ミラノ万博を面白く見学するヒントは?

例えば、数十年後に先進国で家畜の肉を今のように日常的に口にすることができなくなるだろうと言われています。
A man take a photos inside the Russian pavilion at the Expo 2015 in Milan, Italy, Saturday, May 2, 2015. The Expo opened Friday May 1 for a six-month run and its theme is
A man take a photos inside the Russian pavilion at the Expo 2015 in Milan, Italy, Saturday, May 2, 2015. The Expo opened Friday May 1 for a six-month run and its theme is
ASSOCIATED PRESS

■ ミラノ万博の狙いは何か

ミラノ万博が開幕しておよそ1カ月が経ちました。5月1日のスタートから31日までに2.7百万人が入場し、入場券販売は開催前からの合計で1千5百万枚に達したようです。10月30日までの目標入場者数が2千万人ですから、「なかなか好調な滑り出し」とのコメントがミラノ万博公社からでています。 

実り豊かな自然をつくりながら、途上国における飢餓の根絶と先進国における生活習慣病を招く食習慣の変革が万博のテーマです。アンバランスに陥っている世界食糧問題をどう解決していくか。食を扱っているから、どうしても各国食漫遊記的なことばかりに目がいきがちです。食に好奇心があれば誰でも嗅覚の働くイベントですが、それだけでなく、「食習慣の多様さがどう人類を救うか」と、みるもう1つの視点が必要です。

例えば、数十年後に先進国で家畜の肉を今のように日常的に口にすることができなくなるだろうと言われています。それでは蛋白源として昆虫を食べるようになるか? という問いかけに対して、アフリカやアジアの国々(日本でも一部の地方では昆虫を食べます)の習慣を参考事例とするわけです。

■ 食習慣をどう変えていくか

欧州各国の多くの人々は、ほんの20-30年前まで、「生魚なんて気持ち悪い」と寿司を敬遠していました。ところが今や寿司はヘルシーな食べ物として市場で受け入れられています。生魚が日本のように家庭でも定着したかといえば少々事情は異なりますが、少なくても生魚を口にすることが、健康に良いとか、トレンディであるとか、何らかの「社会的説得」をうけて普及してきたのは確かです。そこで、昆虫を食べるようになるには?という課題が出てきます。

実は、この万博に対してEUの科学委員会がステアリングコミッティとして関与しています。先月、このチームが主催するカンフェランスに私は参加してみたのですが、「ミラノ万博は、今後、環境や食のテーマに対してどう考え、どういうプランを実践的にたてられるかの実験の場でもある」と説明しています。つまり、他の文化に寛容になり、他の文化の食習慣の導入を図るためのプロセスの研究の場でもあるわけです。

■ メッセージの伝え方からパビリオンを評価する

以上の趣旨を踏まえ、ミラノ万博を実際に眺めてみたとき、第一にコンセプトの作り方やそのメッセージの出し方が秀逸であると思ったところを挙げてみましょう。すべてのパビリオンを見学できているわけではないし、たまたま訪れた各パビリオンのイベントの種類と質によりますが、万博の設定した大きなテーマに対して印象に残るアプローチをしているパビリオンは3つです。

酸素ができるプロセスを体感させるオーストリア館、オープネスを尊重するのが社会変容には欠かせないと実感させられるオランダ館、そして静かに文化と自然を語りかけるバーレン館。これらを選んだ詳しい背景は、私のブログ記事をお読みください。1つ、どうしても見ていただきたいのは、このイベントのコンセプトをプレゼンしているパビリオンゼロです。ここを見ずして、各国パビリオンを評価するのは避けたいです。

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