毎年3月8日は国連によって定められた国際女性デー(International Women's Day)として、女性の権利と世界平和を目指した様々な働きかけが世界各地で行われる。
2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミット。この場で採択された国連ミレニアム宣言を基に、開発分野における国際社会共通の目標としてミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: 以下MDGs)が掲げられ、昨年2015年にその達成期限を迎えた。
今回の記事ではMDGsの目標3を概観、「ジェンダー平等推進と女性の地位向上」を目指した15年間の世界の歩みを見る。
グラミン銀行の借り手の女性たち(2014年9月バングラデシュにて筆者撮影)
女性の教育機会拡充
ミレニアム開発目標2015報告書によれば、15年前と比較して多くの女子が教育機会を手に入れ、また全レベルの教育機会において男女格差が著しく減少したことが示されている。
大きく改善を見せたのは初等教育であり、特にインドやバングラデシュを始めとする南アジアでは、男子に対して女子が教育機会を占める割合を表したGender Parity Index(ジェンダー平等指数)が、1990年の0.74から2015年には1.03まで向上した。また、全世界の発展途上地域64%が、「初等教育における男女格差を解消する」という目標を2012年の時点で達成している。
多くの地域が改善を見せた中、サハラ砂漠以南アフリカでは、未だ多くの女子が初等教育の機会を剥奪されている。2012年のデータによれば、初等教育における男女格差が残る国のうち、56%がサハラ砂漠以南アフリカの国々に集中している。
農村部の小学校で学ぶ子供たち(2014年9月バングラデシュにて筆者撮影)
女性の有給雇用・労働市場へのアクセス
有給雇用に占める女性の割合(農業分野を除く)が1990年の35%から2015年には41%に増加するなど、ペースは遅いもののこの25年間で女性の有給雇用へのアクセスは改善を見せている。しかしながら、依然として北アフリカでは19%、南アジア・西アジアでは21%(報告書発行時点での2015年予測値)など、地域によっては低い値を維持し続けている。
労働市場へのアクセスにおける男女格差は未だ根強く残っており、2015年時点では、生産年齢(生産活動ができる年齢。通常15歳以上65歳未満)に属する男性のうち77%が雇用状態にある中、女性は50%という現実が存在している。また、男女間の賃金格差も根強く、男性と比べて女性の賃金は全世界で24%、南アジアでは33%、サハラ砂漠以南アフリカでは30%少ない。女性の有給雇用や労働市場へのアクセスを妨げる要因として、当該国の文化的・意識的要素や、女性の家事負担などが挙げられる。
女性の政治参加
世界の女性議員比率は、1995年の11%から2015年には22%へと倍増するも、未だにその総数は男性議員の5分の1に過ぎない。2015年1月時点では、半分以上の議席を女性が占めている国は世界に4か国しかない。その一方で、2015年1月時点では女性議員比率トップ10の国のうち、4か国をサハラ砂漠以南アフリカの国々が占めており(東アフリカに位置するルワンダでは60%以上の議席を女性が占めている)、政治参加における男女格差の解消は国や地域による偏りが少なくなっている。
また、政治リーダーにおける女性の地位向上は歩みが遅く、政府における重要ポストを占める女性の割合は全世界で18%と、2005年からわずかに4%しか向上していない。
2015年9月25日、ニューヨークで開催された持続可能な開発サミットにおいて、国連加盟国は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択。その中には、2015年に期限切れとなったMDGsを継承・発展させたものとして、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: 以下SDGs)が含まれる。そしてこのSDGsでも、目標5として「ジェンダー平等」が掲げられている。
この15年間で多くの地域が「ジェンダー平等と女性の地位向上」に向けて大きな進歩を見せたが、サハラ砂漠以南アフリカを始め、未だ多くの地域では男女格差が根強く残っている。筆者が訪れたバングラデシュでは、グラミン銀行を始めとした各種支援機関によるマイクロファイナンス(貧困者向けの小口金融)の成果もあり多くの女性が経済的貧困状況を脱する一方で、インタビュー活動を通してその裏に潜む問題も目の当たりにした。
普遍的な男女平等の実現に向けて、国際機関・政府機関・NGOなど、あらゆるセクターの包括的な取り組みが欠かせない。
(2016年3月6日 Platnews「国際女性デー(3月8日)―ジェンダー平等推進に向けた世界の歩み」より転載、一部修正・加筆。)