「それでもクールか!?」 レポートその4

2013年10月11日、慶應義塾大学KMDポリシープロジェクトのニコ生番組「それでもクールか!?」。稲田朋美クールジャパン戦略担当大臣、ホリプロ堀義貴社長とぼくです。ちょいとかいつまんで、レポート第4回。

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■「それでもクールか!?」 レポートその4

2013年10月11日、慶應義塾大学KMDポリシープロジェクトのニコ生番組「それでもクールか!?」。稲田朋美クールジャパン戦略担当大臣、ホリプロ堀義貴社長とぼくです。

その模様は以下のURLでご覧いただけますが、ちょいとかいつまんで、レポート第4回。

中村  

テレビ番組を海外に持って行こうって動きも総務省系で盛んになっていますけれども、これまで放送局って内向きだったんです。そこも変わるんですかね? 

堀社長

それも現地のニーズがないといけない。海外で常に最先端で最新の面白い番組が見られるって環境がないと難しい。24時間いつでも見られる。旅行に行くとホテルで日本の放送って大体1つしかないんですよね。でも、外国にいるのに何故かミャンマーの幻の蝶を追っているドキュメンタリーをずっと観ることになるわけですよ。メジャーリーグの話題は黒塗りになってしまうわけです。在留邦人でも野球が好きな人はメジャーリーグのホームページを見に行くしESPNを契約するし。

ビビッドな日本の新しくて面白くて若い、外国の若い人がこんなの見たことないっていうものを流す、それはもう一種プロパガンダに近いかも知れないけど、公平性を期してやっていくのは難しいと思いますよ。力技でやらないとダメですよ。

中村 

えこひいきをしていく。

堀社長 

面白い番組から順にやっていく。

中村 

アメリカにはたくさんテレビチャンネルがあるんですが、中国語のチャンネルが50チャンネルあって、韓国語が13チャンネルくらいあって、日本語は1チャンネルだけなんですよ。

稲田大臣

負けていますね。全然。

中村 

海外展開するのにコンテンツだけで出て行くんじゃダメで、メディアも抑えるとか、食べ物も含めて複合的にやっていかないといけない。大臣が管轄しておられるクールジャパン推進会議、秋元康さんやコシノジュンコさんが入っておられますが、私がその下に置かれたポップカルチャー分科会に参加して、ポップカルチャーを海外に展開するためにみんなでやりましょうっていう提言をしました。採択されるか不安だったんですが、「政府主導ではなくてみんな」と政府のレポートに書かせてもらったのは画期的だとは思っています。

稲田大臣

その伊知哉先生の分科会に出ましたが、メンバーもすごく、若手も多くて、非常に活発な議論がされていて、みんなで一緒に、とか、育てるというキーワードもあったかと思いますが、民間のみんなの力を出していくんであって、政府が前に行ってたら興ざめですね。

中村

コンテンツやファッションを作るクリエイターもいればプロデューサーもいるんですが、それ以上に、使うユーザー、ファン、ニコ生をご覧になっている方々、が自分で参加して作っていくという、初音ミクの展開です。みんなで参加して育てるっていう提言をしました。それが本当に国の政策になるかがこれから問われます。海外展開やクールジャパンの施策もありますが、長期的な人材育成や制度改革という課題にはどう取り組んでいけばいいでしょう。

稲田大臣

その分科会でも衝撃的だったのは、クリエイターなど若手の給料がとても安くて、大変苦しいっていう話もありました。その人たちに国が給料を払うのはできないですけど、若い人たちを使っている制作活動に補助をするとか、そういう若手を育てていくことはやっていくべきだし、若手が発表する場を提供していくことも政府ができるんじゃないかと思います。

堀社長

海外に出ていくのは民間が努力しなきゃ絶対に難しいと思うんです。賭けではないけれども、黙っていたらマーケットは縮小していくんだからやらざるを得ないんです。当時の韓国と同じ状況になりつつあります。その時に国内でできることに政府は何か援助すべきじゃないかなと。

中国は大学にアニメーション学科がたくさんできています。でも日本の大学でアニメーションを専門に教える学科はないですよね。最新の技術や最新のCGのスタジオを持っていて、優秀な人たちが世界にどんどん出て行ってお金持ちになれます、っていう夢がある教育機関であるとか。世界で活躍する為にはエリート育成だと思うんです。

海外のオーケストラのアジア人の比率は段々上がってきているんですけど、日本人はどんどん減ってきているんです。中国人とか韓国人は、国立、王立の所で養成されたスポーツ選手やミュージシャンが世界中に散っているわけです。その人たちが母国で次の世代の人たちを教える。世界で一番高いレベルに行った人が教える。そういうことをまずやるべき。

中村

 ふむふむ。

堀社長

そして、せっかく東京にオリンピックが来る、世界中に日本の最新技術を見せつけられる。われわれが自分たちとステレオタイプで思っていること、例えば伝統芸能や相撲ではないものをどんどん押し出すんです。ガンダムが聖火リレーやればいいじゃないか。逆にあの機会を使って日本に来てもらうのをこの7年間必死に広報していくべきですよ。

総務省の会議でも言い続けていたんですけれども、アジアだけでも7億人のイスラム教徒の人達がいます。日本に来て一番困るのが食べ物ですよ。ハラール(イスラム法上で食べられるもの)のシールが貼ってない飲食店が多い。どうやってハラールのお客さんを迎える外食産業を作るんですか、ホテルはどうするんですか、食材はどうするんですか。イスラム教徒の人達が空港でお祈りをする施設もない。相手の国のことも研究しておもてなしをする準備をする。寿司の魚の名前を英語で訳すなんてのは、別に外務省のホームページに置いておけばいいんです。日本中の寿司屋さんがそれをプリントアウトすればいい。

そういう細かなサービスはそんなにお金がかかる話じゃないと思います。でも、個人のお店で英語で説明しろって言われたら、まず無理です。それを7年後までしっかり準備しておいて、お迎えする準備をちゃんとして気持よく帰っていただいてまた来てもらってまた宣伝してもらう。外国から来るお客さんに宣伝してもらうのが一番安上がりだと思うんです。そういうことを国内で整備してもらう。海外に出て行くのは民間の力をちょっとだけ後押ししてもらうって方が現実的じゃないかと思う。特にオリンピックが決まった後は。

中村 

ニコ生をご覧の方々からのコメントに、アウトバウンドの話ばかりではなくてインバウンドの話をすべきだっていう意見がありました。堀さんがおっしゃった外国人に日本の良さを宣伝してもらうべきだという意見も。

稲田大臣

札幌では、海外のテレビが取材に来ることにすごく便宜を図ったり、海外の人たちが日本に来ることについて後押しをしたりする試みがあるんですね。さらに、そこで映画を作るのに便宜を図ったりとかですね。東京オリンピックが決まったことで、この7年間は日本に対して注目が集まりますので、もうどんどん来ていただくということをやっていく必要があります。

(つづく)

(この記事は11月16日の「中村伊知哉Blog」から転載しました)

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