日中にあった出来事を思い出し、イライラして寝つけない。仕事や将来のことが不安で眠れない。
誰にでも一度はそんな経験があるはず。
不思議なことに、ネガティブ思考はいつも夜にやってきて、私たちの心を乱すものです。
そんな夜のざわつく気持ちをコントロールする方法の1つが、「マインドフルネス瞑想」。
今回は、マインドフルネス瞑想の取り入れ方を、『マインドフルネス瞑想入門』の著者である瞑想・ヨガ講師の吉田昌生さんに伺いました。
マインドフルネス瞑想は「自分と向き合う心の整理術」と吉田さんは言います。
今回はその実践方法をみてきましょう。
■【実践】睡眠前に感情の波におぼれない「マインドフルネス瞑想」
「マインドフルネス瞑想では「どこかに向かうモード(DOINGモード)」から「存在しているモード(BEINGモード)」に切り替えることが大切です」(吉田さん)
例えば、イライラしているとき、「I am angry」ではなく「I feel anger」と気づくのが重要です。今の自分の感情に気づき、客観視することで、その感情の波に巻き込まれにくくなるのです。
今この瞬間、頭の中で何を考え、どう感じているのか気づくことが、心をコントロールする最初の一歩です。
「瞑想ってどうやればいい?」「難しそう」と不安に思うかもしれませんが、マインドフルネス瞑想の基本はとてもシンプル。以下6つの基本を、まずは睡眠前に試してみてください。マインドフルネスの基本は、「観察」すること。今、自分の心と体で起こっていることに「気づく」ことです。
【マインドフルネス瞑想の基本】
1. 瞑想時間は、一人きりになれる静かな時間帯を選ぶ
2. 首や肩の余計な緊張をゆるめ、背骨を気持ちよく伸ばして姿勢を整える
3. 瞑想を始める前に、瞑想をするという決意と方向性を定める
4. 瞑想を始め、呼吸を観察する
5. 自然に湧いてくる考えは手放す
6. 瞑想を深めようとする方向性も手放す
■瞑想の秘訣は、あれこれ考えない。何もしない。ありのまま。
「瞑想がふかまってくると集中してリラックスした状態になります。ですが、リラックスしようと一生懸命になりすぎる必要はありません。ただ座って、自分が気持ち良いと感じるペースで呼吸を見守っていきましょう」と吉田さん。
「様々な瞑想がありますが、マインドフルネス瞑想は、現実をあるがまま観察していくことに重きを置きます。集中が深まっていくと、呼吸がとても静かになって、心がとても落ち着いて、身体の感覚がなくなったように感じることがあります。
このとき、私は、世界から切り離された存在なのではなく、大きな全体の一部であるような一体感を感じます。ですが、そのような無我の境地を目指しすぎると、それにとらわれてしまうので、瞑想中は、あれこれ考えない。
何もしないで、ありのままの存在していることを意識していきましょう。それが瞑想を深める秘訣です」(吉田さん)
人間は考える生き物。吉田さんも「瞑想中に雑念は必ず湧いてきます」というように、誰しも思考の停止はできません。
しかしながら、日々瞑想の訓練をすることで「雑念に気づいたら手放す」ことはできるようになります。
瞑想中の雑念に気づいて、意志の力を使って、「今、ここ」の現実に強引に引き戻すことで、「意識のコントロール力」が鍛えられます。この繰り返しによって、睡眠前のネガティブ思考を切り離せるようになっていきます。
■日常のあらゆる場面がマインドフルネス瞑想の実践の場
瞑想中だけでなく、一杯のお茶を飲むときや歩くとき、布団に入ったときに、今の自分がどのように動き、何を感じているのかを客観視していくことも、マインドフルネス瞑想の一環です。
「瞑想で感情や思考に気づく感覚がわかってきたら、日常のあらゆる場面で『マインドフルネス』を取り入れていきましょう。日常生活でもトレーニングをしていけば、思考や感情のリセットがしやすくなり、ネガティブ思考を徐々にコントロールしやすくなります。そうすることで、夜の穏やかな睡眠にもつながっていきます」(吉田さん)
私たちの生活はどこを切り取っても、集中できる瞬間にあふれています。
例えば、毎日の通勤通学中、未来や目的地に着いた後のことは一旦おいておき、歩いている感覚に集中する。食事をするとき、食べ物の香りをしっかり嗅ぎ、形や色を観察し、口に入れた時の温度や舌にじわじわ広がる味、後味の感覚までも余すことなく味わう。
歯磨き中、トイレの時間、買い物中、電車やエレベーターの中、外を歩いている時、シャワー中...どんな場面でも、マインドフルな状態をトレーニングすることができます。自分のやりやすいところから、マインドフルな時間を少しずつ増やしてきましょう。
■さいごに
「人は、豊かな"物"に囲まれていても、足りないところに目が行きがち。僕自身も、生きることに思い悩み、何をすればいいのかわからなくなってしまった時期がありました。そんなときに出会ったのがマインドフルネス瞑想でした。初めは、自分のマイナス思考と向き合うのがつらくて、何度も目を背けそうになりましたが、がんばって続けていくうちに、心が解放されていき、自分を信じられるようになったんです」
そう話す吉田さん。
とくに自分を信じられない、自信を失くしている時期には、夜、寝る前の思考がネガティブになりがち。
マインドフルネス瞑想は、めまぐるしい日々を生きる現代人が失いつつあるしなやかな心を育む力があります。
他にも、例えばヨガの瞑想など、自分と向き合うための瞑想方法はいくつかあります。自分に合った瞑想方法を実践すれば、夜寝る前に自分の心に気づき、そんな自分をおおらかに見つめていくことで、心が解放され、どんな自分も受け入れられるようになるはず。
ネガティブ思考をコントロールし、よりよい睡眠生活、より良い日常生活へつなげていきたいですね。
Fuminners 2016年7月25日の記事より抜粋