アメリカのシアトル議会が2日、最低賃金を時給15ドル(約1,500円)にすることを決めたニュースが話題になっている。(詳しくはこちら)
かなり過激な決定と思えるが。記事によれば、議会での採決は満場一致、5月におこなわれた調査では74%の有権者がその案を支持していたという。
ソースがわからなくて申し訳ないが、以前、こんな主張を読んだことがある。現在のアメリカの低賃金労働者の多くが結局はフードスタンプなどの福祉に頼っており、最低賃金を引き上げることは、結局は政府の支出を減らし景気も良くすることになる、と。
アメリカ国内で考えるとそれも成り立つのかもしれないが、もちろん、グローバリズムがどう影響するのか、わからない。直感では、国内産業はさらに海外に流出し、景気が悪化して全体が沈むのではないかと思ってしまう。
ところで、Thomas Palley氏という経済学者は、「グローバル最低賃金」という考え方を提唱されているそうだ。(こちらー英文です)
とくに後進国で考えると、一国だけで最低賃金を引き上げても、グローバルな製造業は最低賃金の安い他国へ流出してしまう。
そうならないためには、「グローバル最低賃金」という世界統一のルールが必要だという。
彼の言う「グローバル最低賃金」は、「それぞれの国の平均賃金の50%」にするというものだ(かつ「それぞれの国の貧困ラインを上回る」)。
「平均賃金」を指標に使えば、それぞれの国の生活費や購買力、経済環境に応じた現実的、可変的なものになる。
僕にはその理論が正しいのかどうか判断する能力はないが、直感的には、せめてそうあって欲しいと思う。
現在の仕組みでは、いわゆるスウェットショップ(低賃金、劣悪な環境の工場)で作られた商品を避けることは難しい。それを避けるために、100円や200円高くなっても良いと思っているのに、である。
しかし、全体のルールがそうなってくれれば、余計なことを考えずにすむ。
このルールをアメリカと日本に適用してみたらいくらになるか、計算してみた。
■アメリカの平均時給 21.25ドル → グローバル最低賃金 21.25/2=10.63ドル(約1,000円)
■日本の平均時給 2,237円 → グローバル最低賃金 2,237/2=1,118円
(*データーの出所はリンクを見てください)
ちなみに、各国の最低賃金のデーターと日本のデーターはこちら。
現在の日本の最低賃金は時給664円(沖縄)である。
もし、日本でも「グローバル最低賃金」を受け入れるとしたら、かなり上がることになる。
この数字が妥当なのか、シアトルの選択が正しいものだったのかどうか、僕にはわからない。
だが、ひとつはっきりしているのは、グローバリズムがすすんで資本が自由に行き来できるようになっているのに、人類が理想として積み上げてきた人権思想が、それに追いついておらず、みんながなんとかしなくてはと思っているのに、現実の動きがそれについていけていないってことかと思う。
まあ、しかし、絶望することはない。
人類の歴史を振り返れば、少々時間はかかっても、この問題は必ず解決される。
問題はそれがいつになるか、どんな道行きで実現されるかということだけである。
*このページも参照しました。
(2014年6月4日「ICHIROYAのブログ」より転載)