「田中将大も孤軍奮闘では勝ちようがない」
こう嘆いたのは、長年ヤンキースをカバーしているスポーツ記者アンドリュー・マーチャンド氏だ。(参考:ESPN)
現地22日、同地区ライバルのオリオールズとのシリーズ最終戦は、ヤンキースが0対8で惨敗。7回6安打3失点の田中は2敗目を喫した。先発の田中は、序盤から3回までは60球を要しながらも、粘って7回106球とまとめた。
メジャーでただ一人となる開幕からのクオリティ・スタート(6回以上を投げて、自責点3以内)連続記録を15に伸ばし、1973年にスティーブ・ロジャースが達成した16試合連続QS達成まで、あと1つと迫った。
マーチャンド氏は、この日の敗因は攻撃陣にあると指摘。両リーグトップの防御率だった田中がQSで耐えたにもかかわらず、それまで防御率4.82の投手クリス・ティルマンを打ちあぐね、ヤンキースが得点できなかったことを嘆いている。これでシリーズ3連戦を1勝2敗としたヤンキースは、1ゲーム差で後を追っていたオリオールズに、同率2位に並ばれた。
オリオールズの地元ボルティモア・サン紙は、「旋風を巻き起こしている田中に勝利した」と、金星をあげたかのごとく称賛。これで田中が投げた15先発でヤンキースは12勝3敗としたが、このうちの2敗がオリオールズという点でも際立っていると伝えている。(参考:Baltimore Sun)
なお、2回に田中から一発を放ったのは、前回の対戦でも3ランを放ったルーキーのジョナサン・スクープ。昨日まで11試合の打率が.150と不振だったにもかかわらず、今日もレフトスタンドにソロアーチを放ち、"マー君キラー"として名を挙げた。
ヤンキースにとっては、流れを止める不運な判定もあった。初回は、先頭ブレット・ガードナーがライト線を抜けた長打で、スピードに乗って3塁へヘッドスライディング。タイミングは十分セーフだったが、勢い余ったスライディングはオーバーランとなり、三塁手にタッチされる瞬間、ベースから手が離れた。
それを見逃さなかった敵将バック・ショーウォルター監督がチャレンジ。平均1分半を大幅に超える2分48秒という協議時間の末、アウト判定に覆った。これには、ツイッターでファンも異論が盛り上がり、「機械よりも審判がより良いと思う一例」といった声が挙がった。
また、8回は田中に代わったアダム・ウォーレンが、無死一二塁とピンチの場面で、主砲ネルソン・クルーズを三塁ゴロに仕留めるも、2走のスティーブ・ピアースがケリー・ジョンソン三塁手の足元へスライディング。ジョー・ジラルディ監督が危険すぎる行為と猛抗議するもノーペナルティで再開。その後、ヤンキースは4失点を喫した。
ジラルディ監督は試合後も、このスライディングは「選手が重大なケガを引き起こしかねない極めて危険な行為」と声高に訴えている。(参考:Newsday)
この日は、往年のヤンキース選手が大集結した恒例「オールドタイマーズ・デー」だった。試合前のオールド・ヤンキーたちによるミニ・ゲームには初参加の松井秀喜氏もスタメンに名を連ねた。
松井氏は、久しぶりにピンストライプの55番のユニフォームでバットを振り、最終回の4回にはスタミナ切れを起こした年配の大先輩らに代わって「若いんだから行け」と送り出され、マウンドにも立つという"二刀流"の活躍を見せた。
試合前の和やかな雰囲気から一転、後味の悪い大敗を喫したヤンキース。田中先発のヤンキースに2つの黒星をつける"番狂わせ"を起こした同地区オリオールズには今後も要注意だ。
スポカルラボ
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(2014年6月23日「MLBコラム」より転載)