(THE INTERN/2015)
バリバリの女性CEOの主人公が、40歳以上も年上のシニアインターンに助けられて、より成長していく話。年齢・性別・地位もまったく違う男女が出会い、徐々に友情(愛情ではない)を育んでいく。
舞台はニューヨーク。ジュールズ(アン・ハサウェイ)は、ファッションサイトの会社を経営するCEOとして充実した日々を過ごしていた。仕事と家庭を両立するパーフェクトな女性像で、彼女はまさに勝ち組。彼女の会社における福祉事業のシニアインターンとして、40歳も年上のベン(ロバート・デ・ニーロ)がジュールズの会社に来ることになった。最初は何かといらついていたが、豊かな人生経験を持ったベンが彼女を助けていく。そして、こういった映画でお約束であるが、仕事と家庭の両方で危機を迎えることになり、選択を迫られる・・といった、まさに頑張る女性にエールを送る物語である。日本もアメリカもあまり変わらないことも分かる。
ナンシー・マイヤーズ監督(65歳)は、『ハート・オブ・ウーマン』 (2000年)、『恋愛適齢期』 (2003年)、『ホリデイ』 (2006年)、『恋するベーカリー』 (2009年)などで、女性の気持ちを描くのが上手。筆者が彼女の名前を知ったのは脚本家としてで、アカデミー脚本賞にノミネートの『プライベート・ベンジャミン』(1980年)だった。その主演と製作総指揮はゴールディ・ホーンだった。(彼女の娘がケイト・ハドソン)
アン・ハサウェイは、老けているように見えるが、現在、32歳(!)。『プリティ・プリンセス』(2001年)でデビュー。『プラダを着た悪魔』(2006年)ではメリル・ストリープ扮する鬼編集長のアシスタントを演じ、ブレイク。『ダークナイト ライジング』にセクシーでグラマーな美しい女怪盗で出演。『レ・ミゼラブル』で吹替えなしのミュージカルに挑戦し、第85回アカデミー賞助演女優賞を受賞、、、と、かわい子ちゃんから、演技派へ変身している。『セックス・アンド・ザ・シティ2』のスタッフが担当した、高級ブランドからカジュアルスタイルまで網羅したファッションはとても素敵で、『プラダを着た悪魔』が彷彿される。
ロバート・デ・ニーロは72歳。フランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザー』続編の『PART II』(1974年)では若きドン・ヴィト・コルレオーネの演技で、いきなりアカデミー助演男優賞を受賞。長くコンビを組んだマーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』(1976年)、 『ニューヨーク・ニューヨーク』 (1977年)、『レイジング・ブル』〈アカデミー主演男優賞 受賞〉(1980年)、『グッドフェローズ』(1990年)、『ケープ・フィアー』(1991年)、『カジノ』 (1995年)といった同監督の作品に主演。1980年代後半からは『ミート・ザ・ペアレンツ』などコメディ映画などでも成功を収めている。非常に多数の映画に出演しており。いままでに85本の映画に出演していう俳優は記憶ベースであるが、彼ぐらいである。また、プロ意識が高く、その徹底した役作りは「デニーロ・アプローチ」と呼ばれている。
現在、大学生の就職活動でも「インターン」が一般化している。アメリカでは年配の方のインターンも一般化しているようである。これは非常に良いことである。経済学的には、現在、日本も少子高齢化し、年配の方の人口が多くなってきている。その方々を労働力として活用することはとても大事である。また働くことは健康にも良い。長寿の県は、定年で引退した年配の方が働く比率が高いのである。
この映画のように豊かな人生経験を生かす機会も多くあろう。でも、「前向きなやる気」を持っている、つまり気持ちは若くあることが必要でる。
残念なことであるが、年配になると能力が落ちてくることがある。しかし、筆者は仕事では能力も大事であるが、「前向きなやる気」が最も大事である。企業戦略も教えてきたが、仕事の成果には「前向きな気持ち」の方が、実は"2倍"ぐらい寄与するのではないかと、個人的には考えている。
現在、個人的な意見であるが、日本の若者たちの「前向きなやる気」が落ちてきているような気がする。「前向きなやる気」と近い関係にある「礼節」も失われてきているような気がする。もちろん、悪事を働くのは、もってのほかであるが。日本では、小学校・中学校からでも、前向きなやる気・礼節・そして、人生とキャリアを教える授業を学校で行うべきではないか。
"サヨナラ"という台詞が良く出てくる。監督が好きな言葉のようで、実際に日常的に交わす挨拶のようで、温かいイメージがあるとのこと、日本人としてほんの少し嬉しい。
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