安倍政権はオバマ大統領訪日にどう対応すべきか?

4月にオバマ大統領が訪日する。この機会を捉え、安倍政権は日米関係が深化しており、この事が世界の平和と安定に貢献する事を国内外にアピールせねばならない。

4月にオバマ大統領が訪日する。この機会を捉え、安倍政権は日米関係が深化しており、この事が世界の平和と安定に貢献する事を国内外にアピールせねばならない。日本の隣国である、中国、韓国が反日攻勢を強める状況下、日米同盟は日本の生命線であり、これに立脚した自衛隊の増強による防衛力の強化や集団的自衛権行使認可がもたらす自衛隊の効率的運用が安倍政権に取っての喫緊課題であるからだ。かかる観点からオバマ政権の現状を論点整理すると共に、将来を予測する事は意義あるものと考える。

■ 4月のオバマ大統領訪日が日本に取っての分水嶺になる

オバマ大統領の訪日が4月に予定されている。アメリカ外交のアジアシフト、日本をPivot(軸、かなめ)にしての、外交、通商の展開は規定事実である。従って、4月のオバマ大統領訪日が交渉の開始などではなく、日米間の新たな体制の確認である事は明らかである。そして、オバマ大統領は訪日後アジア諸国を歴訪し、新たな日米体制の説明と、各国との関係強化を図る事となる。私は、これこそが今世紀日本の繁栄に向かう新たなスタートと理解している。

■ アメリカ国民はオバマ大統領を支持していない?

最近行われたCNNによる世論調査の結果を参照する。オバマ大統領の支持率はやや持ち直したものの、不支持率50%に対し45%に留まっており、不支持が支持を上回っている。人気を失った大統領と断言しても支障はないだろう。演説やパフォーマンスに長けており、選挙には強いが行政は余り得意でなく、熱心でもない事がアメリカ国民に見透かされたのに違いない。

調査は1月31日~2月2日、全米の成人1010人を対象に電話で実施し3日に結果を発表した。

それによると、大統領の仕事ぶりを支持する人は45%と、昨年11~12月の41%からやや上昇。支持しないと答えた人は50%で、昨年末の56%から低下した。

■ アメリカ国民が興味を示さない一般教書演説2014

先月28日に行われた一般教書演説に対してもアメリカ国民は余り興味を示さず、政策の実行にも期待薄の様である。共和党支持者に至っては、どうもさっさと失敗して、オバマ大統領に早く退場して欲しい様子が伺える。

28日の一般教書演説による影響は限定的だったようだ。演説前に行われた複数の世論調査でも、大統領の支持率は45%前後と出ていた。

演説が「良かった」と答えた人は全体の44%、「良くなかった」とした人は38%だった。「何とも思わない」との回答も16%を占め、演説を全く視聴しなかった人が半数以上に上った。

大統領の政策が成功してほしいと願う人は58%と半数を超えたが、昨年1月の70%からは大幅に減少した。実際に成功すると予想する人は全体の3分の1にとどまった。失敗を願う人は全体の3分の1、野党共和党支持者では4分の3に達し、政策が実際に失敗すると予想する人は全体の過半数を占めた。

■ 一般教書演説が予感さす北東アジアにおけるGゼロ時代の到来

一般教書演説の内容は、景気回復局面に便乗しての米国経済再生を筆頭にこれまでの政策の成果を強調する従来からの内容であり、正直代わり映えがせず読んでいて退屈である。TPPを積極的に推進するとの表現があるかと期待したがどうも見当たらない。看板政策の「オバマケア」が視界不良の状況でTPPはどうでも良くなった? と心配になってしまう。外交に関しても、「中東からアジア・太平洋地域へのリバランス」と従来から繰り返してきたが、具体的な指摘は少ない。台風被害に苦しむフィリピンへのアメリカの支援を下記強調した程度である。

And we will continue to focus on the Asia-Pacific, where we support our allies, shape a future of greater security and prosperity and extend a hand to those devastated by disaster, as we did in the Philippines, when our Marines and civilians rushed to aid those battered by a typhoon, and were greeted with words like, "We will never forget your kindness" and "God bless America."

中国、韓国の動向を見る限り北東アジアにおける政治、軍事双方での緊張は高まる。一方、アメリカ外交は次第に内向きとなり、その存在感は希薄化するのではないだろうか? これは紛れもなく以前話題となったGゼロ後の北東アジアの姿である。Gゼロの話は何も新しいものではない。既に2年以上も前にEurasia Group Top Risks2012が下記指摘している。潜在化していたリスクが愈々顕在化したという事であろう。安倍政権がこれに備えねばならない事は当然である。

2 - G-Zero and the Middle East


The G-Zero--the inability/unwillingness of major powers to take on new risks and burdens--will become more obvious around the world in 2012. But the Europeans have the means to solve their own problems, however haphazardly; Asia faces even bigger structural challenges, but they're longer term. In other regions--Latin America, Eurasia, even Africa--the geopolitics aren't as turbulent. Thus, once again, the Middle East is a special case: unresolved religious, sectarian, and ethnic tensions; the continuing absence of a viable regional security framework; and in the midst of continuing protests, old autocracies at risk and enormous challenges facing newly "democratic" regimes. Nowhere will the G-Zero have more serious and immediate impact than in the Middle East.

■ 11月の中間選挙で民主党は敗北する?

最近ニューヨークから帰国した商社マンと会食した。若い頃にハーバード大学でMBAを取得しており、中々のアメリカ通というのが衆目の一致したところである。11月の中間選挙を控え人気が離散したオバマ大統領と距離を置く候補者が増加しているとの説明であった。更には、現地下馬評では共和党有利との話であった。どうも、こういう情報では前回同様共和党有利と判断せざるを得ない。

仮に11月の中間選挙で共和党の地滑り的な勝利となればオバマ大統領は一気にレイムダック化し、揶揄されて来たオバマリベラル外交が漂流する展開もあり得るだろう。従って、安倍政権は4月のオバマ大統領訪日受け入れに際しては、将来起こり得るあらゆる可能性を事前に想定すべきである。具体的には、オバマ政権に取って代るだろう共和党政権との実りある議論を可能にすべく予め何を準備すべきか? 更には、その次に来るであろう北東アジアでのGゼロ時代の日本のあるべき安全保障という事になる。

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