(東京)-安倍晋三首相はカンボジアのフン・セン首相との会談の際、総選挙での不正行為に対し、国際的な支援による独立調査を受け入れるよう公けに求めるべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公開した書簡で述べた。安倍首相は2013年11月16日から17日にかけて、カンボジアを訪問する予定だ。
カンボジアで7月28日に行われた総選挙は、根本的な構造的欠陥と重大な不正行為によって損なわれ、自由かつ公正なものではなかった、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。安倍首相は1月28日、国会での所信表明演説で、「外交は(中略)自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった、基本的価値に立脚し、戦略的な外交を展開していくのが基本であります」と述べた。ここで提示した価値観を意味あるものとすべきだ。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗は「これまで日本の首相は、人権侵害を行っている政府との関係の中で、人権問題をほとんど取り上げなかった」と指摘。「根本的な大問題を抱えた選挙について、フン・セン首相に調査受け入れを強く求めるべきだ。人権や民主主義が現実には何を意味するのか、安倍首相が示すよい機会といえる。」
ヒューマン・ライツ・ウォッチは安倍首相に対して、今回のカンボジア訪問では、以下を行うよう要請した。
●総選挙について、国際的な支援を受けた独立調査の受け入れを強く求めること
●野党であるカンボジア救国党幹部と会談すること
●治安関係支援について、身上調査(vetting)実施を確約すること
●クメール・ルージュ法廷の裁判の改善を求めること
●開発援助が人権を推進・保護するよう確保すること
前出の土井・日本代表は「日本は1991年パリ協定に署名して以降、カンボジアに対する主要援助国であり続けている。しかし、選挙不正や、カンボジア政府による重大な人権侵害には、公に発言することを避けてきた」と指摘。「今回も明言を避け続ければ、自由で公正な選挙を通じて自ら政権を選ぶというカンボジア国民の権利を損なうことになろう。」
(この記事は、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のサイトで11月14日に公開された記事の転載です)