森友文書改ざん事件について、菅官房長官が、主文が変わっていないので、改ざんではなく書き換えだと述べたそうです。
本当にそうでしょうか。
●最高裁判例では「改ざん」扱い
報道で見る限り、通常では通らないような案件が、安倍首相や日本会議、安倍昭恵夫人の名前が出てくることによって、特殊事情、特別案件として、なぜか通ってしまったように見えます。
通常では通らない決裁が無理やり通されたような場合には、その理由こそが決定的に重要であって、根幹部分になると考えるのが普通でしょう。
主文が変わっていないとしても、重要な根幹をなす理由の変更が公文書変造にならないのはおかしいだろうと素朴に思いますよね。
そして、このような最高裁判例があります。
「無効の発言の除去は公文書の変造にならないというのであるが、右事項が本件の工場跡の買収につきこれを宅地とするか耕地とするかを定める重要点であり、その除去により恰も現実にされた決議と異(な)る事項が決議されたかのように記載することは公文書の無形偽造である」
(最高裁判所第三小法廷昭和33年9月5日(刑集12巻13号2858頁))つまり、無効の発言の除去でも公文書変造ですよと。
無効の発言以上に従たる内容はないでしょう。
それの変造が犯罪なんですから、今回の変造が犯罪にならないはずがありません。
主文か、主文じゃないかは関係ありません。
※ 無形偽造:作成権限のある名義人が内容虚偽の文書を作成することです。
※ 偽造は作成権限のない人が勝手に作ること、変造は既にある文書の内容を変えること
※ 判決文の最後で「公文書の無形偽造」と言っているのは、刑法の条文で偽造と変造が同じ条文に、書かれているので、ひっくるめた罪名として書いているものと思われます。
※ 第一法規株式会社の「D1-Law.com法情報総合データベース」を参照しました。
●79%以上も改ざんなのに「従」?
14件の文書で、78ページの内62ページ改ざんされていたということは、79%以上も改ざんされていたと言うことになります。半分どころか、3分の2すら軽く超えてしまっています。
79%以上なのに「従」であり犯罪にならない書き換えだと主張するのが、いかに一般の感覚からずれているかということです。
●安倍政権は最高裁判決を守っていない
このように菅官房長官は、最高裁の判例に反することを堂々と言ってしまっているのですが、単に知らないか、知っていて最高裁判例に反することを言ってしまっているということになります。
前者であれば、それ自体、大変なことですが、
後者であっても、問題です。最高裁の言ってることには従わない、従う必要がない、自分たちの言うことに最高裁は合わせるべきという態度ということになりかねないからです。
三権分立を理解しているのか心配になるレベルということになりかねません。
安保法制について、立憲主義だと言われても、自分たちはそう思っていないとして押し通したことを思い起こさせます。
もっとも、官房長官の裁量で支出できて、使い道を隠しておける官房機密費の一部文書について、最高裁が開示を命じたのに、いまだに従っていないことからしても、安倍政権が最高裁を軽く見ていることは明らかなので、不思議ではありませんが。
●行政に対する信頼が失墜した
こういうことがあると、文書の改ざんをする財務省が作った予算案は本当に大丈夫なのかという不安も出てきますし、他の省庁でもやっちゃってるんじゃないかという不安も出てきてしまいます。
きわめつけは、会計検査委員が、二つの文書があるのに気づいていたのに(財務省から改ざん後の文書、国交相から改ざん前の文書が出てきた)、財務省に問い合わせて「うちのが最終版です」という説明でスルーしてしまっていたことです。
会社で、粉飾決算があって、監査役がスルーしちゃってるようなものです。
普通なら、経営陣が謝罪して、辞任して、次の経営陣で事実を究明して、再発防止策を立てて、信頼回復に努めるのではないでしょうか。
麻生財務大臣がそのまま、事案の解明に当たるそうですが、まだ何か隠しているのではないかとか、また改ざんするのではないかと不信の目を向けられるのではないでしょうか。
この国は、本当に大丈夫なんでしょうか。
こう考えると、行政に対する信頼を決定的に失墜させた安倍政権の責任は極めて重いというべきでしょう。
信頼回復のためには、もはや財務省や会計検査院の再編は避けられないのではないでしょうか。
安倍政権は、なんとしても憲法改正をしたいようですが、憲法改正の前に行政の信頼回復をしなければ、何かごまかして憲法を改正しようとしていると思われるだけです。
あるいは、裁判所や会計検査院の機能を強化する憲法改正の方が先なんじゃないでしょうか。
官僚の皆さんは、この期に及んで、なおこの政権や財務省を守ろうとするのはマズいと思った方がいいのではないかと思います。忖度して無理をして違法なことをしても、守ってくれないことは明らかになったので。