田敦子さんをキャスティングされたのかについてプロデューサー・脚本の山田英治さんにお聞きしてみたところ、下記のコメントをいただきました。

『彼女は、数年前に、「もらとりあむタマ子」という映画でニートの女の子の役をやって話題になったので、今度はそのニートを支援する役に、ということが狙いです。』

映画を見ていただけるとわかる通り、前田敦子さんが演じる前島いつきは、サポステで働く新米相談員です。相談員である前島いつきと、井之脇海さんが演じるサポステを利用する若者を通して、若者が「一歩を踏み出す」瞬間を描いています。この「一歩の踏み出し」は、傍から見るとちょっとしたことに見えるかもしれないものの、本人にとって過去から今にいたる経緯を含めて大きな葛藤や苦悩の存在を鮮やかに映し出していると思います。本編では「ゴミ拾い」の機会が使われてますが、どのような機会が若者の「一歩」になるかはわかりません。だからこそ、できるだけ多様な機会を地域の実情や運営法人ごとに準備されているのがサポステの特徴ではないでしょうか。

上映後は、厚生労働省職業能力開発局の伊藤正史キャリア形成支援課長、さっぽろ青少年女性活動協会若者支援担当課長の松田考氏、さがみはら若者サポートステーション総括コーディネーター織田鉄也氏によるプレゼンテーションと質疑がありました。

そんななか、伊藤正史キャリア形成支援課長の資料において、サポステの対象者を表す若者の呼称が複数あることに気が付きました。いくつか別々の資料を組み合わせたもののため、どれが正式ということは示されていませんがややわかりづらいことになっていますので少し説明をしたいと思います。。

最初に地域若者サポートステーションの説明ページにおいて、その目的が示されています。

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40歳未満の、自立の実現に向けたような課題を抱える無業者を対象に、就職による自立の実現を目的として(以下、省略)

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ここでは「40歳未満の無業者」という言葉で表現されています。ふたつ目に、地域若者サポートステーションの法律上の位置づけの説明があります。

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青少年の雇用の促進等に関する法律 第23条

国は、就業、就学及び職業訓練のいずれもしていない青少年であって、職業生活を円滑に営む上での困難を有するもの(無業青少年)(以下、省略)

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ここでは「無業青少年」という言葉が出てきました。ちなみに、資料であ「就業」から「(無業青少年)」までに下線が引かれ、吹き出しがついています。

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法令上の「ニート」の定義

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と吹き出しに記載してあります。ここで「ニート」という言葉が使われます。

別のページでは地域若者サポートステーションの実績や来年度の事業設計に触れています。そこには地域若者サポートステーションが、地方自治体と協働しならが我が国の担い手、地域の支え手を育成しましょうということ。また、「ニッポン一億総活躍プラン」でも、サポステなど関係機関の連携による就労・自立支援にと取り込むことが盛り込まれ、教育機関との連携も打ちだされている説明があります。

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若年無業者(ニート※1)の数は近年、約60万人で高止まり。

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ここで「若年無業者(ニート※1)」が出てきます。※1についての説明もあります。

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15~34歳で、非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者

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こちらでは34歳までとなっていますが、これは総務省統計局の「労働力調査」からのもの(資料別ページにあります)であり、そこにも注書きで同じ定義が書いてあります。

さて、ここまでさまざまな名称が出てきました。それぞれを考えていきますと、

40歳未満の無業者: 地域若者サポートステーションの事業政策対象者

無業青少年:法令上のニート

若年無業者(ニート※1):少しややこしいのですが、内閣府の過去の調査報告では、若年無業者を三類型しており、就業希望を表明しかつ求職活動を行っている無業の若者が位置付けられてます。

さらに無業者を、就業希望を表明しかつ求職活動を行っている「求職型」、就業希望は表明していながら求職活動は行っていない「非求職型」、就職希望を表明していない「非希望型」に分類する。求職型は総務省統計局『労働力調査』で調査されている完全失業者に類似した概念である。一方、いわゆる「ニート(通学も仕事もしておらず職業訓練も受けていない人々)」とは、非求職型及び非希望型の無業者として、日本では通常理解されていると思われる。

ここらへんは東京工業大学の西田亮介氏との共著「無業社会」にも書きましたが、特に今回のように「若年無業者(ニート)」または「若年無業者(いわゆるニート)」と表現される場合、その若年無業者の類型定義から「求職型(≒失業者)」が外されていることが少なくありません。

地域若者サポートステーションが位置づく法律的には「無業青少年」であり、事業の必要性を示す場合の根拠資料からは「若年無業者(ニート)」であり、実際の事業目的における対象者は「40歳未満の無業者」ということになります。さまざまな調整のもと、財源重複が起こらないよう、さまざまな事業案件ごとに細かく対象者の定義が決められ始めておりますので、若者に限らない公的な支援機関に足を運ぶ際には、事前に電話などで利活用可能かどうかを聞いておくことをおススメします。

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