産経新聞の伝えるところでは、舛添氏が序盤リード 追う細川、宇都宮氏 4割以上が投票先決めておらず 産経新聞社世論調査との事である。
猪瀬直樹前知事の辞職に伴う東京都知事選(2月9日投開票)で、産経新聞社は23、24両日、電話世論調査を実施し、取材を踏まえて序盤情勢を探った。元厚生労働相の舛添要一氏(65)がリードし、元首相の細川護煕(もりひろ)氏(76)と元日弁連会長の宇都宮健児氏(67)=共産、社民推薦=が追う展開となっている。そこに元航空幕僚長の田母神(たもがみ)俊雄氏(65)も続く。ただ、全体の4割以上が投票先を決めておらず、選挙戦の行方は予断を許さない。
都民が重視している争点は「少子高齢化や福祉」が26・8%で最多だった。「景気と雇用」も23・0%。「原発・エネルギー問題」「災害対策」の順で続き、「東京五輪の準備」は7・7%だった。
■産経新聞社世論調査の示すもの
二点が重要であろう。先ず、舛添氏がリードしている事実である。舛添氏に対しては自民党都連と公明党都本部が推薦を決め、民主党の支持基盤である連合東京も支援を決定している。舛添氏はこういった強力な陣営からの支援獲得に成功したともいえるし、一方陣営から取り込まれたとの見方も出来るだろう。何れにしても、仮に舛添氏が当選したら従来路線から大きく逸脱する事になる冒険主義に走る事はないと推測される。多くの東京都民が2020年のオリンピック・パラリンピック開催とその成功を強く意識し、冒険よりも安全、安定を重視している結果だと思う。
今一つは重視する争点である。一位に「少子高齢化や福祉」、二位に「景気と雇用」の結果となっている。今回の都知事選における東京都民の関心、期待は、「日々の暮らしを守って欲しい」と「将来への不安を払拭して欲しい」という事であると、私は理解した。東京都知事選の結果は2月9日に判明する予定である。新都知事はこの世論を受けて何をすべきなのだろうか? 一方、これをやり遂げるには新都知事としてどういった資質が必要なのだろうか?
■2020年のオリンピック・パラリンピック開催を控え、インフラの更新は待ったなし
私事で恐縮だが、自宅マンションの管理費・修繕積立金が今月から従来の月額@48,000円から@53,000円に値上げされる。マンションが完成して早い物で10年が経過し、補修の頻度と規模が拡大している事がその理由である。値上げは決して好ましい話ではない。しかしながら、劣化が重篤化し10年後に大規模補修が必要となり、結果、世帯当たり@500万円が請求される事になる展開よりは、普段から小まめに修繕し、劣化を遅らすと共にその日に備え修繕費を積み立てるのは賢明だと納得している。
一方、東京都のインフラ状況はどうだろうか? 東京では、東京オリンピックに備え1960年代初頭からインフラ整備が始まった。既に半世紀が経過している訳である。首都高の様な高速道路、橋、トンネル、学校、上下水道、全ての公的インフラには物理的な耐用年数がある。腐食や摩耗といった経時劣化から逃れる事は出来ず、放置されるといずれは崩壊する。
2020年のオリンピック・パラリンピックを東京で開催するに際し、安倍首相は海外からのお客様に対し「おもてなし」を確約した。老朽化したインフラの更新は当然必要である。一方、首都直下型地震発生の確率は今後30年間で70%との最近の予測結果もあり、地震から東京都民を守るためにもインフラ更新は同様待ったなしとの結論となる。インフラ更新に必要な標準技術は既に確立しており、実績のあるしっかりした民間企業に発注すれば問題ない。問題はインフラ更新に必要となる巨額の資金をどうやって調達し、返済するか、という事ではないのか?
■高齢者の福祉費用をどうやって調達するのか?
東京都の高齢者(65歳以上)人口は今後も恐ろしいほどのスピードで増加する。そして、当然の結果として医療費や介護費といった高齢者ならではの費用が膨張し歯止めがかからず、結果、地方行政の財政を圧迫する事になる。目先の票欲しさに都知事候補者は高齢者の医療費の無料化等提案するかも知れない。仮に、こんな公約を実行すれば高齢者は元気になるかも知れないが東京都の財政は破綻してしまう。
高齢者であれば一部の例外を除き働いていない。従って所得はなく、負担する税金も持ち家のある人で固定資産税と消費税。賃貸住宅に住んでいる人であれば消費税のみという事になる。納税額はそもそも期待していないのだが、問題は受ける事になる行政サービスである。大学を卒業し、一流企業に就職し定年まで勤め上げた様な高齢者であれば、ローンを完済した持ち家と一定額の預貯金や株式といった金融資産を保有し、国の年金と更に二階建ての企業年金を受給出来る。従って、何の心配も要らない。
しかしながらこれからは、賃貸住宅に住み、年金は国民年金のみで預貯金僅かとか、国民年金にすら加入しておらず、しかも預貯金はゼロといった状況の高齢者が激増すると思われる。今の制度、システムであれば生活保護で救済するしかないだろう。従って、候補者が高齢者に優しい都政を主張するのであれば、激増する高齢者用生活保護の財源をどう確保するのか? 説明する必要がある。
■東京都の歳入状況から増税対策を考える
老朽化したインフラ更新に必要な資金は、その後長期に渡り使用する訳でもあり、借入金(都債)で調達するのも良いだろう。しかしながら、借りっぱなしという訳には行かないので償還の原資を工面する必要がある。一方、対高齢者福祉の持続的な実行のためには当然しっかりとした財源を確保する必要がある。これをどうすれば良いのであろうか?
本年度の東京都予算を参照する。歳入の項目では圧倒的に法人税と固定資産税が多い。こういう現状であるなら、即効性のある施策は元気な外資系企業に東京に来て投資を活発にして貰う事との結論になる。毎年の黒字の中から一定の料率を法人税として東京都に納税して貰う。更には、都内の一等地に建つビルを自社のオフィスとして購入して貰い、毎年固定資産是を支払って貰うというものである。
こういう事が出来る知事とは一体どういう人間であろうか? 元気な外資系企業が東京都に何を期待し、ここに働く従業員やその家族が理想とする日々の生活を理解した上で、理想環境の提供に努力を惜しまない人間であろう。決して、前例と規制しか頭にない都庁職員のボスであってはならないという事である。そして、例え良い施策であってもその実行にはコストが発生するので、持続的な財源を確保せねば「絵に描いた餅」に終わってしまう事を、きちんと理解出来ている事が必要だ。一言でいえば「数字に強い」という人物評価になる。