本作は、ダニー・ケイ主演映画『虹を掴む男』(1947年アメリカ)のリメイク作品であるが、大きく現代風にアレンジされている。ダニー・ケイといえば、アメリカのコメディアン・歌手・俳優で、名作『ホワイト・クリスマス』(54年)などでの演技が光る。(筆者はビング・クロスビーよりも彼の方が好きである)このころのアメリカ映画はファッションセンスがよくてお洒落である。(ちなみに『ホワイト・クリスマス』出演の女優ローズマリー・クルーニーはジョージ・クルーニーの伯母である。よく見ると似ている)クレージーキャッツの谷啓はダニー・ケイに憧れ、自分の芸名を付けた。
さて、本作の原題は『The Secret Life of Walter Mitty』で、日本人にはちょっと辛いということで、前作では邦題『虹を掴む男』とし、今回は勤務先のグラフ雑誌「LIFE」と原題の一部から邦題を『LIFE!』としたようである。今回の監督と主演は、やや癖のあるコメディアンのベン・スティラー。彼の出演作は、ブレイクした『メリーに首ったけ』や、『ミート・ザ・ペアレンツ』や『ナイトミュージアム』シリーズがある。
ウォルター・ミティ(ベン・スティラー)は、『LIFE』編集部のネガフィルム管理部門で真面目に働き、平凡な人生を送る"冴えない"男の設定。好きな同僚のシングルマザーのシェリル(クリステン・ウィグ)に声すらかけられない。ウォルターは強い空想癖があるが、その空想では、アクションヒーローや冒険者にもなり、シェリルにも熱い言葉を言うことができる。
ある日、突然、ライフ社は事業再編とLIFE誌の廃刊に追い込まれる。さらに、リストラ担当の新ボスも現れる。LIFE誌を代表するフォト・ジャーナリストで冒険家のショーン(ショーン・ペン)も事業再編による廃刊を知っており、LIFE誌のための最後の撮影フィルムを送っていた。しかし最終号の表紙になるはずの「25番目のフィルム」がなかった。
ウォルターは「25番目の表紙」を探さなければならない。しかしショーンは冒険家で連絡は取れない。仕方なく、自分で彼を探す旅に出で、グリーンランド・アイスランド・ヒマラヤを訪れる。それは実は彼を探す旅ではなくて、自分探しの旅でもあり、実際の体験の中で大きな転機を迎える。
何事も空想や悩むだけで、実際にやってみることが大事である。また"悩む"と"考える"は違う。考える行為は答えを見つける。悩んでいる時間は無駄な時間である。とにかく、口でいうだけとか、机上の議論では意味がない。
経営学を教えるときに、よく経営資源として、ヒト・モノ・カネといわれる。筆者はそれに「時間」も入れる。他の経営資源はカネさえあればなんとかなる。M&Aなどで、時間を買うといわれるが、本当の時間は買えないし、戻ってこない。またそれは経済や、人生にも当てはまる。企業は経営陣、経済では首脳を変えながら永続してくが、人は寿命というものがある。人のほうが、時間は貴重なのである。悩んでないで、行動することが大事である。また、本作のようにやってみて分かることがたくさんある。個人的な話で恐縮であるが、筆者はやるかやらないかで迷ったときは、"やる"方を選択するようにしてきた。失敗もたくさんあったが、後悔はしていない。やるならば、来年、来月ではなく今日からはじめるべきである。
また、本作は映像がすごくいい。都会の映像もいいが、グリーンランドを始め、大自然の映像が素晴らしい。よく「心が洗われた」というが、その情景だけで人生が変わるぐらいの素晴らしさがあると思う。実際にそれらの土地に我々が行くのはすごく困難であろう。その代わり、映画館の大画面でそれが体験できるのは少し嬉しい。
「宿輪ゼミ」
経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたにも分かり易い講義は定評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで"9年目"になります。
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