英国のチャーチルをして、「黒い大陸の真珠」と言わしめた東アフリカ内陸部に位置する国ウガンダ。筆者も先月この地を訪れたが、飛行機から見た緑豊かなヴィクトリア湖周辺の美しい光景は、未だに忘れることが出来ない。
先月18日、このウガンダで大統領選挙の投票が行われ、現職ムセビニ大統領(71)が得票率60.8%(2011年の68%より減少)を獲得し、当選した。アフリカの多くの国が未だ紛争や不安定な情勢に苦しむ中、比較的安定した政治・経済面を見せ、一部西洋諸国からは「アフリカの優等生」とも称されるウガンダ。今回の大統領選挙では、何に注目すべきだろうか。
ウガンダ首都カンパラ市内の様子(筆者撮影)
現職ムセビニ大統領は5期目
今回当選を果たした現職のヨウェリ・ムセベニ大統領は、1986年に反政府軍として権力を握って以来、今年2016年で30年間大統領を務めることになる。また隣国のルワンダでは、憲法改正により、本来2017年までである現職ポール・カガメ氏の大統領期限を2034年まで延期する法律が昨年制定された。ウガンダは2015年度の経済成長率が前年度比約5.2%、ルワンダは約6.5%と、東アフリカで比較的安定した国内情勢や経済成長を見せるこの2国では、長期政権が確立される傾向となっている。
対抗馬ベジジェ候補
今回のウガンダ大統領選挙において最も有力な対抗馬であった野党キザ・ベシジェ候補は、ムセベニ内閣時代の元内相を務めていた。本選挙におけるベジジェ候補の得票数は約35%と発表されている。
ベジジェ氏は、2001年、2006年、2011年にも候補として名乗りを上げていたが、いずれも敗戦。またこれまで、特に選挙期間において数回逮捕されており、先日18日にも与党や警察による不正投票の情報を得て現場に向かった所を拘束された。
野党側は、今回の大統領選挙には不正があったと抗議しており、今後の政治の混乱に繋がると懸念が広がっている。
政府によるソーシャルメディアのブロック
投票日である2月18日、ウガンダ政府はソーシャルメディアをブロック。TwitterやFacebookでの投稿を禁止する他、携帯電話端末で使える電子マネーも一時サービス停止に追い込まれた。ムセベニ大統領はこれを、選挙期間中「人々が嘘を言わないように」と擁護したが、一部の人権団体は「言論弾圧」としてこれを非難。
今回のソーシャルメディアブロックであるが、Virtual Private Network(VPN バーチャル・プライベート・ネットワーク)を使う事により、一部の人々はネットに繋ぐことが出来た。
安全保障から考えるムセベニ大統領の実績
ソマリア南部を中心に活動するイスラム過激派「アル・シャバブ」によるテロ行為に隣国ケニアが苦しむ中、2010年に首都カンパラで起きた同組織によるテロ(犠牲者は少なくとも74人)を除けば、近年ウガンダは比較的安定した治安を見せる。
そして、ウガンダ軍は、対アル・シャバブ=アフリカ連合軍において重要な役割を担っており、東アフリカ一帯の安全保障には欠かせない存在となっている。
また、アメリカ合衆国の国際政治学者Samuel P. Huntington(1927-2008)は、その論文『Political Development and Political Decay』の中で、Political Development(政治的発展)の一要素として"generational age"、つまり「ある(政治)組織において、主導者の引き継ぎがしっかりと行われていればいるほど、その組織はより制度化(institutionalized)されたものになる」と唱えた。
一部の批評家は「独裁化傾向にある」と現ウガンダ政権を指摘しているが、71歳というムセベニ氏の年齢を考慮しても、ウガンダ政治の今後の安定化に欠かせないのは、「引き継ぎ」行為ではないだろうか。
(2016年2月28日 Platnews「ウガンダ大統領選挙、注目すべき点は何か」より転載、一部修正。)