憂慮すべき南スーダン情勢

毎朝起きると先ずBBC News をざっと閲覧するのが習慣になっている。世界で今何が起きているのか? を知り、BBCの付ける優先順位を知る事は重要と考えるからである。昨日、そして今朝と2日続けて南スーダン情勢を伝える記事がトップ一面扱いになっている。勿論、南スーダン情勢の悪化が急速に進んであり、既に重篤な状況になってしまっているからに違いない。

毎朝起きると先ずBBC News をざっと閲覧するのが習慣になっている。世界で今何が起きているのか?を知り、BBCの付ける優先順位を知る事は重要と考えるからである。昨日、そして今朝と2日続けて南スーダン情勢を伝える記事がトップ一面扱いになっている。勿論、南スーダン情勢の悪化が急速に進んであり、既に重篤な状況になってしまっているからに違いない。

一方、日本のマスコミは日本から遠く離れた南スーダンになどは全く興味がないのか、殆ど何も報道しない。しかしながら、日本からは100人程度の民間人と300人を超える自衛隊員が現地に赴任していると聞いている。日本はこれから、クリスマス、年末、年始と一年中で最も家族が濃密な時間を過ごす季節を迎える。父親が南スーダンに赴任していて不在であれば、留守宅家族は寂しい思いをしているに違いない。その上、現地治安がここまで悪化すれば、さぞかし心配し、一日も早い無事の帰国を心待ちにしている事であろう。

私は30代の前半、中東の中でも特に治安の悪い国に3年半駐在した。その結果、両親、親戚を随分と心配させた経験がある。従って、今回の南スーダン問題は他人事と思えないし、留守宅家族の気持ちは痛い程理解出来る。彼らは、日本を代表して現地に赴任している訳で、マスコミももっときちんと報道すべきであろう。そもそも、日本人全体が我が事として捉える必要があると思う。

■南スーダン情勢悪化の経緯

水面下では2011年にスーダンから分離独立を達成以降、部族間の対立があった事は容易に想像出来る。この地域のお約束といっても良いからである。しかしながら、南スーダン情勢はここ数日で急速に悪化してしまった。部族対立を飛び越して内戦、一気に政権打倒にまで行く気配である。

オバマ大統領は南スーダンが内戦の瀬戸際にあると警告を発する一方、全ての米国民に対して南スーダンを離れるように勧告した。12月21日、アメリカ軍の輸送機「オスプレイ」3機が武装勢力から攻撃を受け、兵士4人が負傷したのは、現地のアメリカ人を避難させるための活動中であった。

イギリスも自国民引き上げの為に航空機を派遣したとの事である。一方、首都から離れたジョングレイにある国連PKO基地でインド人兵士3名が殺害され。残り40名のインド人兵士は国軍の基地に移動した。国連は必要不可欠以外のスタッフを隣国に避難させたと報じられている。その一方で、国連軍の基地には4万人を越える難民が避難しているとの事である。この先、難民の数はシリアの例と同様雪だるまの様に膨らむ事であろう。この指とまれでPKOを主導した国連が真っ先に南スーダンを逃げ出し、平和ボケした日本が取り残される悪夢が現実のものになりはしないのか?BBCの現地取材映像を実際に視聴すると、そういった危惧を持つのも当然ではないのか?

■現地在住邦人の安否は?

現在までのところ現地在留邦人の被害は報告されていない。誠に以て喜ばしい限りである。しかしながら、今後については予断を許さないのではないのか? 何分、アメリカが自国民救出のため「オスプレイ」3機を派遣し、イギリスも自国民引き上げの為に航空機を派遣するところまで事態は悪化している。そもそも、外務省は南スーダンの何処に?誰が?滞在中であり、何時?引き上げ予定なのか?詳細に把握しているのであろうか? 

■日本大使館の閉鎖はあるのか?

現地治安状況がこれ以上悪化すれば、日本大使館を一旦閉鎖し大使館職員は隣国に避難した上で業務を行う可能性もあると思う。その場合、何らかの事情で現地から避難出来なかった邦人は、結果として見捨てられてしまうのであろうか?

■自衛隊は置き去りにされた在留邦人を救出出来るのか?

自衛隊は2008年10月から、当時のスーダン南部で展開していた国連スーダン・ミッション(UNMIS)に要員を派遣しており、現在はPKO本体業務以外の道路建設等を担当する施設部隊が首都ジェバに駐留している。問題は日本大使館が閉鎖され、結果、置き去りにされてしまった邦人を保護するために駆けつけ、救出のため武器を使用することが認められていない事である。これでは、在留邦人救出には何の役にも立たない。

更には、自衛隊の駐留地近くで難民が暴徒に殺害される事態となっても、何分武器使用が認められておらず、指を咥え傍観するしかない。そんな馬鹿なことはあり得ないというのが普通の感覚であると思う。しかしながら、現行の基準を自衛隊が正しく順守するならば、そういう事になってしまう。仮にそんな事態となれば、日本や自衛隊は国際的に人権無視であるとか、冷酷であるとか厳しい非難を浴びる事になるのは当然である。

■自衛隊のPKO参加に際してはグローバルスタンダードを採用すべきでは?

日本が今世紀も繁栄の継続を希望するのであれば、世界の平和と安定に向けての目に見える貢献を行い、世界の信頼を勝ち得る必要がある。従って、自衛隊は国連のPKO活動に積極的に参加する必要がある。そして、参加する以上は国連軍の指示命令系統に従い、邦人であれ、現地避難民であれ、人命救助のために暴徒と交戦すると言う国際常識(グローバルスタンダード)に合わせる必要があると思う。

日本企業はゆっくりかも知れないが、それでも「グローバル企業」に業態を変化させている。一方、日本国民についても、同じく少しずつだが「グローバル人材」が育っている。一方、自衛隊の海外運用に関しては政治が思考停止に陥っており、55年体制の陥穽から抜け出せずにいるように思える。安倍内閣はアフリカ開発会議の席上アフリカへの積極支援を約束している。従って、今回の南スーダン情勢悪化を契機に「最悪の事態」を想定した、自衛隊の現実的、グローバルスタンダードな運用に急ぎ切り替えるべきと考える。現在南スーダンで起こっている事は、アフリカの何処で起こっても不思議はないからである。

注目記事