「田中将大の真価が問われる」
もう何度このフレーズが聞かれたか分からない。現地メディアは田中をセンセーショナルに評価しながらも、試練と見るや否や、値踏みするようにこのフレーズを繰り返す。
現地6日、ヤンキースタジアムのマウンドに田中が上り、紹介レポートには「STOPPER(ストッパー)」とのコピーが躍った。すると現地の実況は、「これまでに田中は何度もチームの連敗を止めてきた。だが、今日こそ“その真価が問われる”試合になる」と繰り返した。
相手はア・リーグ最高勝率のアスレチックス。ブラッド・ピット主演の『マネーボール』でも描かれたように出塁率にこだわるしぶとい打席が売りだが、今季ここまで本塁打数、得点、打点など、すべてリーグ2位。粘り強さに破壊力が加わった、今年のチームの攻撃力は本物だ。
一方のヤンキースは、前回のツインズ戦で田中が勝って以来、4連敗中…。今日はアスレチックスとの3連戦のシリーズ最終戦だったが、この前の2戦はいずれも逆転負け。チーム総合力に見劣りもすれば、チーム状況や流れも良くない。
奇しくも、ここまで1試合当たりのアスレチックスの平均得点は5点以上だが、田中の援護点も平均5点以上。これらの数字が示すように、また、田中が試合後、「我慢比べ」と表したように、この日は互いの実力が凌ぎを削る見応えのある試合となった。
アスレチックス打線は、田中の「伝家の宝刀」スプリッターに手を出さない。だが、「我慢比べなら負けない」という田中は、ピッチングの組み立てを変更。結果、6回で104球を投じるも、1失点の粘投で降板した。続くリリーフ陣も、その思いを引き継いだかのように、見事にしぶとく守り抜いた。ヤンキースが2-1で勝利し、田中は9勝目を挙げた。
ジョー・ジラルディ監督は試合後、「田中はこれまでで最大の仕事をしてくれた」と高く評価し、ベテランのチームメイト、マーク・テシェーラは「これぞ真のエースだ」と連敗ストップを称えた。
ESPNはこれまでも「Mr. Adjustment(修正男)」から、その更に上の「the king of adjustments(修正王)」といった田中の活躍に応じた呼び名をつけてきたが、今日の試合後は「Mr. Reliable(頼れる男)」と“命名”し、気骨のあるピッチングを称賛した。(参考:ESPN)
これで田中の防御率は2.02となり、リーグ2位につけているダルビッシュ有の2.08を少し引き離した。ちなみに、開幕前はメディアの多くがア・リーグのサイ・ヤング賞の筆頭にダルビッシュを挙げていたが、今では田中を筆頭に挙げる声が高まっている。アメリカのオッズメーカー「Bovada」では、田中がサイ・ヤング賞の1番人気になったという。(参考:NY Daily news)
昨シーズンは惜しくもサイ・ヤング賞投票で2位に敗れたダルビッシュ、また、昨シーズン同投票で3位につけた岩隈久志も、変わらずナイスピッチングを続けており、この3投手が、この先もどんな快投を見せてくれるかも気になるところだ。
このままローテーション通りに行けば、田中は10日のマリナーズ戦で岩隈と投げ合う公算が高い。田中も凄いが、ますますの活躍を続ける日本人メジャーリーガーたちからも目が離せない。
スポカルラボ
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(2014年6月6日「MLBコラム」より転載)