両国国技館で2015年4月29日に開催された、横綱審議委員会稽古総見は、第69代横綱白鵬の"品格のなさ"が目についた。2014年から白鵬の品格を問う声が多く、本人は「品格」ではなく、「別格」を強調したがる傾向にあるようだ。
■タオルの使い方に疑問
まず目についたのは、新調した稽古用のまわしにタオルを巻いていたこと。本場所ではないとはいえ、このような行為には首をひねる。力士は汗をかき、土にまみれるのが普通。タオルの持参、付け人にタオルを持たせる力士は数人いたが、誰もまわしに巻いていない。
その後、白鵬は、ほかの力士が申し合い稽古をしている最中にもかかわらず、タオルを土俵の隅に置き、そこに手をあてて、腕立て伏せを始めた。一時、土俵から離れていたが、タオルはそのまま。さらに、手をあてたまま稽古を見つめていた。力士の取り口を見て、研究しているのだろう。
もし力士がタオルを踏めば、ケガをしてしまう恐れがある。この日、土俵の正面側に、北の湖理事長、横綱審議委員会の面々が厳しいまなざしで見つめていたにもかかわらず、誰も指摘しなかった。
■ぶつかり稽古で逸ノ城のマゲを故意につかむ
白鵬が土俵に上がると、新小結(三役返り咲きだが、小結は初めて)逸ノ城との三番稽古。逸ノ城が勝つ場面もあったが、白鵬が"遊ばせてあげただけ"の印象を受ける。
三番稽古のあと、ぶつかり稽古に変わり、白鵬が逸ノ城をかわいがる。館内は盛り上がっていたが、私はそんな気になれない。白鵬が逸ノ城のマゲを何度もつかむという、醜態をさらしたからだ。無論、本場所では反則負けとなる。タオルの件と同様、誰も指摘しない。
一方、第70代横綱日馬富士は、同じ伊勢ヶ濱部屋の関脇照ノ富士に胸を出す。こちらは日頃から稽古をしているので、手慣れている。
日馬富士は、照ノ富士の後頭部を押さえ、マゲをつかむ行為は一切していない。それが普通のぶつかり稽古だ。
両横綱とも気になる点は、相手にときより"ケリ"を入れていたこと。無論、相手の奮起を期待してのことだが、角界以外の世界では、"暴行"と扱われるので、やめたほうがいい。
白鵬の行為を見ていると、「俺は神格者」だと勘違いしているのではないか。師匠の宮城野親方(元竹葉山)は、三役に昇進できないまま、現役を終えており、"大横綱に意見できない立場"に映ってしまう。
一方、日馬富士の師匠は、第63代横綱旭富士。横綱推挙後も変わらぬ師匠の厳しい指導、安美錦という先輩力士が現役バリバリなので、"人を敬う環境"に恵まれている。
■次の大関は照ノ富士でほぼ決まり?
さて、ぶつかり稽古を見ていると、照ノ富士と逸ノ城は、力の差が歴然としている。
照ノ富士は、今場所(2015年夏場所)も10勝以上が期待できる。仮に14勝1敗、もしくは、15戦全勝で優勝した場合、大関昇進が考えられる。
一方、逸ノ城は、苦悶に満ちた表情を見ていると、稽古量が照ノ富士より少ないことがうかがえる。
1年前の横綱審議委員会稽古総見で、私は新十両逸ノ城の強さが目に留まったが、新小結の今は、迫力がいまひとつ。2014年九州場所以降、素質だけでは通用しなくなっているので、壁にぶち当たっている気がする。